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サヴィンビ編
最強と呼ばれた冒険者
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するとキャロルが幸一に話しかける。
「よろしかったら私が勤めている病院に来ませんか? そうすれば分かると思います。この国が今どうなっているかを」
「そうだな、実際に見て聞いてみたい。そうすればどうすればいいかわかるかもしれないからな」
「うん、私も行ってみたい」
幸一とイレーナが反応する、この地方の現実をぜひ見てみたいと──。
「そうですね、資料を見ただけでは分からないこともあります。実際に見てみたいです」
サラも同調する。そして歩いて30分ほどで目的地にたどり着く。
病院にたどり着いた幸一達。
飢餓のため栄養失調になっている子供たちが手当てを受けている。
建物にひびが入っていて薄汚れている。大きな広間にマットで寝床が簡易的に作られていてそこに病人達がねこんでいる
病人達は元気がなかったり痩せこけた様子をしている。
薬も不足気味でなんとか少なめに渡してこの場をしのいでいる様子もうかがえた。
そんな様子から幸一達がここの住民たちがどんな生活をしているのかを察する。
ため息を突きながらイレーナが声を漏らす。
「これが地方の現実みたい。でも中央からはこの現実が把握できてないんだわ」
つんつんと誰かが幸一の肩に指で触れる。
幸一は反応して後ろを振り向く。そして表情が固まる。
そこには看護の少女、というよりは……。
ナース姿に変装していた──。
「こ、幸君……、会えてよかったよ」
幸一、イレーナ、サラがその姿を見て言葉を失い唖然としてしまう。
ルトであった。今度はツインテールの灰色の髪をしていた。
やはり完璧な服装、外部の人から見たら全員が綺麗な少女の看護師だと答えるであろう。
すでに彼の変装を見るのは三回目だが今でも彼の変装術には脱帽してしまう。そして陽気な口調で青葉が話しかける。
「ルト君、似合ってるわよ!! その調子その調子!!」
恐らくは青葉がコーディネートしたのだろう。幸一が再びルトに視線を移すと何かを訴えるような眼差しで幸一を見ていた。
「ルト、その……。今日もよろしくな」
何かを悟った様にやれやれの表情で苦笑いを浮かべる幸一。
その表情を見たルトが耳元で恥ずかしそうな表情で顔を真っ赤にして反論する。
「幸君、これは別に作戦で情報を手に入れるのに仕方なくやっただけなんだからね!! 趣味じゃないからね、変な意味で考えないでよ!!」
「はいはい、そういうことにしておきますよ──(棒)」
「ちょ、ちょ、ちょちょっとその(棒)はやめてよ!! 本当に恥ずかしいんだからこれ!!」
取り乱したルトに幸一はなだめるしぐさをする。余程恥ずかしいのだろう。ルトはもじもじしながらも何とか気持ちを落ち着かせる。
話の本題に入ると二人の表情は真剣なものになり、ルトが今までの潜入捜査の結果この国がどんな状態になっているかを語り始める。
「看護師に変装してこの国の実情は把握した。想像はついたけど、ひどいものだよ──」
ルトが見た光景、それは悲惨そのものだった。医者達の中でも数少ない薬の横流しや違法な料金の請求などが横行しており。病院などはまともな機能をほとんど失っている。
「それでも私たちができる事って限られてますよね──、」
サラの言う通りだった、彼らは政治家ではない。魔獣や犯罪者と戦うことは出来てもこういった政治的なことや貧困に対しては無力であった。
「とりあえず手伝おう」
イレーナがそっと囁く。
幸一達もその姿に見ていたたまれなくなる。手当てなどに対する最低限の知識はあったので出来る範囲で手伝い始める。
モノを運んだり怪我をしている患者に包帯を巻いたり薬を塗るなどの簡単な作業をしていた。
「これでとりあえず大丈夫だよ──」
小さな女の子の腕に幸一が薬を塗って包帯を巻く。薬が傷口に沁みるようで女の子は痛いと囁く。しかし放っておくと病気になるので幸一は「少しだから我慢して──」と優しい表情でなだめながら薬を塗り、包帯を巻く。
「これで大丈夫だよ」
優しい笑みを浮かべて幸一が女の子に言葉をかけると背後から幸一に誰かが話しかけてくる。
「少年、貴様はボランティアか? 偉いねぇーー」
「いえ? 用があってここに来て見ていられなくなっただけです。そんな大層なものじゃありませんよ」
「しかし矛盾しているとは思わないか? この国の兵士や貴族達はこの人たちに尽くすどころか危害ばかり加えて無駄に高い税を取り立て苦しませている。そして無実のこの人たちは傷つき貧困にあえいでいる、変えてみたいと思わないか?」
周りから見れば妄言とも思われかねない言葉。幸一はその言葉の発言主を見る。
身長は165cmくらいでサラや青葉と同じくらい。
白いフードをかぶっている。
その瞳には底知れぬ闇を、表情からは何か異常なまでのオーラを感じた。
「なぜあなたがここに?」
サラが幸一のもとに近づく。するとフード姿の彼の姿を見て表情が固まってしまう。
「どうしたサラ? 何があった、彼がどうした?」
「なぜあなたともあろうお方がここにいるんですか?」
サラは警戒した目つきで話しかける。
「別に何故俺様の行動を貴様ごときに詮索されなきゃならない。椅子にふんぞり返っているだけが権力者ではない。王国にいすぎたか?」
「確か、貴様は王国のサラだったな。良く調べているな──。帝国で国外追放になり。王国へやってきた。そして基礎体力が低く戦えないから知識がなければただのお荷物だからな」
「恐らくこの世界で最強と呼ばれた冒険者です……、今は冒険者と言うより──革命家と言った方がいいでしょうが」
「よろしかったら私が勤めている病院に来ませんか? そうすれば分かると思います。この国が今どうなっているかを」
「そうだな、実際に見て聞いてみたい。そうすればどうすればいいかわかるかもしれないからな」
「うん、私も行ってみたい」
幸一とイレーナが反応する、この地方の現実をぜひ見てみたいと──。
「そうですね、資料を見ただけでは分からないこともあります。実際に見てみたいです」
サラも同調する。そして歩いて30分ほどで目的地にたどり着く。
病院にたどり着いた幸一達。
飢餓のため栄養失調になっている子供たちが手当てを受けている。
建物にひびが入っていて薄汚れている。大きな広間にマットで寝床が簡易的に作られていてそこに病人達がねこんでいる
病人達は元気がなかったり痩せこけた様子をしている。
薬も不足気味でなんとか少なめに渡してこの場をしのいでいる様子もうかがえた。
そんな様子から幸一達がここの住民たちがどんな生活をしているのかを察する。
ため息を突きながらイレーナが声を漏らす。
「これが地方の現実みたい。でも中央からはこの現実が把握できてないんだわ」
つんつんと誰かが幸一の肩に指で触れる。
幸一は反応して後ろを振り向く。そして表情が固まる。
そこには看護の少女、というよりは……。
ナース姿に変装していた──。
「こ、幸君……、会えてよかったよ」
幸一、イレーナ、サラがその姿を見て言葉を失い唖然としてしまう。
ルトであった。今度はツインテールの灰色の髪をしていた。
やはり完璧な服装、外部の人から見たら全員が綺麗な少女の看護師だと答えるであろう。
すでに彼の変装を見るのは三回目だが今でも彼の変装術には脱帽してしまう。そして陽気な口調で青葉が話しかける。
「ルト君、似合ってるわよ!! その調子その調子!!」
恐らくは青葉がコーディネートしたのだろう。幸一が再びルトに視線を移すと何かを訴えるような眼差しで幸一を見ていた。
「ルト、その……。今日もよろしくな」
何かを悟った様にやれやれの表情で苦笑いを浮かべる幸一。
その表情を見たルトが耳元で恥ずかしそうな表情で顔を真っ赤にして反論する。
「幸君、これは別に作戦で情報を手に入れるのに仕方なくやっただけなんだからね!! 趣味じゃないからね、変な意味で考えないでよ!!」
「はいはい、そういうことにしておきますよ──(棒)」
「ちょ、ちょ、ちょちょっとその(棒)はやめてよ!! 本当に恥ずかしいんだからこれ!!」
取り乱したルトに幸一はなだめるしぐさをする。余程恥ずかしいのだろう。ルトはもじもじしながらも何とか気持ちを落ち着かせる。
話の本題に入ると二人の表情は真剣なものになり、ルトが今までの潜入捜査の結果この国がどんな状態になっているかを語り始める。
「看護師に変装してこの国の実情は把握した。想像はついたけど、ひどいものだよ──」
ルトが見た光景、それは悲惨そのものだった。医者達の中でも数少ない薬の横流しや違法な料金の請求などが横行しており。病院などはまともな機能をほとんど失っている。
「それでも私たちができる事って限られてますよね──、」
サラの言う通りだった、彼らは政治家ではない。魔獣や犯罪者と戦うことは出来てもこういった政治的なことや貧困に対しては無力であった。
「とりあえず手伝おう」
イレーナがそっと囁く。
幸一達もその姿に見ていたたまれなくなる。手当てなどに対する最低限の知識はあったので出来る範囲で手伝い始める。
モノを運んだり怪我をしている患者に包帯を巻いたり薬を塗るなどの簡単な作業をしていた。
「これでとりあえず大丈夫だよ──」
小さな女の子の腕に幸一が薬を塗って包帯を巻く。薬が傷口に沁みるようで女の子は痛いと囁く。しかし放っておくと病気になるので幸一は「少しだから我慢して──」と優しい表情でなだめながら薬を塗り、包帯を巻く。
「これで大丈夫だよ」
優しい笑みを浮かべて幸一が女の子に言葉をかけると背後から幸一に誰かが話しかけてくる。
「少年、貴様はボランティアか? 偉いねぇーー」
「いえ? 用があってここに来て見ていられなくなっただけです。そんな大層なものじゃありませんよ」
「しかし矛盾しているとは思わないか? この国の兵士や貴族達はこの人たちに尽くすどころか危害ばかり加えて無駄に高い税を取り立て苦しませている。そして無実のこの人たちは傷つき貧困にあえいでいる、変えてみたいと思わないか?」
周りから見れば妄言とも思われかねない言葉。幸一はその言葉の発言主を見る。
身長は165cmくらいでサラや青葉と同じくらい。
白いフードをかぶっている。
その瞳には底知れぬ闇を、表情からは何か異常なまでのオーラを感じた。
「なぜあなたがここに?」
サラが幸一のもとに近づく。するとフード姿の彼の姿を見て表情が固まってしまう。
「どうしたサラ? 何があった、彼がどうした?」
「なぜあなたともあろうお方がここにいるんですか?」
サラは警戒した目つきで話しかける。
「別に何故俺様の行動を貴様ごときに詮索されなきゃならない。椅子にふんぞり返っているだけが権力者ではない。王国にいすぎたか?」
「確か、貴様は王国のサラだったな。良く調べているな──。帝国で国外追放になり。王国へやってきた。そして基礎体力が低く戦えないから知識がなければただのお荷物だからな」
「恐らくこの世界で最強と呼ばれた冒険者です……、今は冒険者と言うより──革命家と言った方がいいでしょうが」
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