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サヴィンビ編

最強対決

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「やめてくれ、それ以上彼女たちに変な命令をしてみろ。今度は俺が相手をすることになる」

「フッ、フッ──。フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 するとマンネルへイムは彼の言葉が面白いジョークであるかのごとく高らかに笑いながら言葉を返し始める。

「面白いジョークだ、そういうことは俺と対等に戦える奴が言うことだ。もっとも、そんな奴はこの世界にいるか怪しいが──」

「やってみるか?」

 幸一にはわかる。相対するだけで彼がすさまじい強さを持っている事が──。
 勝利を掲げると言うことがどれほど無茶なことか。

 それはイレーナと青葉、ルトも同じであった。
 今幸一が戦ってどうにかなるような相手ではない。しかしそれでも戦わなくてはならない。


「ではこうしよう、戦って蹴りをつけよう。一騎打ちだ」

「勇者よ、貴様が勝ったらお前の要求すべて飲んでやる。だが俺が勝ったら俺の要求をすべて飲んでもらう。反対した者には俺の傭兵が反対者の家族を人質にして強制的に参加させる」



 思わず後ずさりして黙る幸一。世界最強の魔法使い。相対するだけでこの男がタダ者ではないと理解できる。その彼から出るオーラに思わずためらってしまう。
 それを見たへイムはさらに傲慢な態度で挑発していく。

「なんだ? あれだけこの俺様に口答えして大事を口にしながらいざ戦うとなると怖気ずく、まあ俺様の強さに恐れをなすのは当然のことだが」

 その言葉に幸一は仕方なく言葉を返す。他に選択肢は無かった。

「わかった、その提案乗るよ。俺は貴様と対決する。勝ったら俺の要求をのんでもらう」

 それが彼の作戦と分かっていても対抗策がなければ何の意味がない。結局幸一はへイムの提案をのむしかなかった。

「勝ったらか……、まあ妄想は自由だ。時間は3日後、場所は北部にある神殿。そこで皆が見ている前で一騎打ち。どうだ?」

 複雑な表情をしながら首を縦に振る幸一。それを見ながらへイムはどこか満足げにこの場を去っていく。
 へイムの後姿が見えなくなった後青葉が深刻な表情で幸一に話しかける。

「私、彼の戦い見たことあるけど、今の幸一君がまともに戦えるとは思えないわどうするの?」

「強いのは俺もわかる、会話しているだけでそんなオーラは感じた。でもやるしかない」

「幸君──」

 イレーナが声を漏らす。
 青葉が真剣な表情で語る。

 マンネルへイムとの戦い、例えるならば幸一がこの先何十年も強さを極め、勇者として戦い世界で誰もかれないような最強の勇者になる。そしてその時になって初めて対等に戦える相手であろう。つまり間違っても今ここで戦っていいような相手ではないということだ。

 その言葉に額から汗が出る。しかし他に方法は無かったしもう取り消すことは出来ない。幸一はみんなには見守ってほしいこと、そしてイレーナと模擬戦を何度か行う事を話しこの場を去っていった。


 その後勇者とマンネルへイムの決闘の話題でこの街は騒然となりあちこちでどっちが強いかの話題でもちきりになっていた。

「おいおい聞いたか? マンネルへイムと勇者「炎の唯一王」が戦うんだってよ」

「すげえじゃん最強対決じゃん!!」

「そうだな、どっちが強いんだろうな──」

 街の路地裏でたむろしている男性の集団が興味津々に会話する。ギルドでも情報は伝わっていて冒険者の女性パーティーでも二人の対決の話題で会話が続いている様子になっていた。

「やっぱりへイムさんじゃない? 一番強いって言われてるもんそれにかっこいいし──」

「え~~? 私は勇者さんの方がかっこいいと思うなぁ~~」

 街角では老若男女問わず噂話でもちきりとなる事態となっていた。









 ──そして決闘の日。


 神殿な周りに住民たちが取り囲むように存在している。理由は一つ、皆最強の魔法使いと勇者の戦いを見に来ているのだ。

 好奇心をたぎらせて何処かわくわくしている者、最強の腕前というものをこの目に焼き付けたい者、純粋に二人の決着を見届ける者、目的はさまざまである。そしてそこに幸一達がやってくる。

「へイムさんは……、いました」

 サラの言葉通りへイムは神殿の中心部、20メートルほどの高い場所に毅然とした態度で立っていた。

「ようこそ勇者よ、この観客の前で負け姿を見せにくるとは──、とんだ物好きだな」

 相変わらずの傲慢な物言い、幸一は無視して彼の言葉を聞く。

「しかしわからんよ。貴様はすでに直感から俺の強さを知っている。その強さを知っていながら何故剣を抜く。こうして相対していて実力の差は理解しているはずだ。だから貴様はそれほどまでに怯えているのだろう」

「流石は最強と言われるだけはある。バレないようにしていたつもりだったんだがな」

 へイムに怯えを指摘され苦笑いをする幸一。
 実の所幸一は理解していた。二人の間にある天地ともいえる圧倒的な実力の差を。

 正論ではある、彼が戦おうとしているのは正真正銘の「世界最強」の革命家。
 今この場で戦ってまともに戦えるような人物ではない。


「俺様は慈悲深い、最後のチャンスをくれてやろう。ここで膝を屈し俺の案を飲むなら戦うのをやめてもよいぞ」

 いくらなんでも戦うのが早すぎる。普通に戦ったらまともな戦いにならないだろう。
 へイムもそれは理解していて最後のチャンスを与える。
 しかし幸一の答えは決まっていた、迷いなどない。へイムをじっとにらみながら言葉を返す。


「だが、それでも戦わなきゃいけない。願い下げだ──。そんな言葉」

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