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アストラ帝国編

遺跡の中へ

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そしてその言葉通り高地たちはけもの道を進み崖の近くまで接近する。すると──。

「ああ、入り口ってこのことなんッスね」

「本当だ、洞窟……かな?」

ルチアとシスカが思わず口にする。その言葉の通り崖のある場所にポツンと真っ暗な洞窟の入り口のようなものがあるのであった。

遠目からは森の木に隠れて見えないが崖の近くまで近づくとよくわかる。

「ここを入れということか──」

「そうだろう、ルーデル。じゃあ行って見るか」


「うん、幸君。いこう!!


そして薄暗い洞窟の中を五人は歩いていく。

バサッ──バササササッ──!!

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃっ!!」

「ルチアちゃん。安心するッス。あれはただのコウモリッス」


「怖い……です」

シスカが驚愕し思わず隣にいたルチアの腕をぎゅっとつかむ。
そして怖がってブルブルと身体を震わせ始める。それに気付き始めたイレーナ。

「シスカちゃん、大丈夫だよ。なにかあったら守ってあげるから」

それを聞いたシスカは今度はイレーナの後ろに隠れ始め服の裾をギュッとつかむ。
特に魔獣がいる気配は感じないが警戒の姿勢は怠らない。少し進むと前方に明かりが見え始める。

「幸君、あそこに何かあるかもしれないです」

「そうだね、サラ」

そして彼らがその場所までたどり着く。

暗闇の世界が一気に明るくなる。
神殿のような大きな部屋。広々としていて壁には魔術的な見たことない文字や美しい幾何学的模様がいっぱいに彫られている。

そして入り口の正面から幸一に聞き覚えのある声がする。

「あんたたち、よくこの場所にたどり着いたわね。やるじゃない」

その声にサラと幸一は戦慄。この声の主を知っているがゆえに。
顎くらいまでかかったセミロングの少女

「あの闘技場以来、久しぶりの再会ね」

「俺もいるぞ~~」

やや気の抜けた声。
先日、闘技場でメーリングを追い詰めたにもかかわらず、この二人のせいで彼女を捕らえるのに失敗してしまった。

「またあんたたちッスか。え~~と、そうだ、私名前知らないッス」

「私サリア、よろしくね」

そしてこの場にピリッとした緊張感が生まれる。
サリアが右手を振ってしゃべり始める。起伏が少なく、感情があまり入っていない声。

「まって、別に今はあんたに敵意なんてないし。戦うつもりはないわ」

「そうだ、短髪の言う通りだ。だから剣を納めてくれ」

幸一は二人の表情からそれが罠ではないと考え剣を下ろす。

「あと短髪はやめてハメス、私にはサリアって名前があるんだから」

「ああ、わかったよ。それと俺の名はハメス。よろしくな」

そう言ってハメスはペコリと頭を下げる。

「なんか、どう考えても戦う雰囲気じゃないっすね」

ルチアが両手を頭の後ろに組み囁く。それは幸一達も感じていた。
予想もしなかった事態に戸惑いながらも幸一が話しかける。


「ここって、政府の秘密機関だって聞いたんだけれど。俺の勘違いだったのかな」

「そうよ」

「ほら、俺達ってあなたたちの敵……だよね?」

幸一が聞きづらそうにサリアに質問をする。彼女は特に敵対心など無いように素っ気なく答える。

「まあ、そう言うことになるわね」

ルーデルが腕を組みながら感じた。

「フン、貴様たちが政府に忠誠心のかけらもないというのはよくわかった」

「私だって奴らは嫌いよ」

サーリアはそっぽを向いてほほを膨らませながら話す

「何かにつけて下の人に威張り散らし粗暴で尊大。暴力、不正、わいろは当り前、ひどすぎよ。とても味方にしたいとは思わないわ」


「けどあんたたち、そう言いつつ彼らに忠実に従っているッスよね」

ルチアがサーリアを指差して言葉を返すとハメスが反応する。

「表向きはな、けど本当の意味で忠実な手下になっている奴なんていねえよ」

「逆らうと私の家族や親友に危害が及ぶのよ」

「どういう意味だ?」

ルーデルの言葉にハメスとサリアが質問に答える。
二人は、この国の治安を守る特殊警察NAVDに所属していて、そこでは冒険者のように魔法が捕まえる者が、政府の直轄機関のもと、街の治安を守るためいう建前で活動していた。

成り上がれば身内にも良い待遇がもらえるという条件を与えられ、魔法が使える人はこぞって活動に精を出したのだが。

「やっていることは必要以上に住民たちを捜査して弾圧したり、気にいらない政治家に付きまとい何かしていないかつかもうとしたり、現実と聞いていた話が世界の果てと果てくらいにちがっていたわ」

「身内や家族の生活を保障するっていうのも。それは建前で本音は家族や身内を人質に魔法を使える者たちを逆らえなくするというのが理由だったんだ」

呆れたような物言い、やれやれといった態度でハメスは語る。

「よくそんな事されて、従ってますよね──」

「しょうがねえだろ。この国じゃあ腐敗がひどくて、俺たちみたいなコネもなくて平民に生まれた奴が成り上がったり、稼ぐにはこれくらいしかねぇんだよ」

「ああ、それはわかるッスよ」

同調するルチア。どうやらこの街ではそれが現実らしい。

(そして成り上がるためにみんな不正に手を出していくと──。何とかしていかないとな)

話はこの遺跡の事に切り替わる。

「この場所の狙いは何だ?」
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