TS! 俺、女の子になってるっ? 魔法少女になった俺は、最強になって百合展開を楽しむようです

静内燕

文字の大きさ
30 / 122

第30話 憧れの、魔法少女に

しおりを挟む
「わ、わかったよ」

 軽快なステップをとりながらリヒレが部屋の外に出ていく。俺も後をついていく形になる。

 そして外へ。

 周囲の視線が集中しているのがわかりとても誇らしい気分になる。すると、道の向こうから女の子2人が歩いてくる。女の子たちは俺たちに気付くなり話しかけてきた。

「あれ、魔法少女じゃない? 頑張ってください。私、応援しています」

「あ、ありがとうね。私頑張る」

 リヒレが羨望の眼差しや言葉を浴び、とても満足気な表情をしている。ちょっと声をかけてみようか。

「リヒレ、魔法少女の姿はどう?」

「さ、最高。フリフリで、かわいくて、かっこよくて、みんなの憧れの的になって。本当に素敵。夢みたい、どうしよう。興奮しすぎてどうすればいいのかわからない」

 いつもの落ち着いた雰囲気からは想像もつかないほどハイテンションで俺に迫ってくる。よほど憧れていたんだろうな。

「と、とりあえず落ち着こう。それでそこらじゅうを歩いてみる?」

「うんうん、歩いてみたい!」

 そして再び街を歩く。出店のパフェを食べたり、手をつないだり、野良猫と遊んだり。
 時折リヒレにがんばれと声をかける住人、かけられるごとにリヒレの表情が喜びに染まっていくのがわかる。

 そして30分ほど街中を歩く、小さな広場のベンチに座り休憩。

「さすがに歩きすぎちゃったな。ちょっと疲れちゃった」

 やっぱり女の子の体。男だったときより息切れしやすい。リヒレもさすがに疲れたようで俺の隣にベンチに座り込む。

 ベンチに座ると俺はリヒレと会話を楽しむ。

「夢のような時間です。本当にありがとうございます」

「いいよ。リヒレが喜んでくれて俺もうれしいし」

 すると、リヒレがシュンとうつむきは決める。

「確かに、魔法少女の姿になって羨望のまなざしを受けていました」

 今の言葉を聞いてリヒレが落ち込んでいる理由がなんとなくわかった。

「けど、それは魔法少女の姿をしているから。けど本当の私は魔法少女ではないし、誰も助けることはできない」

 なるほどな。魔法が使えないから、いつもレテフに守られてばっかりだったな。どこかで自信をつけさせてあげたいな。彼女──。

「でも、そういう気持ちは周囲にも伝わると思う。だから、そこまで気にしないで?」

 とりあえず今はそう問いかけるしかできない。するとリヒレは丁寧にぺこりと頭を下げ始めた。

「ありがとう、ございます。少し、元気が湧いてきました」

 リヒレが微笑を浮かべながら言葉を返す。
 その言葉に俺はホッとする。

「ちょっと、トイレに行きたいわ。ここで待っててもらっていい?」

 そしてリヒレはトイレに行き、それを済ませる。当然俺はベンチにいて彼女は1人だ。
 それが落とし穴だったと俺はまだ知る由もない。


 石鹸で手を洗い、タオルで手を拭いた後に事件は起きた。



 スッ――!

(えっ! 今の何?)

 リヒレが何か背後に気配を感じ、背後を振り向く。しかし誰もいない。しかし今確実に物音がした。

 周囲をキョロキョロさせる。
 そして──。

「誰?」

 ピンク色の髪の毛、猫耳をつけた少女がこっちに接近してくる。目にもとまらぬ速さで一般人の彼女にはどうしようもない。

 ドン──。

 その少女の1撃。
 彼女の意識はテレビのスイッチが切れたテレビのようにプツリとそこで閉じた。


 そして外にいる俺。

「トイレ、長いな……」

 リヒレがトイレに行ってから10分以上たっている。トイレが混んでいる様子はない。
 入り口を見ていたが怪しい人物が出てきたりもしていない。

「心配だな。ちょっと見てみるか――」

 俺はゆっくりとした足取りで男子トイレに入っていく。

(じゃなかった、今の俺は女の子。こっちだ)

 すぐに方向を変えて女子トイレへ。すると――。

「リヒレ、大丈夫?」

 なんと、洗面所のところでリヒレが倒れこんでいたのだ。慌てて俺はそこに駆け寄る。

「大丈夫? しっかりして」


 俺はリヒレを抱きかかえ話しかけるが、彼女は目を覚まさない。
 息はあるみたいだし、とりあえず病院に行こう。

 俺は彼女を抱きかかえ、病院へ。
 病院へ連れて行った後、レテフとサナも病院へ呼んだ。

「リヒレちゃん。大丈夫」

「リヒレ、どうしたの?」

 俺たち3人でリヒレのベッドに行く。するとすでに彼女は意識を取り戻していた。
 リヒレが声に反応し上半身を起き上がらせ。俺達に視線を向ける。

「レテフ。何があったの、教えて?」

 レテフの問いかけにリヒレは、何かを言おうとしゃべろうとするが、すぐに両手ではっとほをかむってしまう。

 何か言えないことでもあるのだろうか。

「とりあえず、何があったか教えてほしいんだ」

「アグナムさん──。その、襲われたんです……ニャ」

 その言葉に俺達は言葉を失う。俺が魔法少女の衣装を貸したばっかりに魔法少女狩りに。

「聞いたことがある。魔法使いを狙った通り魔事件。まさか衣装を貸したタイミングで狙われるだなんて、不幸にも程があるよね」

「そうだなサナ。何か悪い事をしたな」

 貸していなかったら俺が襲われていたってことだよな。

「アグナムは、悪くない……ニャ。落ち込む必要は、ないよ──ニャ」

 そして俺は変な語尾は無視してその時の情報を聞き出す。犯人め、絶対に捕まえる。

「私はただトイレから外に出ようとしただけニャ」

 しかしどうすればいいのだろうか、確か聞いた話だと襲われるときの証言では姿かたちも見えないって。

「私、姿かたち、見たよ──ニャ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...