アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

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マイエル家、エドゥアルド卿

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「皇帝さんから聞いたんだけど、この皇族の仕事に嫌気がさしてるって本当なの?」

 幸乃がどこか言いずらそうに質問をするとシャレーは目を細めて外を見つめながら話しだす。

「だって、変な目で見られるんだもん」

「私たち王族はいつも悪いことばかりしていて何でも望みがかなっていいなってみんなから嫌味みたいに言われるんだもん」


「実際には違うよ、クーデターがあったら真っ先に目の敵にされて下手したら処刑される、結婚はすべて政略結婚で私の気持ちなんか聞いてくれない、対等な人間関係も作れず友達もなかなかできない、この身分でよかった事なんて一個もない、私」

「だから……なんだろう、みんな嫌になっちゃったんだよね」

 3人はどう言葉をかければいいかわからなかった、自分は貴族などではない、だからどう声をかければいいかなんてわからないしありきたりの言葉をかけたとしてもそれで彼女の助けになるとは到底思えなかったからである。

「おやおやお嬢様、こんなところでどうされているのですか?」

 突然の声に3人は声の方向を向く、そしてシャレーが驚き、この場に緊張が走る。
そう、彼こそがシャレーの政略結婚の相手コンラート=フォン=エドゥアルドだった。
 茶髪で長身、銀でできた刺繍や金色の数々の勲章、青色でところどころにルビーやエメラルドの宝石がちりばめられていた。
 いかにも貴族らしい服装でぱっと見では礼儀正しい男性という印象だが、どこか薄ら笑いを浮かべていてどこか威圧的な印象を醸し出していた。慌てた口調でシャレーが言葉を返す。

「エドゥアルド卿、こんなところでどうされたのですか?面会の明日のはずではなかったのですか?」


「先ほど私の部下からこの辺りにあなたが出現しているという情報を聞きましてねぇ、駆け付けたわけですよ、いやあ素晴らしいですよ、変装もうまいですねえ、ほとんど別人ですよ」

 そして彼はシャレーの全身を舐めまわすように見定める。

「いやあ、さすがマイエル家のお嬢様だけあってお美しいですな」

 シャレーは無表情で彼を見つめながら言葉を返す、そして3人にことのいきさつを話し始める。

「彼がこのビコフスキを納める貴族の跡取りの長男コンラート=フォン=エドゥアルド、彼女達3人は知り合いの冒険者です」

 3人は軽くお辞儀をしあいさつする。次にシャレーはなぜ今ここで合わなければいけないかを丁寧な口調で質問した、すると……

「いやあ、私はせっかちで気が早いものでしてねえ、もうすぐ私の嫁になるあなたを一秒でも早く拝んでおきたいものでしてねぇ、そちらこそ何をなさっていたのですか?一国のお姫様がこんなところで」

 彼が薄ら笑いを浮かべながら自信満々に質問するとシャレーは一杯コーヒーを口に含む、そしてコーヒーを飲みこむと冷静な表情を作りながら淡々と言葉を返す。

「あなたには3つの返す言葉があります、
 1つ、私はあなたの嫁になるとはまだ決まっていません、なのでそのような言葉は早計だと考えます、
 2つ、私がここに来た理由はこの街で暮らす一般の人たちがどのような暮らしをしているのかが気になっていたからです、見たところずいぶん荒れ果てて苦しい生活を強いられているようですねえ、バードランドの一件があったことを考慮してもちょっと内政がおろそかになっているのではないですか?
 3つ目、この言葉で私はあなたにわずかばかりの怒りを覚えました、こんなところとはどういう事ですか?ここはあなたが尽くさなければならない一般人や難民となった方がたくさんいるところですそれをこんなところと言い切るとは、私ならそんな言い方はしません」

 シャレーの質問が終わる、するとエドゥアルドは先ほどの言葉を気にもしなかったような態度で、しかしにやりと笑みを浮かべながら冷静に言葉を返す。

「さすが、私の見込んだ通りの女性だ、そこまで民のことを気にかけているとは──ますますあなたのことが私は欲しくなってしまった、そう言ったところも含めてあなたは美しい……婚約の話、まとまるといいですねぇ」

 そういって彼はこの場を去った、この場を去った後、シャレーは気を取り直して今後の打ち合わせをしだす。

「──っていうのを頼みたいんだけどいいかな?」

 シャレーが両手を合わせてお願いをする、すると──

「いいよいいよ、むしろ嬉しいよ、頼ってくれて」

 幸乃が笑顔で了承する、ベルとリルカもそれに同調する。そして夜、夕食が終わった頃に宮殿の前で待ち合わせる約束をして4人はこの店を出た。




 ※



 そして夜、この街の中心部……


 貧困にあえぐこの街とは対照的に豪華絢爛な城、中は整った石畳に大理石の彫刻が所々に設置されていた。

 皆が寝静まろうとしている夜、ここの兵士の鎧を着て城の中をうろつく人が4人ほどいた。シャレー、幸乃、ベル、リルカの4人だった。

 これはシャレー達マイエル家は良くやっている事らしい、地方の貴族たちとの交流を図る時、彼らの言葉をそのまま鵜呑みにせず、実情を知るためにこういったことをしていとのこと。
 悪事に手を染めている貴族は悪いことがあっても真実を話さずにうその報告を平気でするため自分たちで真実をつかみとらなければならないらしい、だから変装をして侵入しそこから本当の情報を集めているらしい。

 ここで二手に分かれるとシャレーがそう囁くと当初の作戦通り二手に分かれた。何かあった時接近戦ができる幸乃とベル、こういった潜入ができるシャレーとベルを分けさせるため幸乃とシャレー、リルカとベルに分かれた。

 幸乃とシャレーが道を歩いて何か手掛かりを得られる場所がないか城を歩いていると。

「ん?どうしたの?」

 シャレーが幸乃の肩をつんつんとついてきたのでそれに小声で言葉を返す、すると……
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