上 下
44 / 112
バードランド編

リルカとミリート

しおりを挟む
「いいんです、遅かれ早かれこの話はしなければなりません、だったら今話します」

 そう言ってリルカは兄と昔のことを話し始める、それは8年ほど前の出来事だった。

 ちょうど今、長年続いた内戦で街は荒廃し、郊外には難民キャンプができていた。
 しかしリルカとミリートの父親ペルラスカ・フレデリックはそれでも平和への想いをあきらめず周りを説得し、何とか他の種族を取りまとめていったのだった。
 そしてやっと内戦が終わるところまで行ったのである。

 そして調印式のため中心地の宮殿へ人間と鳥族、互いの指導者が姿を現す。
 周りには大勢の一般市民、その中にリルカの兄ミリート・フレデリックはいた。
 ペルラスカが人間達の指導者の人物の所に歩み寄ろうとする、そこには終戦を締結をするための書類があり、あとはそこに彼のサインをするだけとなっていた。

 しかし──

 ペルラスカが道を歩いているところを前方から見ていたミリート・フレデリックは後方の人たちに気付く。

 彼らが何故か銃を取り出していることに──
 それを見て慌てて父さんのもとへたどり着く。

 そして彼は父さんをかばうように背後に回る、しかし──

 ペルラスカはそれを知っているかのようにもう一回体を反転し、ミリートをかばう形になる……


 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン

 魔術により連続射撃が可能になった銃でミリートとペルラスカを射撃する。

「何やってんだよ父さん!!」

 ミリートが叫ぶ。

 父は背中から血を流しながら叫ぶ、出血がひど過ぎてもう手の施しようがないのは誰から見ても明らかだった。
 そしてその言葉を最後に彼は息を引き取った。

 白昼堂々、誰もが見ている中で皇帝軍の服を着た兵士が無能力者であった彼を殺した。
 たとえ彼らが冥王軍のスパイであったとしてもその事実はごまかしようがなく停戦ムードだった彼らの感情は一変した。

 俺達の指導者の敵を討つと──

 そして鳥人達は皇帝たちに対抗するレジスタンスとして再び銃を手にとり平和が戻ることはなかった。


 皆が疲弊しきって終戦ムードが漂っていた時でもその事を知っている人たちがそれを反対していた。
 戦争を終わらせるという言葉は彼らの甘い罠であり、また大切な指導者を失ってしまうのではないかという懸念をしながら……

 それでも何とか最近になって新皇帝の介入などもあり内戦は終わったのである、しかし理由は内戦のしすぎで種族たちがもう争う力もなくなったほど疲弊したからであったからであり、彼らのわだかまりが消える事はなかった。

 そしてミリートはすべてに絶望し冥王軍の幹部となり自分たちに牙を向いてきたのである。

 そんな話を終え、3人はいったん準備のため部屋に戻っていった。




 ※




 お日様が昇ってきた昼前、3人のお腹がすいてきたころ、宮殿の前
「ちょっと乗り」の時間になる、そこに

「彼がウダーさん? なんか意外だね……」

 さえない外見で頭部は生え際が頭のてっぺんまで後退したいわゆる若ハゲ、また、近視のため分厚い眼鏡をかけていた、皆が想像するカリスマ指揮官とは遠くかけ離れた外見だった

「私がウダーである」

 そう開口1番に話しかけ、敬礼する、幸乃は前評判から来るイメージとは異なるが意見に少しばかりびっくりしていた
 そしてカラブロが幸乃にこの街のガイドブックを渡しこの企画は始まった

 4人とシェルリはカラブロが用意した馬車で移動を始める

 幸乃がまずはここへ行かないかリルカの相談してみる

 リルカは「そうですね、まずは何か食べたいですね」と言葉を返し幸乃が指差した料理店へ向かうことを決め、馬車の運転士にそこに向かうよう指示を出した

 40分ほどで馬車は目的の料理店に到達

「今回はなんと異世界編ですよ!! ちょっと乗りIN異世界編最初は料理店、どんなものがでてくるのかカメラの前のみんな、楽しみにしていてね?」

 シェルリのカメラに向かってにっこりとしたスマイルで幸乃がセリフを決めるとすぐに4人は店に入る


 白髪交じりの初老の男性ビダルが4人にいらっしゃいませとお辞儀をして座席に案内した

 まずは幸乃がここの名物を聞いてみる、すると店主はメニューを開いてその料理を指差す
 それに幸乃はへぇ~と言葉を返す
 それはビーフストロガノフだった、全員でまずはそれを頼んだ
 ビダルの息子が料理を作り始める、その間幸乃はビダルに話しかける
 聞いたところによるとここは家族経営の料理店らしい

 さらに聞くと元々はここより北部のアルマデラン地区で暮らしていた。 するとその言葉を聞いた瞬間リルカとウダーがピクリと反応する、それに気付いた幸乃が何かあったのか聞いてみるとベルはそこに割って話しかける。 なんでもそこは冥王軍によって占領された地区でそこの人々は奴隷のようなひどい扱いを受けているらしく難民となった人たちがバードランドやその周辺に流れ込んでいるらしい

 今でもその人たちと手紙でやりとりをすることがあるらしくその生活状況が手紙に生々しく記載されていた。 実情は変わらないらしく生活も苦しく冥王の手下たちに彼らのストレス発散のため暴行を受けることもよくあるという

 その言葉を聞いてウダーはうつむきながら話し始める
 その実情は聞いている、だが今の我が軍では冥王たちに勝てるかわからない、一つのチームとしてヒビガ入っている、勝てるかわからない勝負に彼らを巻き込むわけには……

 そこにリルカがそれに勇気づけるように話しかける

「だからあなたが必要なんじゃないですか?私も力になります、だから力になってください、そのヒビが入った私たちをまとめて、それで一つになって強くなって解放しましょうよ、苦しんでいる彼らを」

「そうだな……」

 リルカの力強い呼びかけに彼は黙って窓から外を見ていた、まるでなにかを考えこむかのように

しおりを挟む

処理中です...