アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

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フィテアトル編

恐怖の販売祭

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「最近命がかかった様な戦いが続いたでしょう、ちょっと息抜きに遊びませんか?みんな、きっと楽しめますわ」


「じゃあ今回は私が幸乃さん達を案内するよ」

 そう言いだしたのはジャミアだった、ジャミアは販売側ではないらしいので今回は幸乃達を案内したいということだった。というかこの販売祭で欲しい物が多くあるらしく3人にもアルバイトとして買ってほしい物があるらしい。

 それにみんなが楽しめるようなイベントもあるのだとか……



 すると幸乃はそのころにはベルの状態もかなり良くなっているだろうし、みんなで楽しんでほしいとのことでベルも誘ってみんなでいこうと提案した、それに3人も了承し予定が決まった。


 ベルも日常に戻ってよいと医師から許可が出て実家に戻った。 そしてつかのまの日常に戻る、日々のトレーニングも再開し始めた。しかし今日のトレーニングは以前とは少し違う物になっていた。ベルが病み上がりで本調子でないということもあったがなによりいつも以上に幸乃は気合が入っていた。

 いつも優勢に接近戦を展開していたベルが押され気味になるほどだった。

 復帰したベルもこのやる気には驚いたようでトレーニング中だというのに中断して幸乃に問い詰めるほどだった。

「幸乃さん、ちょ、ちょっといいですか?」

「何?」

「な、なんて言うか、いつもよりやる気がケタ違いでした、私が入院している間何があったんですか?」

 それに対して幸乃はベルが病院にいる間ジャミアに連れられて奈美さんの墓にいったこと、そこで話しを聞いて勇者としてもっと強くなる、みんながあこがれるような勇者になるときめた事を伝えた。

 ほほ笑んで答え始める。

「そうですか、私も凪さんの事は聞いたことがあります、一緒に頑張りましょう。 そんな誰からも認められるような人になるために」

 トレーニングはいつもよりもはかどった。


 そして販売祭当日になる。

 今日は絵画や絵の販売の日である
 ジャミアに誘われて幸乃、ベル、リルカがその場所にやってくる。
 場所はフェテアトルの南側、アスカリ地区、普段から文化人が多く住み、図書館や美術館など芸術や著書など文化に関する施設が多く存在している地区だった。
 その中に販売祭の場所はあった。
 コロッセオのような外見をしているが、屋根が建造物全般に設置されていて古風で巨大なアリーナといった印象だった。

 シンクレアは出店する方になるため、ここ数日は忙しく幸乃達とは離ればなれとなっていた。


 そして約束の時間、日の出の時間に幸乃、ベル、リルカはその場所にたどり着いたのだが──

「な、なんかこわいよ……」

 怖がりなところがあるリルカが思わず声を漏らす、声にはしないが幸乃とベルもそんな印象を感じた。
 オープンはまだの様で入口には長蛇の列が並んでいた、ざっと7~800人ほど。
 雰囲気はピリピリとしていて待機している会場の人たちはどこか殺気が感じられる、リルカだけでなくベルと幸乃もそう感じていた。
 それを聞いたジャミアがなだめるように話しかける。最初はちょっとそういうところがあると、でもそれは最初だけですぐに落ち着くと……
 さらにカバンを開けて買うための資金、それと小銭を渡し始める。

「これは小銭、会計の時にまごつくといけないから持っておいてね」

 さらにジャミアは3人にメモ用紙を渡す。そして3人がどうすればいいのかを説明し出す。

「とりあえずメモを渡すからこの通りに動いてね、さらにこのルートを通らないと人間達の動きの流れに巻き込まれて大きな時間のロスになるよ」

「いい?このイベントは最初の1時間が勝負、そこは戦場、気を引き締めてかかってね!!昼すぎになると人気の書物や団体の物はあらかた売り切れるから会場も落ち着いてくるからゆっくり見れるよ」

「すごい気合が入ってますね……」

 ベルがたまらず突っ込む。

 そして開催の時間が迫ってきた、人々の殺気はピークに立ち、全員が門の前に接近する。

「では、門を開きます、みなさん押し過ぎないでください!!」

 その言葉を合図に警備の兵士が門を開けるとまるで雪崩のように人々が我先にとダッシュで走って中に入っていった。

「行くよ!!みんな!!」

 幸乃達はジャミアのもらったメモの通りブースの列に並び次々に書籍を買っていく。
 常連のジャミアはもちろんベルも、幸乃もそれを長蛇の列に並んでこなしていく。

 問題はリルカだった。

「え~~っと、ここが北側、それであっちが西側のはずだから、だから……」

 会場独特の雰囲気にも慣れず道に迷うリルカ。

「ちょっと、リルカ後ろ!!」

 遠くから幸乃が叫ぶ、幸乃とジャミアが気付いた頃にはすでに遅かった
 慌ててリルカは後ろを振り向くと……

 ドドドドドドドドドドドドドドドドド
「あそこが人気グループだ、いけええ」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~~」

「私、こっちじゃなくてそっちに行きたいんです!!」


 殺気溢れる人々に溺れるかのようにリルカは涙目になり
 悲鳴をあげながら何とか大津波のような人だかりを掻き分けて目的地へ向かおうとする、しかしその努力もむなしくリルカの体は大勢の人々の波に完全に飲まれて目的地とは全く違う方向へ飛ばされてしまった。
 リルカが必死に叫ぶが届かない。
 どうやら人気の出店のグループが販売を開始したらしくそれに気付いた集団が大挙して移動を始めたのだった、不幸にもリルカはその動線にいたせいで集団と一緒に目的とは全く違う方向へ起こられてしまったのであった。

(リルカちゃん、かわいそうに……)

 幸乃はどうすることもできずすぐに自分が担当していた書物の販売している場所へ向かっていった。
「これとこれ下さい、いくらですか?」

「全部で4500eauだよ」

 淡々と幸乃は仕事をこなす、しかし流石に中身が気になったのかそっと本の中身を見てみる、すると……

「ちょっ、何よこれ!!!!」

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