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3章
前線、それでも
しおりを挟む建物を出て、寝どこまで歩く。
街道沿いでは、負傷した兵士を治療していたり──兵士が戦場のことを怯えながら話していたり。
ただ、初日だけあってそこまで消耗しているわけではなさそうだった感じではある。
たまに、笑いながら自分の戦果を自慢げに強調してくる人もいる。それに、周囲と談笑していたり……。
「いまは戦い始めだからこんな空気だけど、徐々に疲労が蔓延してくるわ。どうにかして、それを食い止めていかないと……」
「そうねアルル」
そうだ。まだ始まったばかり。こんな空気がいつまでも続くとは思えない。
自然と気持ちが引き締まる。今日は──すぐに寝よう。
疲れを残さないために、私たちは小屋に着くなりすぐにベッドに入った。
翌日から──激戦が続く。絶え間なく突っ込んでくる敵。
私達が遠距離から敵を狙い打ち、前線に向かってきた兵士をこっちの兵士が迎え撃つ。
こっちはしっかり防御陣地を築いて柵を超えてきた敵に反撃していく。
「天候・大嵐──テンペスト・シムルグ!」
「天候は、雨。レイニー・インパクト」
「聖なる命の源。今交わりて永久の希望となる・天候は雨──・レイニー・エターナル」
戦場の北ローランド領一体に、大雨と巨大な竜巻が出現。大雨と竜巻が敵兵を襲っていく。
強力な旋風で、敵たちはどんどん空に向かって巻き上げられ、吹き飛ばされていった。
しかしそれだけではない。ミシェウの攻撃は滝のような大雨を振らせている。そのおかげで、大砲などの火を使う武器や、火に関する術式が使えなくなってしまった。
それに気付き、困り果てた様子で大砲を捨てて逃げていく兵士たち。
これで、こっちに向かって来る攻撃を減らすことができる。
かなり効いたミシェウの大技。しかし、相手の攻撃を食い止めるとはいえかなり魔力を使い込んでしまったようだ。隣にいるからわかる、強い力だから。
いきなりフラッと体をよろめかせ、ふらついてへたりと座り込んでしまった。
慌てて隣に腰を下ろし、私が体を支える。ミシェウはこっちに向くなりにへらと笑みを浮かべてきた。
「大丈夫?」
「うん、ありがと」
軽く息が上がっている。有効打ではあったけど、連続で出すのは難しいみたい。休ませながら、少しずつ撃っていくしかない。そしてミシェウを休ませている間は──。
「私に任せて。食い止める」
「ああ、俺達だっている」
私たち他の魔術師が止める。ミシェウ一人に、任せてはいられない。しっかりと、私たちが支えていかないと。私だけじゃない、周囲の魔術師たちも自信を持って頷いた。
私たちも、負けていられない。自分たちの力を出し切って、守り切らないと。
「そうね、頑張りましょ」
「ええ」
みんな──士気は高い。私も負けていられない。さっきのミシェウみたいに、周囲を引っ張れるような存在にならなきゃ。
力み過ぎもよくないけど、自然と力が入る。
集いし光の結晶が、新たな想いを力に変える セイバー・スラッシュ・アルカディア
撃滅の閃光弾 ──コズミック・ストリーム──
新しく打てるようになった、術式。それも打ち込んでいく。白い光が、敵が攻め込んでくる領地に直進。直撃した瞬間、大爆発を起こし敵兵たちが吹っ飛ばされる。
そこに、私たちは一気に攻撃を叩き込んでいった。みんな、高ランクの術式を次々と放っていく。放つたびに戦場が爆発、気が付けば相手領地は爆発した後のクレーターでボコボコになっていた。
これなら、相手は直進しづらくなる。クレーターを超えるのに時間がかかるから、そこを狙っていくという事もできる。
うん、効いてる効いてる。それだけじゃない、アルルも今回は参加している。
「みんな、今度は私が行くね」
「頑張って、応援してる」
「研磨されし覇王なる力── 今ここに建言せよ。トワイライト・ライトホール」
その瞬間、ドォォォント言わんばかりの轟音がアルルの杖から生まれる。思わず一瞬目を閉じて耳をふさいだ後、再び戦場に目を向ける。
私の術式よりも、2周りは大きい爆発。さすがはアルル。
アルルが、優しく笑みを浮かべて親指を立てる。
「流石、やるじゃない」
「不動板まして。頑張りましょ」
「ええ」
しかし、それで終わる魔王軍ではなかった。
「マジ──どんどん来るんだけど」
「どれだけ損害を出しても突破しろ。そんな作戦なのね」
それを見た周囲が、険しい表情で引き始める。
そう。こっちがどれだけ攻撃しても、魔王軍は攻めるのを魔王軍は攻めるのを全くやめない。ひたすら、数で攻め込んでくる。人海戦術ともいえる戦術。倒しても倒してもキリがないという状況。いくら損害を出しても構わない。とにかく責めろとでも言わんばかり。
そんな状況で、個人個人では善戦しつつも、徐々に陣地への侵入を許してしまっている状況になってしまう。
「流石にじり貧ね。こっちだって魔力には限界があるし」
「そうね」
今日は何とか耐えられそうだけど。いつまでもつかどうか。他の魔術師たちも、軽く息が上がっているのがわかる。
どうしても、これからが心配になってしまう。
大丈夫なのだろうか。
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