~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

文字の大きさ
17 / 99

第17話 まるでNPC

しおりを挟む

「あの森のダンジョンに、薬草があるのじゃ」

 何も話してないのに、茶色い服のおじいさんが向こうを指さしてしゃべってくる。

「薬草を集めると、何かあるんですか?」

「あの森のダンジョンに、薬草があるのじゃ」

 えーと。話し方がおかしかったのかな? どう話そうか考えていると、ネフィリムが不思議そうな表情でおじいさんに話しかける。

「そちは、どこで暮らしておるのじゃ?」

「あの森のダンジョンに、薬草があるのじゃ」

「森の中には、どんな魔物がおるのじゃ?」

「あの森のダンジョンに、薬草があるのじゃ」


 何度聞いても同じ答えしか返ってこない。同じポーズしかとらない。流石のネフィリムもぽかんとなってしまう。薬草がなぜ必要なのかもわからない。どんな形かもわからない。後でわかるのだろうか?
 本当にモブキャラみたいだな。

“ひどいごり押し”
“NPCかな?”
“ほんとにゲームの中にいるみたい”
“あの森に行けというダンジョン製作者の意思だけは伝わった”
“まあ、森に行けってことだろ。でもいきなり薬草なんて言われてもな”
“クソダンジョンあるある。説明不足でどうしてその行動が必要なのかがわからない。んで後でわかると”
“不親切設計てやつ。村人に話しかけるとわかるかもしれんな”

 参考になりそうなコメントを拾う。なるほど、村人に話しかけたり、森のダンジョンに行けということか。他に手がかりはない。
 行くしかないみたいだ。話すだけだと退屈しそうだし数人話しかけてから薬草を取りに行こうか。

「色々話してから、北にある森に一緒に行こう」

「了解なのじゃ」

 それから、他に話しかけてみたのだが返ってくる答えは全く一緒だった。
 モブっぽい若い男の村人話しかけてみたのだが──。

「困ったことがあったら、あの老人に話しかけるといい。村で一番い知識が深く頼りにされている」

「薬草を求めている人がいるというので聞いてみたのですが」

「困ったことがあったら、あの老人に話しかけるといい。村で一番い知識が深く頼りにされている」

「あっちの森に、何かあったりするんですか?」

「困ったことがあったら、あの老人に話しかけるといい。村で一番い知識が深く頼りにされている」

 さらに、ワンピースを着た若い女の人。

「あなたあっちの村外れの家の人でしょ? 妹が病気なんだって聞いたけどあの病気に効く薬草、知ってるかい。これなんだよ」

 そういって、ポケットから一枚の葉っぱを取り出した。モミジのような形をした葉の草。

「そうなんだ、これが森の中にあるってこと?」

「あなた……」

 以下、さっきまでのような回答の繰り返し。

 何回か聞いてみたが、同じ答えしか返ってこなかった。彼らの言葉から察するに、俺は村はずれの家に住んでいる村人という設定で、病気の妹のために森のダンジョンで薬草を探しに行くというストーリーなのだろう。

 この、昔のゲームみたいな仕様はあいつに問いただすとして、家に入ってみよう。
 一度女の人が指さした実家へ足を運ぶ。コンコンとノックをすると、お父さんらしき男の人が出てきた。モブっぽい普通の人。中は簡素な造りの部屋。

 そして、その奥の部屋に入る。
 金髪で、ツインテールの女の子が「お兄ちゃん、苦しいよ」とベッドで横たわりながら苦しそうに言っていた。

 この子に、薬草を届けるストーリーというわけだな。ベッドで寝込んでいる女の子に話しかける。

「大丈夫?」

「うん。お兄ちゃん、ゴホッ──ゴホッ。ありがとう」

 そう言われても、苦しそう。放っておけないという感情が湧いてくる。

「薬草を取ってくればいいんだね?」

「効く薬草があるっていうのは聞いたけど、いいの? ありがとう。お兄ちゃん、お願いね。ゴホッ──ゴホッ──」

「わかった」

 咳き込んでいて、苦しそうな表情の女の子。この子のために頑張ろうと意気込む。

「お兄ちゃん、頑張ってね」

 優しい笑みを浮かべて、こっちを見てくる。さっきまでとはまるで違う。この子はNPCではないのか?

 そして、女の子はベッドからこっちに向かって手を差し出してきた。俺は女の子の手をそっと握る。
 女の子特有の、細くてやわらかいて。握っていて、とても気持ちいいと感じる。

 ついつい感触を味わいたくなってしまう。

 考えていると、ネフィリムが話しかけてきた。


「全くじゃ。英雄色を好むというが、こんな小さい子に手を出そうとは──」

「待ってくれ。社交辞令みたいなもんだろ?」

「でもそち、少しでもこの子の肌に触れるように触っていたではないか。素振りからわかるぞ。幼い女の子が大好きなのか?」

 慌てて言葉を返すが、ニヤリとした表情で挑発するようにこっちを見ている。こいつからかっている……。

 まずい、以前の世界と違ってこの会話をみんなが見てるんだぞ──念のため流れるコメントに目を通したのだが。

“逝ってよし”
“澄人はロリコン”
“マジかよ”
“【悲報】澄人はハーレムと小さい女の子が大好き”

 コメントからもからかうような言葉が出てくる。とりあえず、火消ししないと。

「えーと、誤解だからな」

「ええじゃないか。こういう慕われ方の方が、そちにはあってるぞ」

「冗談でもやめてくれ。SNSで変な噂流されるから。配信者ってイメージ戦略がとても大切なんだ」

「でも、こういう慕われ方の方がそちらしいのじゃ。いじられながら、親しみやすい勇者という感じじゃったぞ?」

「まあそうだけど……」

 ネフィリムの、キョトンとした俺の反応を不思議がっているような表情。こいつ、俺の以前の世界の時を知り尽くしている。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

処理中です...