~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

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第32話 トラップの床

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 それから配信を再開。3Pは楽しかったとかナニしてたんだとかよくわからないコメントが来てそれを軽く流す。

 岩肌の薄暗い洞窟が続く。時折他の配信者と会ったり、行き止まりに出くわしてしまったり。

「璃緒さんですか? 握手してください!」

「あ、大丈夫ですよ」

 璃緒が握手を求められる。人気者って大変だな。

 オークに宝箱に偽装して開けた相手を食べようとするミミック。色々な魔物たち、しかしさっきの雑魚敵と比べて力の強い敵が増えているというのがわかる。

「敵が強くなってきてる──これはもうじき会えるな」

「ああ、警戒しておくのじゃぞ」

「わかりました。足を引っ張らないように頑張ります」

 ネフィリムの言葉に、雰囲気が引き締まる。強敵とのギリギリの戦い。
 大変なことになるだろうけど、しっかりと乗り切っていこう。



 さっきまでは迷路のようなダンジョンだったのが、山を登るように坂道になっていく。うねうねとしたカーブの道を登っていくと、その先に階段。

 ダンジョンの中の階段を登り、目の前は切り立った崖。かなり高い場所まで登ったせいか下は全く言えない。

 そして──その向こうにはさらなる道。あっちに進めという事なのだろうか。


 その間を、四角い塊が一定の速度で往復している。そこそこ大きい、人が10人くらい乗れそうな床。

 動く床というやつだ。とりあえず、渡ってあっちの道に行けば何かあるのだろうか? 罠の可能性だってある。

「行くしかないです」

「そうなのじゃ」


 璃緒とネフィリムと顔を合わせ、コクリとうなづいた。どのみち床に進む以外道はない。行くしかないのだ。
 そして、動く床がこっちにやってきて3人同時に床へと移動。すると──。

「えっ?」

「なんでですか?」


 動く床が向こうの道に向かって動き始めたのだが、床が動いているのに摩擦自体が全くなくこっちの身体が床に連動して動かない。するすると床だけが動いていく。

 そして、床が俺たちが立っている場所をすり抜けていってしまった。

「「「うわあああああああああああああああああああああ!!!」」」

 そのまま3人そろってそのまま落下してしまったのだ。

 気の抜けたBGMの後に、「GAMEOVRr」の文字が目の前に現れた。なんでrだけ小文字なんだよ。墜落の瞬間、ネフィリムが衝撃を和らげる術式を使ってくれたおかげで何とか無傷でいられた。

「どこか痛いところはないか?」

「大丈夫です。ありがとうございます」

「ネフィリム、ありがとな」


「どういたしましてなのじゃ」

 嬉しそうに頭を撫でている。照れている感じだ。

 下のジャングルのような場所から、ダンジョンへと進む。さっき進んでいったダンジョンを歩きながら、どうやって動く床を渡って向こうの道に進めばいいかを話し合った。

「あれ、どうやって進めばいいんだ?」

「これは罠で、迂回路とかがあるんですかね?」

 璃緒の言葉で、今までの道のりを思い出し記憶をたどるが、そんな場所はなかった。それとも、もう一度くまなく探さなきゃいけないか? そう考えながら今度はコメントに目を通す。少しはいいアイデアが出てくるかもしれない。

“動く床に合わせて走っていけばいいんやないか?”
“床に合わせて動け”
“床自体はすり抜けないわけだしな。これも何かのバグか?”

 なるほど。あの床、そこまで早く動くわけではないペースだし、速度も一定だから小走りすればついていける。
 格好つかないけど。すごいネタにされそう。


 何か顔に当たってると思ったら、ネフィリムと璃緒が俺の近くまで寄って画面をのぞいていた。一応聞いてみるか。

「格好つかないけど、どうする?」

「う~~ん、驚いちゃったけど面白そうだし、ちょっとやってみたいと思う。楽しそう」

「そのくらいいいのじゃ。楽しそうだし、やってみるのじゃ」

 2人とも承諾してくれた。ネフィリムはともかく、璃緒までどこか楽しそうな表情をしている。ちょっと意外だった。

 それから、ダンジョン内の敵たちを倒しながらもう一度あの動く床へ。一定の速度でこっちの崖と向こう岸までを移動している。

 そして床がこっちへたどり着いたとき、左右にいる2人と息を合わせる。

「行くよ」

「わかったのじゃ」

「はい──」

 ひょいと飛び乗ってから、間髪を入れずに動き出す床に合わせるように早歩き。動く床の動きに合わせて、前に行きすぎないように、しかし遅すぎて床から落ちないようにペースを守って。下が動いているのに、触れている感触そのものがない。不思議な気分だ。

 小走りする形で、何とか向こう岸まで渡っていった。

“なんか草”
“どんな調整したらこんな床になるんだよ”
“ほかの配信者も見てるんだけど、やっぱクソダンジョンだなここ、調整が甘いしおかしいバグが所々あるし”

「ふう、じゃあ先へと行くのじゃ」

「そうですね」

 そして、俺たちは再びダンジョンを進んでいった。


 ダンジョンの道が荒くなっていく。いたるとこから見つかる捨てられた剣や真っ二つに折れた槍。

 この辺りでやられた配信者がいるのだろうか。真っ暗な道、さっきよりも強いゴブリンが集団で奇襲してきたり、モンスターが突然現れたりする。


「強くなってきてる。もうすぐなのじゃ」

「はい、頑張りましょう」
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