45 / 99
第45話 決着・勝因
しおりを挟む全力の攻撃、セラフィールもそれに負けないくらいの力を出して槍に込めてくる。正面からぶつかってくるつもりだ。俺と同じ──それなら、俺も全力を出す。それが、セラフィールの感情に答える唯一の手段だ。
「これで終わりだ!!」
「2度も負ける、俺じゃねぇ。最後に立っているのは俺だってことを教えてやる!!」
そして、2人の攻撃がぶつかり合う。俺も当然だが、セラフィールだって全力を尽くしている。手加減なんてない力と力のぶつかり合い。
大きな音の爆発音が鳴ったと同時に互いの攻撃がぶつかった。
衝突した瞬間に衝撃波が発生。そして──打ち勝ったのは俺の術式だ。
俺の攻撃がセラフィールの攻撃を打ち破り、セラフィールに直撃。セラフィールの身体は大きく吹き飛んで壁に直撃。そのまま体は落下。勝負あったな。
倒れこんだまま、セラフィールがつぶやいていた。
「くそっ……またお前に負けたのかよ」
「待ってくれ。お前は俺に負けたんじゃない。俺『たち』に負けたんだ。2人がいなかったら勝っていたのはお前だった」
俺は、一人ではセラフィールに勝てなかっただろう。協力してくれた2人がいた。そして互いに意思疎通もできていてコンビネーションも最後だけは完ぺきだった。それでつかんだ勝利だと強く感じる。
2人が追い詰めてくれたおかげで、何とか俺の有効打が決まったんだ。3人の勝利だ。
「からすみさん、大丈夫ですか?」
ボロボロになった璃緒が息を荒げてこっちへ向かってくる。相当消耗しているみたいだ。
「大丈夫。璃緒こそ大丈夫なの? かなりきつそうだけど」
「こっちは大丈夫……です。ただ、だいぶ消耗しました、少し休ませてください」
「わかった。少し休もう」
そして、璃緒と隣り合わせに壁に寄っかかって座り込んだ。しばらく戦いは出来なさそうだな。そこにネフィリムがやってくる。
「2人ともご苦労なのじゃ」
「ネフィリムこそ。一端休もう。大分疲れたろ」
「それもいいのじゃが──これはどうじゃ?」
そう言ってネフィリムはやさしい笑みを浮かべると、スッと両手を広げてこっちに向けてきた。
「何?」
「こうやって勝利した時は、こうして健闘をたたえあうのじゃ。その方が、みんなの士気が上がるのじゃ」
「へぇ~~面白いわね、やってみたい」
璃緒はご機嫌そう。確かに、ただ休むだけというのも面白くない。こういうスキンシップみたいなのがあったほうが、親睦が深まりそう。楽しくたたえあうのもいいな。ということで璃緒と同時に手を出して、パチンとハイタッチをした。2人の、柔らかくて傷だらけの手が当たる。
「戦いの中だけではない。それ以外でもこうやってみんなの結束を高めるのもわらわの役目じゃった」
「流石は元魔王──みんなの士気を上げるのも上手いな」
「はい。ちょっとうれしい気分になりました」
どこかほんわかな空気が流れていると、セラフィールの方から物音がした。倒れこんでいたが上半身を起こして、胡坐をかいて座っていた。
自身の敗北を心から悟ったのか、どこか済んだ表情でこっちに視線を向けていた。
「完敗だ。俺にはできない芸当を見せつけやがって」
「まあ、元部下に負けたらしめしが付かないのじゃ。それで、そちはどうするのじゃ?」
そうだ。セラフィールはどうするのだろうか。まさか、ここを拠点に俺たちの世界を侵攻するとか言わないよな?
セラフィールは腕を組んで、優しい笑みを浮かべて言った。
「俺が器用じゃないのは十二分にわかってる。周囲からどれだけクソと言われようと、ここから去るつもりはない」
そう言うと思ってた。いくらは説得しても、動じないとは思っていた。骨が折れる戦いになりそうだなこれは。
「そちが強い信念を持って行動してるのは知っておる。わらわの下で戦っていた時も、今この時も──」
「まあ、こっちから手出しはしねょ。またお前たちと戦うなんてことになったら命がいくつあっても足らないしな。しばらくはダンジョンにいるよ」
「でも、ダンジョンで稼ぎたいならもっと改善しなきゃいけないところもあるよ。いろいろネタにされてるから、ネフィリムのところみたいに」
「わらわのは──少しずつだが改善していってるのじゃ。一緒にするでない」
「マジかよ、何とかしないとな」
「俺でよければ、色々と教えてあげるよ。でも、他と一緒というのもつまらないし、そこはみんなで考えよう」
「まあ、みんな行儀がいいダンジョンばかりってのもあれだから、一個ぐらい個性的なダンジョンがあってもいいってのは思ったわ。みんな同じようなものを目指してたら、同じ物しかできないし」
ボロボロになって、座り込んだ璃緒が苦笑いの表情を浮かべる。確かに、一個くらいはどこかおかしくて、個性があるダンジョンがあったっていいとは思う。
「後一応言う。俺はもう戦えないぜ。首を取りたいなら取れよ」
セラフィールもまた、どこか満足げに笑みを浮かべていた。彼女なりに精一杯、全力で戦ったのだろう。だからここで首を切られても悔いはないと──。
実にセラフィールらしい答えだ。なんというか、侍みたいだし──
でも、そんな気にはなれなかった。
「するわけないだろ。みだりに危害を加えないなら、こっちも何もしない」
14
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる