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第64話 トラウマ
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流石は、世界の半分を束ねた元魔王なだけはある。色々な人を見てきて、直感で理解しているのだろう。
「2人は、相当トラウマを抱えておる。澄人やわらわたちだけでは限界があるかもしれぬ。最初はよくても徐々にトラウマが戻ってしまうかもしれぬ。じゃから、わらわが手助けをする」
「あ、ありがとう」
ネフィリムはネフィリムで、ちゃんと考えてくれるんだな。まあ、そういう意味での面倒見がよくないと人が付いて行かないのだろう。
「じゃが催眠だって決して万能ではない。例えばじゃ──そちが考えているであろう、わらわと璃緒、この2人でエッチな4対1プレイをしたいとしよう」
「んなこと言った覚えはねーぞ」
「本人が本能的にしたくないと思ったことは決してできないのじゃ。あくまで、本人たちがこうしたいという気持ちがなければ、催眠はうまくいかぬ」
「へ~~。催眠術ショーとかしか知らないんで、参考になります」
「あと、一定の魔力を持った存在に催眠はかけられないのじゃ。例えば璃緒とか──。澄人も抵抗されるとムリなのじゃ。抵抗しようと思うとされてしまう」
つまり、強い魔力を持った人だと抵抗されるってことか。まあ、2人ともトラウマを克服したいという意思はあるから大丈夫だろう。
「ちょっと、時間をかけるぞい」
「わかった」
「2人とも」
「「は、はい」」
加奈とろこは催眠にかかった特有の、光を失ったとろんとした目でネフィリムに言葉を返す。
「ラポール(架け橋)というやつじゃ。まずは、警戒心を解いてから」
ネフィリムの表情、相当真剣モードに入ってるのがわかる。
「大丈夫じゃ──気にすることはない……嫌な命令だったら、拒絶してもよい」
「……はい」
「わかり、ました」
「そち達の怖がっている心を研ぎほぐしたいのじゃ。安心してほしい」
それから優しく、加奈の背中をさする。
「怖いか?」
「……はい」
そう答える加奈。体が震えていて、目からうっすらと涙がこぼれは始めているのがわかる。それだけじゃない。
話しかけてないはずのろこまで、動悸が激しくなり額から汗をにじませている。
ネフィリムは、それに気付いたのだろう。2人の間に入って、2人を自分の身体に寄せる形になる。
「怖い、その感情を少しずつ溶かしていくぞ」
「……はい」
「想像するのじゃ、自分を包んでいる氷のような、冷たいものを」
「冷たい、もの」
「それは、戦いによって刻み付けられた恐怖そのもの」
「あ、あ、あ……っ」
「うっ……うあっ」
それを聞くだけで、2人の表情が引きつった。もう、見ているだけで心が痛くなってくる。俺たちが来る前までに、つらい思いをしたんだな。ネフィリムはその姿にしばし思考をしてからさらに暗示を毛kて行く。
「そんな冷たい氷が、少しづつ溶けていく」
「溶けていく」
「ゆっくりと、溶けていく。体がぽかぽかと暖かくなって──」
加奈の表情が変わっていく。さっきまでのような怯えや恐怖をにじませていた表情から、ほっとしたような、安堵したようなものになっている。そう考えていると、ネフィリムが耳打ちしてくる。
「澄人、加奈殿の手を握ってくれ。ろこ殿は私が握る」
「わ、わかった」
そして、俺は加奈の両手を、ネフィリムはろこの両手を優しく握った。女の子特有の、冷たくて滑らかな手。
「手が暖かいじゃろう?」
「「はい」」
「それは、そちの心を現している物じゃ。じゃから、2人の手が暖かくなっていくごとに、冷え切っていた心も温かくなっていく……」
「「温かく、なっていく」」
「怖さが、なくなっていく」
「「なくなっていく」」
「そうじゃ。心が落ち着いていく。冷たい、自分の心を縛り付けていたものが溶けていって、少しずつ、温かいもので心が癒されていく」
ほんの少しだけ、2人の表情が柔らかくなった。
その後も、冷たくなった2人の心を和らげるかのように暗示をかけていく。20分ほどたった。
「あ、あ──」
加奈の呼吸が、落ち着いてくる。表情も、少しずつではあるが柔らかくなっていっているのがわかる。
ろこも、安堵したかのように大きく危機を吐いて肩を下ろす。
「これでかなりトラウマは和らいだじゃろう。あとはわらわたちと澄人の頑張り次第じゃ」
「わかった」
そして、ネフィリムは2人の催眠を解く。
「3つ数えるとそち達は目を覚ます。すっきりとした、陽気な目覚め。1.2.3」
パンと手を叩くと、2人は目を開けた。
ゆっくりと開けて、ぽかんとした表情。まだ覚醒しきっていないのだろうか、ぼーっとした感じで見つめ合う。
「これから、徐々にそちたちの恐怖を解いていくのじゃ」
「はい」
「ありがとう、ございます」
「例には及ばぬ。これから、サポートしていくぞい。あと澄人と璃緒殿」
「はい」
「何?」
「とりあえず、デートの方よろしくなのじゃ」
璃緒の強気の返事。璃緒なら大丈夫だろう、面倒見が良くて、周囲のことを想いやって。
後は俺。絶対に、加奈を元気にするぞ!
「加奈?」
「す、澄人君」
「絶対、加奈の事元気にして見せるから。よろしくね」
「こっちこそ、よろしく」
加奈の表情が緩んで、安心した。加奈が喜んでいる表情や安心しきっている姿を見ていると、こっちも心が落ち着いてくる。
加奈の喜ぶ表情が見れるように、精一杯尽くしていきたい。
「2人は、相当トラウマを抱えておる。澄人やわらわたちだけでは限界があるかもしれぬ。最初はよくても徐々にトラウマが戻ってしまうかもしれぬ。じゃから、わらわが手助けをする」
「あ、ありがとう」
ネフィリムはネフィリムで、ちゃんと考えてくれるんだな。まあ、そういう意味での面倒見がよくないと人が付いて行かないのだろう。
「じゃが催眠だって決して万能ではない。例えばじゃ──そちが考えているであろう、わらわと璃緒、この2人でエッチな4対1プレイをしたいとしよう」
「んなこと言った覚えはねーぞ」
「本人が本能的にしたくないと思ったことは決してできないのじゃ。あくまで、本人たちがこうしたいという気持ちがなければ、催眠はうまくいかぬ」
「へ~~。催眠術ショーとかしか知らないんで、参考になります」
「あと、一定の魔力を持った存在に催眠はかけられないのじゃ。例えば璃緒とか──。澄人も抵抗されるとムリなのじゃ。抵抗しようと思うとされてしまう」
つまり、強い魔力を持った人だと抵抗されるってことか。まあ、2人ともトラウマを克服したいという意思はあるから大丈夫だろう。
「ちょっと、時間をかけるぞい」
「わかった」
「2人とも」
「「は、はい」」
加奈とろこは催眠にかかった特有の、光を失ったとろんとした目でネフィリムに言葉を返す。
「ラポール(架け橋)というやつじゃ。まずは、警戒心を解いてから」
ネフィリムの表情、相当真剣モードに入ってるのがわかる。
「大丈夫じゃ──気にすることはない……嫌な命令だったら、拒絶してもよい」
「……はい」
「わかり、ました」
「そち達の怖がっている心を研ぎほぐしたいのじゃ。安心してほしい」
それから優しく、加奈の背中をさする。
「怖いか?」
「……はい」
そう答える加奈。体が震えていて、目からうっすらと涙がこぼれは始めているのがわかる。それだけじゃない。
話しかけてないはずのろこまで、動悸が激しくなり額から汗をにじませている。
ネフィリムは、それに気付いたのだろう。2人の間に入って、2人を自分の身体に寄せる形になる。
「怖い、その感情を少しずつ溶かしていくぞ」
「……はい」
「想像するのじゃ、自分を包んでいる氷のような、冷たいものを」
「冷たい、もの」
「それは、戦いによって刻み付けられた恐怖そのもの」
「あ、あ、あ……っ」
「うっ……うあっ」
それを聞くだけで、2人の表情が引きつった。もう、見ているだけで心が痛くなってくる。俺たちが来る前までに、つらい思いをしたんだな。ネフィリムはその姿にしばし思考をしてからさらに暗示を毛kて行く。
「そんな冷たい氷が、少しづつ溶けていく」
「溶けていく」
「ゆっくりと、溶けていく。体がぽかぽかと暖かくなって──」
加奈の表情が変わっていく。さっきまでのような怯えや恐怖をにじませていた表情から、ほっとしたような、安堵したようなものになっている。そう考えていると、ネフィリムが耳打ちしてくる。
「澄人、加奈殿の手を握ってくれ。ろこ殿は私が握る」
「わ、わかった」
そして、俺は加奈の両手を、ネフィリムはろこの両手を優しく握った。女の子特有の、冷たくて滑らかな手。
「手が暖かいじゃろう?」
「「はい」」
「それは、そちの心を現している物じゃ。じゃから、2人の手が暖かくなっていくごとに、冷え切っていた心も温かくなっていく……」
「「温かく、なっていく」」
「怖さが、なくなっていく」
「「なくなっていく」」
「そうじゃ。心が落ち着いていく。冷たい、自分の心を縛り付けていたものが溶けていって、少しずつ、温かいもので心が癒されていく」
ほんの少しだけ、2人の表情が柔らかくなった。
その後も、冷たくなった2人の心を和らげるかのように暗示をかけていく。20分ほどたった。
「あ、あ──」
加奈の呼吸が、落ち着いてくる。表情も、少しずつではあるが柔らかくなっていっているのがわかる。
ろこも、安堵したかのように大きく危機を吐いて肩を下ろす。
「これでかなりトラウマは和らいだじゃろう。あとはわらわたちと澄人の頑張り次第じゃ」
「わかった」
そして、ネフィリムは2人の催眠を解く。
「3つ数えるとそち達は目を覚ます。すっきりとした、陽気な目覚め。1.2.3」
パンと手を叩くと、2人は目を開けた。
ゆっくりと開けて、ぽかんとした表情。まだ覚醒しきっていないのだろうか、ぼーっとした感じで見つめ合う。
「これから、徐々にそちたちの恐怖を解いていくのじゃ」
「はい」
「ありがとう、ございます」
「例には及ばぬ。これから、サポートしていくぞい。あと澄人と璃緒殿」
「はい」
「何?」
「とりあえず、デートの方よろしくなのじゃ」
璃緒の強気の返事。璃緒なら大丈夫だろう、面倒見が良くて、周囲のことを想いやって。
後は俺。絶対に、加奈を元気にするぞ!
「加奈?」
「す、澄人君」
「絶対、加奈の事元気にして見せるから。よろしくね」
「こっちこそ、よろしく」
加奈の表情が緩んで、安心した。加奈が喜んでいる表情や安心しきっている姿を見ていると、こっちも心が落ち着いてくる。
加奈の喜ぶ表情が見れるように、精一杯尽くしていきたい。
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