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第65話 今度は、加奈とデート
しおりを挟むそして、ダンジョンから帰ってから次の土日。
加奈とデートの日がやってきた。
残暑が大分和らいだ晴れの日。
俺がやってきたのは家から数十分歩いてたどり着いた近所の大きな公園。俺たち子供のころよく遊んでいた公園。
10時半集合のため、その10分前に約束の入り口前に集合。
「やっぱり、公園でよかったのかな?」
そんなことを考えていると、加奈がやってきた。俺を目が合うなり、笑顔になって大きく手を振ってくる。
緑色のシャツに、白いスカート。そして大きなかばんを肩にかけていた。ちょっとだけど、化粧をしているのがわかる。気合を入れてきたのがわかる。とてもかわいい姿。
「澄人君、おはよう。ごめんね、待った?」
「ああ、そんなことないよ。俺も今来たばっかりだし。さあ、行こうか」
「う、うん」
手をつないで、俺たちは公園に入る。加奈の手、柔らかくて握っていてとても気持ちいい。しかし、やはり心配になってしまう。俺と加奈は、ネフィリムたちと別れたとどこでデートをしようか相談した。
その中で、加奈の要望を聞いて、俺はこの場所を選んだ。
どこかに行くよりも、落ち着いて話したいという加奈の要望。それをもとに色々考えた結果、こうして昔遊んでいたところにしようと決めたのだ。
公園に入ると、大きなアスレチックに近い建物に山の傾斜を利用した滑り台、ブランコ。
そして広々とした原っぱ。小学校のころは、よく友達と遊んでいたな。
とても懐かしさを感じる。
ネフィリムや璃緒とのデートとは違って、デートスポットに行くわけではないけれど、加奈と一緒によく遊んでいた思い出の場所でもある。
そんな公園の、加奈とよく遊んでいた原っぱ。手をつないでその場所を見ていると、加奈が話しかけてきた。
「澄人君」
「何?」
「本当に、ここでいいの??」
加奈が申し訳なさそうな表情で言う。
「えっと、あの後考えたんだけど……もっとデートぽい所の方がいいんじゃないかなって思って。おしゃれなお店とか、夜景のきれいな場所とか──後は、ええと……その──」
「その?」
加奈の表情が赤くなり、恥ずかしそうに口元を両手で押さえてくる。
「ホ、ホテルとか」
その言葉に思わず一歩引いてしまう。加奈に彼氏がいたなんて聞いたことはないし自分からそういうことを言うタイプではない。
「ろこから聞いたのかそれ」
「い、いや違うけど。確かによく遊んだ場所がいいって聞いたから、ここがいいかなって」
あの子か──確かに、あり得そうだ。ネフィリムも入れ知恵もあったかもしれない。加奈に変なこと教えるなよな……。
「う、うん。色々あって、つらいことばっかりだったから……いかにもデートって感じもいいけど、いつも澄人君と一緒にいた場所がいいなって思って……やっぱり、嫌だった??」
加奈が俺から目をそらして、悲しそうな表情をしてくる。まずいまずい、何とかフォローしないと。
「そんなことないよ」
「え?」
「俺も同じことを考えてた。そういう、いかにもデートってところも悪くないけど、加奈と初めてデートするなら、子供のころいつも遊んでいたところがいいなって思った。そこでさ、前みたいにお弁当箱広げながら楽しく話したいなってなって思ってた」
その方が変に固くならずに済むし、気楽にいろいろ話せると思う。
そして加奈は顔を真っ赤にして口元を覆う。
「あ、ありがと」
照れているけど、どこか嬉しそう。
まあ、加奈がいいというならいいか。楽しそうな場所は、加奈が元気になってからでもいい。今はこの場所で加奈といる時間を楽しもう。そんなことを考えながら周囲に視線を向ける。
原っぱが広がる場所。
周囲を見ると、昔の俺のように子供たちが元気に遊んでいたり、家族連れの人たちがシートを広げて楽しそうに食事を楽しんでいたり。
そんな場所の、人がいないところに移動。カバンからブルーシートを取り出して敷いてから靴を脱いで座る。
それから、ゆっくりと寝っ転った。
「でも、こうして何もしないで寝っ転がるのもいいね。日頃の疲れが取れるっていうか」
「うん。太陽の光もあって、なんか癒される」
加奈の優しい笑み、嬉しそうな表情。確かに、消耗しきっていた加奈にはぴったりの場所だ。
こうして、ただ一緒にいるだけで心が落ち着いてくる。
隣りの加奈を見ると、加奈と目が合った。目が合うと加奈は俺の腕をぎゅっとつかんでくる。
加奈の、柔らかい腕が当たってとても心地よい。というかおっぱいが当たってる。
「こうして澄人君と一緒にいると、とっても安心」
そう言って、笑顔を向けてくる。こういう表情、本当にかわいいくてずっと見たくなってくる。
「ありがとう」
それから、しばらくの間2人一緒に体を寄せ合って、青空を見上げる。
璃緒やネフィリムの時とは違うけど、こうしてただこの場にいるというのもまったく悪くない。
加奈と一緒に遊んだ時のことを、本当に思い出す。
「加奈」
「何?」
「まだ、ダンジョンのこと──怖いって思ったりする??」
当たっている加奈の腕が、震えているのがわかる。答えを聞かなくても、どう思っているのかすぐに理解できる。
「まだ、怖いって気持ちはあるかな。一昨日なんて、夢に出たし」
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