~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう

静内燕

文字の大きさ
66 / 99

第66話 素敵なお弁当

しおりを挟む

「そ、そうなの?」

「傷ついている人に、八岐大蛇やほかの魔物が何度も攻撃しててさ──ぼろぼろになって、重傷を負って、そのときの叫び声が聞こえてくるの。それが聞こえるたびに、体が震えあがってきて……」

「もう言わなくていいよ。辛そうだし」

「ありがとう」

 加奈が強く俺に身を寄せてくる。これ以上は聞かない方がいいな。
 少しずつ、加奈の恐怖を取り除いていこう。そしてお腹の虫が鳴く。
 スマホを取り出して時間を確認すると、すでに11時30分。周りを見てもシートで弁当箱を広げている人がちらほら。

 お昼時か──そう考えていると、加奈が腕を引っ張ってきた。

「お弁当作ってきたんだけど、一緒に食べない?」

「ああ、作ってきてくれたんだっけ」

 昨日の時点で、LIANで加奈が言っていたのだ。「明日は私が2人の弁当をつくる」と。
 そこまで言うんだから、相当力が入っているだろう。加奈は、こういう時はとても一生懸命な性格なのは知っている。

 そして加奈はカバンから大きなお弁当箱を取る出す。ゆっくりと上の蓋を取ると、豪華そうな料理が出てきた。

「みんな手作りなんだ。美味しいかわからないけど、一緒に食べよ」

 人差し指で頬をぽりぽりかいて、目をそらしながら言う。中身は──それは豪勢そのものだった。

 おにぎりが4つ。それから──卵焼きにたこさんウィンナー、ステーキにほうれん草の胡麻和え。野菜炒めにから揚げ。赤飯。とにかく豪華そう。

 これ全部、加奈が作ったってこと?? 視線を加奈に戻す。

「時間かかったんじゃない?」

「う、うん。朝早く作ったんだけど。いろいろ美味しくしようとしてたら時間がかかってギリギリになっちゃった。それで、小走りでここまで来て……」

「すごいね、豪華だね」


 加奈が、指をつんつんさせながらちょっとうれしそうに語る。そんなに力を入れていたなんて。
 というか、全部食べ切れるかな? ちょっと不安だ。あと、加奈の期待に応えられるようにこっちも何かしないと。

「まあ、残っちゃったら持ち帰ってもいいから。無理して食べないでいいよ!」

「わかったよ。でも、せっかく加奈が愛情を込めて作ってくれたんだから、食べられるだけ食べるよ」

「あ、ありがとう」

 そうだ。せっかく加奈が俺のためにと愛情をこめて作ってくれたお弁当。加奈の気持ちにこたえるためにも、しっかりと頂きたい。箸をとって、なににしようかな……。
 まずは、卵焼き。

 一個取って、一口頂く。おおっ、卵は焼き過ぎず半熟。外はふわっとしていて、中はトロッとしている。おまけに甘い味付け。

「澄人君、甘い卵焼きが好きだったでしょ? ちゃんと美味しく作れてる?」

「うん、とっても美味しいよ。昔と同じだね」

「そう言ってくれると、愛情込めて作った甲斐があるなぁ~~」

 同じように卵焼きを食べている加奈。とても嬉しそう。加奈がうれしそうな表情になって、本当に良かった。
 今度は、おにぎり。何が入っているのかな?一口食べてみる。

「これ、生たらこ??」

「う、うん。これも、小さいころ澄人君美味しそうに食べてたから。ダメ?」

「そ、そんなことないよ。子供のころのこと、覚えてくれていてとっても嬉しいよ。半生になっていて、とっても美味しいね」

「ありがとう。そう言ってくれて、本当に作り甲斐があった」

 たらこを焼く時間を減らして、中心部が生になっているんだ。この粒粒と御飯が本当に合う。

 それから、野菜炒めとステーキ。赤飯。

 ステーキは、口に入れるだけで脂がとろける、とっても柔らかい。
 脂がのっていて、高そうなお肉を使っているのがわかる。おまけにたれも甘くてコクがある今まで食べたことがない美味しさで赤飯がとても進む。

「この味付け、加奈が作ったの?」

「う、うん。どうすれば澄人君が美味しく食べてくれるかなって、色々考えて作った。ちょっと甘すぎちゃったかな?」

「え、そんなことないよ。今までにないくらい、どんなお店にも負けないくらいすっごい美味しいよ。びっくりしちゃった。素敵な味だったよ」

「喜んでくれて、ありがとう」

 嬉しそうな表情で、にっこりと笑う。心の底から喜んでいるのがわかる。加奈が喜んでいるのを見ていると、こっちも嬉しい気持ちになってくる。

 量は多かったが、8割がた食べ終わる。加奈が、苦笑いしながらポッコリと出たお腹を押さえる。

「やっぱり多かったね。残して夜食べてね」

「いいよ、何とか食べるよ」

「あーいいっていいって無理しなくて。お腹空いたときに美味しく食べてもらった方が言い方」

「うん、ありがと」

 そして、弁当をしまって俺たちは寝っ転がった。ぽかぽかと暖かい中、ただ青空を見つめる。

 俺の腕に再び抱きついてくるかな。優しく手を握ると、やっぱりまだ怖がっていた。
 もう片方の手で加奈の髪を優しくなでる。

「加奈──トラウマ、克服できるといいね」

「う、うん。私、頑張るよ」

 そう言うと、加奈が握る手に力を入れてくるのがわかる。克服したい意思はあるというのはわかる。

 でも、加奈一人じゃ厳しいかもしれない。何とか、力にならないと。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

処理中です...