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第68話 こんどは、ろこの番
しおりを挟む「そうだね。今日はありがとう」
大きく手を振って別れる。加奈は、にっこりと笑っていた。
そんな加奈の姿が、とても眩しく見える。
「加奈」
「何?」
「これからも、加奈の事応援してるからね。今度は、一緒にダンジョン潜ろ」
「も、潜る? 澄人君と?」
「う、うん。どこかで、一緒にコラボとかできたらいいなって思って」
そういえば、加奈と一緒に戦った経験がなかった。
これまでは璃緒やネフィリムと一緒だったけど、ネフィリムだってどこかで分かれる可能性はあるし、璃緒もパーティーの怪我が治れば戻ってしまうだろう。
一人だと、また再生数が落ちてしまう可能性はある。
そんな時、かわいくて人気のある加奈とろこと一緒に配信すれば、息を吹き返す可能性は十分ある。
「そうだね。その時はよろしくね」
そして、俺たちは別れた。後姿を見ながら、加奈に「がんばれ」とエールを送る。
加奈は──優しくて、本当は芯が強い女の子だ。絶対に、またダンジョンに復帰できると思う。
あとはろこだ。璃緒とネフィリムが励まそうとしているみたいだけど、うまくいくといいな。
ろこは──あまり話したことはないけど、元気そうに見えて周囲のことを気にしてそうな気がするんだよな。気丈にふるまってるけど、自分のせいで加奈を怪我させたことを気に病んでると思う。
でも、璃緒もネフィリムがいる。2人とも、実力はもちろん面倒見もよくて困っている人がいたら助け舟を出すタイプだ。
今すぐには無理かもしれないけど、絶対に復帰できると思う。
璃緒視点。
東京駅の丸の内改札でネフィリムさんとろこさんと集合。目的地へ出発。
「道には迷ったが、何とか集合できたのじゃ。じゃあ、一緒に行くのじゃ」
「やっぱ東京駅はダンジョンやな。電話しながら出ないと会える気がせぇへん」
今日は、ネフィリムさんとろこさんと一緒にお出掛け。楽しい時間を過ごして、ろこさん十一日を過ごすのが目的だ。
からすみさんは、幼馴染である加奈さんとデートをしている。
私達と違って、幼馴染なのを生かして子供のころ行っていた場所で過ごしているという。
からすみさんは、ちょっと異性として物足りないものはあるけど、周囲のことを想いやられる性格。きっと、加奈さんを元気づけられるだろう。
私達は、ろこさんと出かけることとなった。もちろんろこさんとは面識が薄く、まだ距離感がある。
だから、一緒にお出かけして美味しいものを食べて、元気出してもらって──気分転換してもらう。
まずは──私の知り合いの歌手のコンサートへいこう。そのために、中央線で飯田橋で降りて東京ドームへ。
道を歩いているときも、会話を楽しむ。沈黙が続くと、距離が縮まらないから。
「たけのこっていうお菓子。とっても美味しいのよ。食べてみて」
「おおっ、サクッとしたビスケットと濃厚なチョコがよく合っているのじゃ」
「わいはキノコ派やから興味あらへんけど、おいしそうに食べとるのは、見ててわかるでぇ。うちも後で布教せんとなー」
あら、宗教戦争になりそうね。まあ、人間食の好みはあるから、あんなのでも美味しそうにありがたがって食べている人はいるのよね。
東京ドームに近づくにつれ、人混みがすごくなる。道に迷わないように、ネフィリムさん、ろこさんの手をぎゅっと握る。
「ありがとなのじゃ」
「あんがとなー」
強く握っているろこさんの手が、震えているのがわかる。元気そうに振舞っていても、まだ怖いという感情は残っているみたい。
何とか、元気を取り戻してあげたい。
入り口で入場券を見せて、ボディーチェックを受けてから会場へ入る。ドームの中への道で、ネフィリムさんが話しかけてくる。
「ところで、璃緒殿はなぜコンサートに行こうと誘ったのじゃ?」
「ええっとですね、2人に会わせたい人がいるんです」
「──なるほどな。そういえば、璃緒はんにまかせっきりだったが、どんなコンサートなん? アイドルかなんかなん?」
「わらわもきになるのじゃ! コンサートってやつか?」
ネフィリムは目を輝かせ、ろこさんはどこか興味ありげに首をかしげる。
「今日行く場所は──コンサートです。これ、見てください」
そう言って、2人に行く予定だった場所とイベントのパンフレットを見せる。
ネフィリムさんは──何のことなのかぴんとかないのだろう。意味が理解できないのかパンフレットをじーっと凝視していた。
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「この黒髪の女の人か──璃緒殿の知り合いなのか?」
「まあ、ちょっとしたですね」
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「この黒髪の女の人か──璃緒殿の知り合いなのか?」
「まあ、ちょっとしたって感じですね」
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