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第4話 頼れる人
しおりを挟む奴隷商人と別れた後、しばらく公園でこれからのことを考えた。その後、昼食。
ゆで卵とレタスのサンドイッチとコンソメスープを食べる。
ウィンは「ありがとうございます」と言って、美味しそうにサンドイッチをほおばり、コンソメスープをはふはふして口にしていた。
それから、目的の場所に向かって街の郊外へと歩く。
歩きながら、ウィンが質問してきた。
「ガルド様──どこに行くんですか?」
「相談だよ。ウィンがしっかりと生活できるようにね……」
そう、俺はウィンと一緒に生活をする事になった。
とはいえ、俺に異性との交際経験はない。
さらに、女性に関する知識が疎い。
まず一緒に生活するにあたって、必要なものと言えば、服や生活用品。
──が俺は女物の服なんてわからないし、どんな事に気を付ければいいかも知らない。
特に下着類の店なんかは入った瞬間通報されてしまいそうだ。他にも、身なりにかんする事など。
となると、知り合いを頼るしかなさそう。幸い元パーティーに頼れそうなやつがいる。
聞いてみるしかない。変な誤解をされようとも──。
冒険者仲間の中で、ウィンの服装やこれから必要なことがわかる人。そんな人の、所に行く。
しばらく歩いて、街でも際立つ大きな神殿が現れた。
「ここだよ」
俺は神殿の中に入る。石造りで出来た装飾の柱。
岩壁に石柱、敷石が目に付く地下の道。
日の光が届かない暗い場所で、ランプの光だけが足元を照らす道。
ウィンと手をつなぎ、進んでいくと目的の場所に到達。
神殿の奥、ランプに照らされた広い場所。その奥に、一人の人物がいた。
「エリア、久しぶりだな」
「ああ──ガルドじゃん。久しぶりぃ」
ニッコリとした笑みで気さくに話しかけてくる一人の人物。
金髪で、茶色いデニムにブルーのホットパンツ。体の露出が多くて、目のやり場に困ってしまう。
彼女こそがこの神殿の支配人、エリア。
こんな格好をしているが、れっきとしたこの神殿の祭司を務めている。
それだけではない。以前は、俺と同じパーティーの国家魔術師だったのだ。
仲間だったころはよくお世話になっていた。
「今日は、こんな子供を連れてきて、何の用?」
その言葉に、やはり戸惑ってしまう。変な誤解を招くのではないかと。
言いづらいが、言うしかない。
オホンと一つ咳をして、正直に頼んでみる。
「あのさ。事情があってこの子と一緒に暮らしてるんだけどさ……。俺女の子とのこととか、良く分からないから、何をすればいいか教えてくれないかな?」
勇気を出して、話しかける。どんな言葉が返ってくるかわからない。
案の定エリアは俺をジト目でにらんでくる。
まるでゴミや汚物など、汚いものを見ているような視線。
「何で、そんな目線を向けるんだ? どんなことを考えてる?」
「女の子にもてないからって、小さい子に手を出したロリコン」
「予想はしてた。とりあえず、俺の話を聞いてくれ」
昨日俺とウィンの間に起こったこと、そして奴隷商人に彼女に居場所がないと告げられたことを話す。
「まあ、性欲目的でないことは分かったわ……」
腰に手を当て、複雑な表情でため息をついた後言葉を返して来た。
何はともあれ、信じてくれてよかった。
「信じてくれてありがとう。それでさ、俺女の子とのことよく知らないじゃん。生活のこととか」
「そうね。一緒にいた私だからこそ、それは理解できるわ」
その言葉に思わずぎょっとする。そんなに女っ気がないと思われてたんだな。
そしてウィンに一度視線を向けると、何かを悟ったように腰に手を当て言葉を返す。
「ウィンちゃんの姿見てわかったわ。あんた一人じゃ彼女がかわいそう」
「ですよね……」
「まず、年頃の女の子にこんなみずほらしい格好させちゃだめでしょ。服は?」
「これから買う予定」
その瞬間、エリアは俺の方を向くとピッと指をさした。
「あんたね……」
「しょうがないだろ。ほとんど無一文だったんだから」
「ちゃんとかわいい服とか買ってあげなさいよ……。稼いだ金があるでしょ」
エリアはおでこを抑えながらため息をついた。
「まあ、こんなぼっさぼさな髪を見てどんな扱いだったかは想像がつくわ」
「──ごめん」
仕方ないだろ。泊めたのは昨日で、必要な物資を買う暇なんてなかったし。
「──まずは、髪を整えなきゃ。ちょうどやることなかったし、今やってあげるわ。銀貨3枚、あんたのおごりね」
その言葉に、俺は逆らう気力はなかった。
「……はい」
エリアは自分の部屋からハサミや櫛などの小道具、小さな椅子に大きな布をもってきた。その後、一度明るい外に出る。
そして神殿の庭に椅子を置くと、ウィンがそこに座り、彼女の体に大きな布をかぶせる。
エリアはウィンの後ろに立ち、チョキ──チョキ──とはさみでぼさぼさな髪を切る。
「スタイルいいわね。数字いくつ?」
ウィンはオロオロとしながら、ボソッと言葉を返した。
「86のEです」
「ケッ──、マジ?」
その言葉に露骨に反応。
眉がピキピキと動いているのがわかる。
「17歳で私より大きいじゃん」
はさみを置き、くしで髪を整えながら俺の方を見る。
むっとして、どこか不満げな表情。
「あんた、本当にいかがわしいことしてないのよね?」
ジト目のエリア。
「当たり前だ」
──まだ子供なんだから。それは、わきまえてるよ。
そんな会話をしながら、ウィンは毛並みを整えていく。
十分ほどすると、散髪は完了。
ボサボサだった髪はストレートになり、目がかかりそうなくらいだった前髪は、綺麗に整えられている。
どっからどう見ても黒髪美人という言葉が似合う少女の出来上がりだ。
「出来上がり。どう?」
そう言ってエリアは手鏡をウィンの目の前に置く。その瞬間、ウィンの表情がほうっと輝く。
「これが、私──」
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