国家魔術師をリストラされた俺。かわいい少女と共同生活をする事になった件。寝るとき、毎日抱きついてくるわけだが 

静内燕

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第37話 レーノさんが、家に

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 レーノさんはそう言って私の目をじーっと見る。

「ちょっと、あなたの家。行ってみたい。今日、大丈夫?」

「私の家に、ですか?」

「そうよ」

 突然の言葉に私は思わず言葉を失ってしまう。
 いきなりそんなことを言われても、ガルド様に何と説明すればいいのか……。

「別に、今じゃなくてもいいわ。ただ、心配なのよ。両親がいないってことは、誰が貴方を守るかで問題になるのよ。あのお兄さんが、どこまであなたを守ってくれるかちょっと心配なの」

「守るって、どういう……」

「この店って、私達がいろいろな女の子のキャラクターを演じることで成り立っているでしょう?」

「はい……」

「もちろん、ほとんどのお客さんがそれを作られたキャラクターだと理解していて、このカフェを楽しんでいるわ」

「確かに……」

「でもね、それがキャラ作りってわかっていないがいるの」

「そ、そうなんですか……」

 驚いて、食事をする口が思わず止まってしまう。

「中にはね、本気で恋愛感情を持ってしまっている人だっているの」

 レーノさんの表情が、険しくなる。

「以前いたのよ。好きという感情が行き過ぎて、女の子に告白したり、付きまとったりする人が現れたりしたものだわ──」

「ストーカーって、奴ですよね」

「そうよ」

 その言葉に、思わず体が震えてしまう。

 あわわと手を抑えていると、レーノさんが私のおでこをつっつく。

「だから、お父さんみたいなお邪魔虫をつっかえす存在が必要なの。あなたにはあのお兄さんがいるかもしれないけど、確認しておきたいのよ。ちゃんと、あなたを守ってくれるか──」

 ど、どうしよう……。確かに、ガルド様と私の関係を聞かれた時、兄弟だというように言われていたし、レーノさんにもそう答えた。

 けれど、レーノさん勘が鋭いし、隠し通せるかわからない。でも、断っても絶対変に思われるし……。

 仕方ない。

「わかりました。案内します」

「ありがとう」

「でも、お兄さんがいいって言うかわからないので、一回話を聞いてみます」

「わかったわ、そっちの都合もちゃんと考慮する。無理になんて言わない」


 こうして、今日の夜私は家にレーノさんを連れていくこととなった。果たして、私達の秘密がばれたりしないのだろうか。

 まだ、仕事があるというのに緊張でドキドキが止まらない。

 その後、仕事に戻るがレーノさんにばれないか、大丈夫かという心配で頭が一杯だった。
 料理や接客をしているときも、どんなことが待っているか気になって頭の片隅からこのことが離れなかったくらいだ。


 そして、店の営業時間が終わり、片付けをして外へ。

 着替えて外に出ていると、レーノさんが入り口で待っていた。
 茶色のジャケットに、白を基調としたひらひらのスカート。
 大人っぽくて、素敵な格好だと思う。

「じゃあ、案内よろしく」

「わかりました」

 帰り道。いつもは一人で帰っている道。
 今日はレーノさんと一緒に歩く。

「仲はいいの?」

「よく、話はします。いいお、お兄さんです──」

 何とか怪しまれないようにレーノさんの質問に答えていく。
 そして、この街に来る前のことも──。(もちろんガルド様が兄さんである設定版で)

 レーノさんは、ふーんといわんばかりに私が答えるたびに真顔で、私の方を見てくる。
 ちゃんと、ごまかせたかな……。

 そして、そんなことを話していくうちに家の前にたどり着く。

「では、行ってきます」

「ここで、待ってるわ」

 私は、いったん家に帰り、ガルド様に伝える。

 今日、レーノさんが家に来ることを──。
 ガルド様は、表情を失って考えこんでいた。

 大丈夫なのだろうか、ちょっと心配になってきた。


 ガルド視点。

 夜、ウィンが帰ってくる。どこか、深刻そうな表情をしていたので、話しかける。

「ウィン、どうした?」

 帰ってきたウィンの言葉に、俺は驚いてしまう。

「えっ! 職場の先輩の人がくるって?」

「はい。今、家の外に居ます」

 いきなりの言葉に俺はぎょっとする。じゃあ、断れないじゃん。

「なんで。理由は?」

「私に変な虫がついたとき、ちゃんと守れる人なのか気になるから──って言ってました」

 何か怪しい。そんなことで、わざわざ俺のところに行くだろうか……。

 たぶん、建前だろう。ウィンの様子や、昨日の俺とウィンとのやり取りで、何かを感づいたのだろうか。
 どちらにせよ、断ったところで疑いは消えない。
 本心は会ってみないとわからない。もうその人は目の前にいる。断ったところで彼女は疑惑を強めるだろう。

 それなら──。

 しばし考えこんだ後、俺は答えを出す。

「俺のことは?」

「兄さんと説明しています」

 もし家族構成を言わなければならなくなったら、俺達はタツワナ王国出身で出稼ぎに来ている。兄妹でいっしょに暮らしているということになっている。
 ちゃんと、その通りに説明はしているみたいだ。

「わかった。俺もそのつもりで話をする。会話、うまく合わせてね」

「入れて、大丈夫なんですね?」

「ああ」

 聞いた感じだと、そのレーノって人はウィンにかなり疑いを入れている気がする。じゃなかったらわざわざ他人の家に押しかけるなんてしない。

 ここで断ったところでまた何か探りを入れてくるだろうし、さらに疑いを入れてくる可能性だってある。
 それなら、今入れてしまった方がいい。

「わかりました。行ってきます」

 ウィンが戸惑ったような表情をして、この場を去っていく。

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