37 / 150
第37話 レーノさんが、家に
しおりを挟む
レーノさんはそう言って私の目をじーっと見る。
「ちょっと、あなたの家。行ってみたい。今日、大丈夫?」
「私の家に、ですか?」
「そうよ」
突然の言葉に私は思わず言葉を失ってしまう。
いきなりそんなことを言われても、ガルド様に何と説明すればいいのか……。
「別に、今じゃなくてもいいわ。ただ、心配なのよ。両親がいないってことは、誰が貴方を守るかで問題になるのよ。あのお兄さんが、どこまであなたを守ってくれるかちょっと心配なの」
「守るって、どういう……」
「この店って、私達がいろいろな女の子のキャラクターを演じることで成り立っているでしょう?」
「はい……」
「もちろん、ほとんどのお客さんがそれを作られたキャラクターだと理解していて、このカフェを楽しんでいるわ」
「確かに……」
「でもね、それがキャラ作りってわかっていないがいるの」
「そ、そうなんですか……」
驚いて、食事をする口が思わず止まってしまう。
「中にはね、本気で恋愛感情を持ってしまっている人だっているの」
レーノさんの表情が、険しくなる。
「以前いたのよ。好きという感情が行き過ぎて、女の子に告白したり、付きまとったりする人が現れたりしたものだわ──」
「ストーカーって、奴ですよね」
「そうよ」
その言葉に、思わず体が震えてしまう。
あわわと手を抑えていると、レーノさんが私のおでこをつっつく。
「だから、お父さんみたいなお邪魔虫をつっかえす存在が必要なの。あなたにはあのお兄さんがいるかもしれないけど、確認しておきたいのよ。ちゃんと、あなたを守ってくれるか──」
ど、どうしよう……。確かに、ガルド様と私の関係を聞かれた時、兄弟だというように言われていたし、レーノさんにもそう答えた。
けれど、レーノさん勘が鋭いし、隠し通せるかわからない。でも、断っても絶対変に思われるし……。
仕方ない。
「わかりました。案内します」
「ありがとう」
「でも、お兄さんがいいって言うかわからないので、一回話を聞いてみます」
「わかったわ、そっちの都合もちゃんと考慮する。無理になんて言わない」
こうして、今日の夜私は家にレーノさんを連れていくこととなった。果たして、私達の秘密がばれたりしないのだろうか。
まだ、仕事があるというのに緊張でドキドキが止まらない。
その後、仕事に戻るがレーノさんにばれないか、大丈夫かという心配で頭が一杯だった。
料理や接客をしているときも、どんなことが待っているか気になって頭の片隅からこのことが離れなかったくらいだ。
そして、店の営業時間が終わり、片付けをして外へ。
着替えて外に出ていると、レーノさんが入り口で待っていた。
茶色のジャケットに、白を基調としたひらひらのスカート。
大人っぽくて、素敵な格好だと思う。
「じゃあ、案内よろしく」
「わかりました」
帰り道。いつもは一人で帰っている道。
今日はレーノさんと一緒に歩く。
「仲はいいの?」
「よく、話はします。いいお、お兄さんです──」
何とか怪しまれないようにレーノさんの質問に答えていく。
そして、この街に来る前のことも──。(もちろんガルド様が兄さんである設定版で)
レーノさんは、ふーんといわんばかりに私が答えるたびに真顔で、私の方を見てくる。
ちゃんと、ごまかせたかな……。
そして、そんなことを話していくうちに家の前にたどり着く。
「では、行ってきます」
「ここで、待ってるわ」
私は、いったん家に帰り、ガルド様に伝える。
今日、レーノさんが家に来ることを──。
ガルド様は、表情を失って考えこんでいた。
大丈夫なのだろうか、ちょっと心配になってきた。
ガルド視点。
夜、ウィンが帰ってくる。どこか、深刻そうな表情をしていたので、話しかける。
「ウィン、どうした?」
帰ってきたウィンの言葉に、俺は驚いてしまう。
「えっ! 職場の先輩の人がくるって?」
「はい。今、家の外に居ます」
いきなりの言葉に俺はぎょっとする。じゃあ、断れないじゃん。
「なんで。理由は?」
「私に変な虫がついたとき、ちゃんと守れる人なのか気になるから──って言ってました」
何か怪しい。そんなことで、わざわざ俺のところに行くだろうか……。
たぶん、建前だろう。ウィンの様子や、昨日の俺とウィンとのやり取りで、何かを感づいたのだろうか。
どちらにせよ、断ったところで疑いは消えない。
本心は会ってみないとわからない。もうその人は目の前にいる。断ったところで彼女は疑惑を強めるだろう。
それなら──。
しばし考えこんだ後、俺は答えを出す。
「俺のことは?」
「兄さんと説明しています」
もし家族構成を言わなければならなくなったら、俺達はタツワナ王国出身で出稼ぎに来ている。兄妹でいっしょに暮らしているということになっている。
ちゃんと、その通りに説明はしているみたいだ。
「わかった。俺もそのつもりで話をする。会話、うまく合わせてね」
「入れて、大丈夫なんですね?」
「ああ」
聞いた感じだと、そのレーノって人はウィンにかなり疑いを入れている気がする。じゃなかったらわざわざ他人の家に押しかけるなんてしない。
ここで断ったところでまた何か探りを入れてくるだろうし、さらに疑いを入れてくる可能性だってある。
それなら、今入れてしまった方がいい。
「わかりました。行ってきます」
ウィンが戸惑ったような表情をして、この場を去っていく。
「ちょっと、あなたの家。行ってみたい。今日、大丈夫?」
「私の家に、ですか?」
「そうよ」
突然の言葉に私は思わず言葉を失ってしまう。
いきなりそんなことを言われても、ガルド様に何と説明すればいいのか……。
「別に、今じゃなくてもいいわ。ただ、心配なのよ。両親がいないってことは、誰が貴方を守るかで問題になるのよ。あのお兄さんが、どこまであなたを守ってくれるかちょっと心配なの」
「守るって、どういう……」
「この店って、私達がいろいろな女の子のキャラクターを演じることで成り立っているでしょう?」
「はい……」
「もちろん、ほとんどのお客さんがそれを作られたキャラクターだと理解していて、このカフェを楽しんでいるわ」
「確かに……」
「でもね、それがキャラ作りってわかっていないがいるの」
「そ、そうなんですか……」
驚いて、食事をする口が思わず止まってしまう。
「中にはね、本気で恋愛感情を持ってしまっている人だっているの」
レーノさんの表情が、険しくなる。
「以前いたのよ。好きという感情が行き過ぎて、女の子に告白したり、付きまとったりする人が現れたりしたものだわ──」
「ストーカーって、奴ですよね」
「そうよ」
その言葉に、思わず体が震えてしまう。
あわわと手を抑えていると、レーノさんが私のおでこをつっつく。
「だから、お父さんみたいなお邪魔虫をつっかえす存在が必要なの。あなたにはあのお兄さんがいるかもしれないけど、確認しておきたいのよ。ちゃんと、あなたを守ってくれるか──」
ど、どうしよう……。確かに、ガルド様と私の関係を聞かれた時、兄弟だというように言われていたし、レーノさんにもそう答えた。
けれど、レーノさん勘が鋭いし、隠し通せるかわからない。でも、断っても絶対変に思われるし……。
仕方ない。
「わかりました。案内します」
「ありがとう」
「でも、お兄さんがいいって言うかわからないので、一回話を聞いてみます」
「わかったわ、そっちの都合もちゃんと考慮する。無理になんて言わない」
こうして、今日の夜私は家にレーノさんを連れていくこととなった。果たして、私達の秘密がばれたりしないのだろうか。
まだ、仕事があるというのに緊張でドキドキが止まらない。
その後、仕事に戻るがレーノさんにばれないか、大丈夫かという心配で頭が一杯だった。
料理や接客をしているときも、どんなことが待っているか気になって頭の片隅からこのことが離れなかったくらいだ。
そして、店の営業時間が終わり、片付けをして外へ。
着替えて外に出ていると、レーノさんが入り口で待っていた。
茶色のジャケットに、白を基調としたひらひらのスカート。
大人っぽくて、素敵な格好だと思う。
「じゃあ、案内よろしく」
「わかりました」
帰り道。いつもは一人で帰っている道。
今日はレーノさんと一緒に歩く。
「仲はいいの?」
「よく、話はします。いいお、お兄さんです──」
何とか怪しまれないようにレーノさんの質問に答えていく。
そして、この街に来る前のことも──。(もちろんガルド様が兄さんである設定版で)
レーノさんは、ふーんといわんばかりに私が答えるたびに真顔で、私の方を見てくる。
ちゃんと、ごまかせたかな……。
そして、そんなことを話していくうちに家の前にたどり着く。
「では、行ってきます」
「ここで、待ってるわ」
私は、いったん家に帰り、ガルド様に伝える。
今日、レーノさんが家に来ることを──。
ガルド様は、表情を失って考えこんでいた。
大丈夫なのだろうか、ちょっと心配になってきた。
ガルド視点。
夜、ウィンが帰ってくる。どこか、深刻そうな表情をしていたので、話しかける。
「ウィン、どうした?」
帰ってきたウィンの言葉に、俺は驚いてしまう。
「えっ! 職場の先輩の人がくるって?」
「はい。今、家の外に居ます」
いきなりの言葉に俺はぎょっとする。じゃあ、断れないじゃん。
「なんで。理由は?」
「私に変な虫がついたとき、ちゃんと守れる人なのか気になるから──って言ってました」
何か怪しい。そんなことで、わざわざ俺のところに行くだろうか……。
たぶん、建前だろう。ウィンの様子や、昨日の俺とウィンとのやり取りで、何かを感づいたのだろうか。
どちらにせよ、断ったところで疑いは消えない。
本心は会ってみないとわからない。もうその人は目の前にいる。断ったところで彼女は疑惑を強めるだろう。
それなら──。
しばし考えこんだ後、俺は答えを出す。
「俺のことは?」
「兄さんと説明しています」
もし家族構成を言わなければならなくなったら、俺達はタツワナ王国出身で出稼ぎに来ている。兄妹でいっしょに暮らしているということになっている。
ちゃんと、その通りに説明はしているみたいだ。
「わかった。俺もそのつもりで話をする。会話、うまく合わせてね」
「入れて、大丈夫なんですね?」
「ああ」
聞いた感じだと、そのレーノって人はウィンにかなり疑いを入れている気がする。じゃなかったらわざわざ他人の家に押しかけるなんてしない。
ここで断ったところでまた何か探りを入れてくるだろうし、さらに疑いを入れてくる可能性だってある。
それなら、今入れてしまった方がいい。
「わかりました。行ってきます」
ウィンが戸惑ったような表情をして、この場を去っていく。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる