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2章
第46話 何とか、間に合った
しおりを挟むガルド視点。
今日は、ギルドで軽い事務作業。
書類整理などをしながら、時折後輩や友人のビッツなどと話をしていた。
クエストでのアドバイスや、身の回りの話題など。
やはり、生活に困っている人が多い印象だ。
「じゃ、仕事も片付いたし、上がらせてもらうよ。お疲れ様」
そう言って整理した書類をフィアネさんに渡し、外へ出た時──。
「ガルド!!」
入口から俺を呼ぶ声、慌ててその方向に視線を向けると。
「レーノさん?」
そこにいたのは、ウィンの職場の先輩、レーノだった。
「急いでこっち来て」
その言葉と、真剣な表情に早足で入口の方へと移動する。
「どうした、レーノさん」
ここまで走ってきたのだろうか、大きく息を荒げている。何か、大変な事でもあったのだろうか。
「ガルド──ウィンが、大変なの」
そしてレーノさんは踵を返して俺達の家へと早足で歩き始めた。
歩きながらレーノさんから話を聞く。
「ウィンに、気安く話しかけるやつがいた。杖も持ってて、明らかに冒険者っぽい奴が──」
「それで?」
「ウィンは、怯えていて慌てて私が対応を変わった。それで、ウィンが上がった時、出口で背筋を凍らせているのを見かけたわ」
嫌な予感しかしない。ともかく、ウィンに何かあったというのは理解できる。
「何かと思って出口に行ったら、ウィンが気安く話しかけられた奴と一緒に帰っていったの。何かあったって、すぐに気づいたわ」
「どういうやつだった?」
「槍持ってた。多分、冒険者ね、魔法が使えない私じゃ返り討ちだって感じた。だからあなたを呼んだのよ。ウィンが、あなたは冒険者だって言ってたから」
「ありがとう」
ウィンに何があったかは正確には分からない。けれど、ただならぬ事態になっているということだけは分かる。
とにかく、早くウィンのところへ行こう。
「じゃあ、今からウィンのところに行ってくる」
「私も行くわ」
そして家に着いたら、こんな状況になっていたわけだ。
壁際で、恐怖に震えているウィン。そして、ウィンの胸に手を出そうとしている金髪のチャラそうな男。
ウィンがどんな目に合おうとしているのか、一瞬で理解できた。
金髪のチャラ男は振り向いて俺に視線を向けると、ニタニタと笑みを浮かべて話し始める。
「何だよ、ヒーロー気取りかよ」
「何とでも言え、ウィンに手出しはさせない」
「ウィンとは、どんな関係だ」
「元仲間で、一緒に住んでた。気持ちかったよ~~、ウィンちゃんのおっぱいとくちびるは──」
この野郎……。
こいつがウィンを、どのように考えているか理解した。
そして、こいつが今までウィンにどういったことをしたのかも──。
怒りの感情を抑え、拳を強く握って言葉を返す。
「本番まで、強要したのか?」
「当然じゃん。一緒に男女で住んでて、何も起こらないわけないじゃん!」
その言葉に理性が吹っ飛びそうになる。
チャラ男はそれを察したのか手を振って言葉を返し始めた。
「冗談冗談。やってはいないって。でも、おっぱいやキスは本当だよ。もう最高だったの一言──。それに、お前だってしたんだろ。わかってるよ、こんなかわいい子を、家に連れ込んでやることなんて決まってるじゃん」
「してない。そんなことは──」
当然だ、ウィンは俺の欲望を満たすための道具じゃない。
一人の意思を持った人間だ。
ウィンの同意もなしにそんなことはしない。
──俺はそう心に決めている。しかし、目の前にいる男はどうやら違うようだ。
「冗談だろ? 締まりはどう。揉み心地は、最高だったでしょ? かっこつけたって、どうせお前はこいつを性欲目的で買ってるんだろ? じゃあ俺と同じじゃん」
「そんなことは、していない」
ニタニタ笑いながら言葉を返してくる。こいつへの怒り以外、全く感情がわいてこなくなる。
ヤコダはその言葉をまるで信じていないようで、肘で俺の腕を突っついてさらに話しかけてきた。
「またまた~~。こんなかわいい女の子を連れてるんだよ──。事が起きないわけがないじゃん」
「どこまでやったの? まあキス位は当然として、おっぱい。どうだった?」
「ことを起こしたこと前提で話を進めるな」
「おっぱいの揉み心地、最高。柔らかくて弾力がすごくって、それはもう天国にいるみたい……」
「わかった。もういい」
俺はただ、そう言った。もう、何を言っても無駄だろうからだ。
胸ぐらをつかんだ後、思いっきり、その顔をぶん殴った。
「ふざけるな。お前、ウィンをなんだと思ってるんだ」
俺の拳はヤコダの鼻に思いっきりヒットし、体が後ろにある壁にたたきつけられる。
鼻からは鼻血が出ていて、ヤコダは鼻を抑えながら俺をにらみつけていた。そして、はっとした表情になり、俺を指さす。
「俺はヤコダ。誰だお前」
「俺はガルドだ」
「ガルドだと? 元Aランク国家魔術師のか?」
「そうだ、何か文句あるか?」
毅然と言葉を返す。俺のこと知っているのか……。俺は──思い出した。
Cランクくらいの強さで、やたら態度が悪い奴に、そんな名前がいた。
金髪で、髪が長い男。確実にこいつだ。
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