国家魔術師をリストラされた俺。かわいい少女と共同生活をする事になった件。寝るとき、毎日抱きついてくるわけだが 

静内燕

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2章

第62話 互いに、想い合う

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「あ、ありがとうございます」

 確かにそうだ。私のことを、本当に想ってくれている。一緒にいて、人の良さや優しさ、暖かさが本当に伝わってくる。

「私、ガルド様と一緒に暮らせて良かったって思ってます」

 そう返事をして、コーヒーを飲み干す。
 そして、帰る時間となった。


「あの人と一緒に入れてよかった。それが、聞きたかったわ。もう旦那様。帰ってくるんでしょ。話はもういいわ」

 確かにそうだ。夕飯も、作らなくちゃいけないし……。
 ぺこりと、頭を下げる。

「今日は、ありがとうございました。私なんかに、気を使っていただいて」

「いいえ、後輩の面倒を見るのだって、私の仕事よ」

 そして私達は店の鍵を閉めて、帰路へ。

「お疲れ様です」

「こちらこそお疲れ、彼氏さんとも幸せにね」

「だから、付き合ってません」

 からかうようなレーノさんの言葉に突っ込んで、私は帰路につく。もう……。

 帰り道。彼氏という言葉に、どこか気持ち入らなくてボーっとしてしまう。

 そんなんじゃ、まだない……。
 そもそも、私なんかがガルド様と釣り合うのかどうか──。

 彼氏さんなんて言われたせいで、ついつい意識してしまう。
 レーノさん、もう……。

 でも、もし付き合うことができたら──。
 待って待って、私なんかじゃ──釣り合うはずがない。

 ガルド様は、いつも私のことを想ってくれている人。もっと、素敵な人に巡り合えるはずだ。




 家に帰る。ガルド様はまだ、帰ってきていない。

 すぐに食事の準備。

 パンを取り出した後、コンソメのスープを作る。
 野菜を切って入れことこととスープを煮ながら、ボーっと考えこむ。

 別に、交際をしているわけじゃ無い。

 ガルド様のことは、とっても尊敬している。私のことをいつも気にかけてくれていて、気遣ってくれている。

 あの優しい笑顔。私を想ってくれている表情。
 私の心に、焼けついているかのように記憶に残っている。
 思い出すだけで、とっても幸せな気持ちになれる。キュン──とした気分になる。

 でも、本当にもし交際をする事が出来たら──。
 そんな事を、あり得ないことを、ついつい考えてしまう。



 ガルド視点

 クエストが終わって、家に帰る。
 最近、ソルトーン様とのやり取りもあって忙しい。
 気が付けば帰りが夜遅くになってしまうこともしばしば。疲労困憊で、思わずため息をついてしまう。

 ダメダメ、家にはウィンがいるんだ。これじゃあウィンに気を遣わせてしまう。

 そんな事を考えて、帰路に就く。

 そして、帰宅。

 「ただいま」

 「ガルド様、お帰りなさいませ」

 すでに夕食は出来上がりかけている。パンと鳥の丸焼き。野菜の入ったコンソメスープ……かな?
 働きながら作っている料理としては、かなり豪華な部類だ。
 けれど、無理をしているんじゃないかなって不安に思ってしまう。

「いつも、働きながら料理作ってくれてありがとう。でも、そこまで苦労しなくていいよ」

「大丈夫です。そんなことありませんから」

「でも、疲れない? もっと楽をしていいんだよ」

「いえいえ、ガルド様に喜んで貰えて何よりです」

 ウィンがあわあわと手を横に振る。
 確かに、料理を作っている時のウィンは、どこか幸せそうな表情をしている
 面倒だとか、疲れているだとかそんな様子は全くない。

 誇らしくて、やりがいを感じているような表情。
 それなら、無理に止めることもないか。

 そういうふうに考えたのだが、一緒に食事をしていると気になってしまう。
 食事をしている時のウィンが、どこか上の空なのだ。

 視線が遠くを見ているような感じになっている。
 悩みでもあるのかな?
 ちょっと心配だ。話しかけてみよう。

「どうしたの、ウィン。何かあったの?」

「いいえ、何でもないです」

 ウィンがピクリと体を動かし、言葉を返して来る。
 ちょっと、動揺しているのがわかる。

「でも、いつもよりボーっとしてる時間が多いよ。具合でも悪いの?」

「だ、だ、だ大丈夫です。そんなこと、ありませんから」

「そ、そうなの? それならいいけど」

 必死に否定するウィン。多分、これ以上言っても何も答えないだろう。
 これ以上聞くのを、やめた。
 言葉だけじゃなくて、ちゃんと行動でも示さないと──。






 ウィン視点。

 夕食も終わり、二人で食器を洗う。
 ガルド様に感づかれてしまった。私が何か考え事をしているのかどうか。

 あまり、深堀はしてこなかったけど。私に気を使ってくれただけだろう。

 やっぱり、ガルド様は鋭い。いつも、私のことを見ていてくれている。


 就寝の時間。

「ウィン、お休み」

「お休みなさい、ガルド様」

 そして私はいつものようにガルド様の胸の中へ。

 でも、今日はそれだけじゃ、足りない。
 もっと、もっと──ほしい。

 ぐいっ。

「ウィン、なんでそんな──」

 ガルド様が驚くが、気にしない。

 何をしたのか簡単だ。全身を、ガルド様に押し付けたのだ。
 くんくんとガルド様のにおいを嗅ぐ。

 男の人っぽい匂いが全身を包み、全身が幸福感に包まれた。

 それだけじゃない。胸を押し付けるような形になる。上目使いでガルド様を見る。

 流石のガルド様も、この行動を予測できなかったみたいで動揺しながら私の方をじっと見ていた。

 顔を真っ赤にして、フリーズしてしまっている。


 こうすれば、男の人は喜んでくれるというのを、私は知っている。ガルド様も、内心では興奮しているけど、耐えているのだろうか。
 
 なんにせよ、これからもガルド様に精一杯尽くしていきたい。
 そんな気持ちになった。

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