国家魔術師をリストラされた俺。かわいい少女と共同生活をする事になった件。寝るとき、毎日抱きついてくるわけだが 

静内燕

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最終章

第105話 まさかの罠

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 すぐに、ウィンに向かって早足で歩み寄る。

「すごいよ、ウィン」
「ありがとうございます」

 ウィンは顔をほんのりと赤くして、俺から視線を逸らす。素直に褒められると、やはり恥ずかしいのだろうか。

 すると、エリアがご機嫌な様子でこっちにやってきた。

「もう、ウィンがいてくれたおかげでこっちは大助かりよ」

「エリアさん、ありがとうございます」

 とりあえず、なんとかこの場は解決した。
 街の危機を脱し、安堵の雰囲気がこの場を包んだ。

「あ~疲れた。この後飲みにでも行こうかな~~」

「ああ終わった。久しぶりに戦ったしこの後は女遊びでもするかぁ」

 冒険者たちの中には、すでに戦いは終わったような雰囲気になっている。
 本当に大丈夫なのか──。まだ奇襲があるかもわからないというのに……。

 とはいえ、目の前の敵は去った。彼らにとって、激戦であったことの変わりはない。今回は、このままにしておこう。


 そんな戦勝気分な雰囲気が落ち着いたころ、一人の人間がやってきた。
 あわただしく馬に乗ってきた。どこか急いでいるような感じをしている。

 茶色の兵士の格好をした服の人、服装からして政府の伝令係の人だろう。

「南部にいきなり魔王軍らしき軍勢が現れました」

 その報告で、この場一帯に衝撃が走る。
「どういうことだよ、じゃあ俺たちが倒した奴らっていったい──」

 一人の冒険者の疑問に、ビッツが答える。

「こっちは。囮だったのかもしれないな」

「ああそれ、あり得るわ」

 エリアの言葉通りだ。最初っからこういった作戦だったのだろう。

 まず第一に、雑多で不慣れとはいえ、それなりの数の魔物を配置してこっちの主力部隊をそっちへ向けさせる。

 そして、手薄になったところを反対方向の南側から奇襲を仕掛けたということだ。
 これ、簡単に言ったが必ずしもうまくいくとは限らない。うまくこっちの主力部隊が北へ行ったことを確認しなければいけないし、連携も取らなきゃいけない。

 エリアの脳裏に、一つの過程が思い浮かんだ。

「多分、こっちの情報漏れてるよね」

「エリア、俺も思った」

「もしかして、内通者──みたいなやつがいるとか?」

 証拠があるわけではないが、その可能性は十分にあり得る。敵は、目の前にあるやつらだけではないということだ。

 とはいえ、今はそのことを追求する時間ではない。

 そんな追及はあとでじっくりやればいい。今は、街に戻って魔物たちと戦う時だ。

「急いで戻ろう」

「そうです。先輩の言う通りです」

 ニナは、こんな時でも前を向いて戦える存在だ。

「そうね。すぐに指揮官に伝えましょう」

「ああ」

 そして俺たちは指揮官のところへと急いだ。
 けがを負ったものはすぐに手当てをさせるが、まだ戦えるものは全力で街へ戻らせて再度戦ってもらう。

 そんな決定を促した。

 戦いが終わって一息つきたい気分だが、街のために網ひと頑張りだ。


 俺たちはすぐに準備を終え、街へと戻っていく。
 街に奇襲した奴らの戦力がどの程度かわからないが、戦うしかない。



 いったん街へ戻ると、さっきとは打って変わってあたふたしていた。
 あわただしく物資を運ぼうとしている商人の人。

 武器を持って、早足で南方の前線へと向かっていく冒険者の人──。みんな緊急事態ということで緊迫した雰囲気が流れている。

「俺たちも、早くいこう」

「そうですね、先輩」

 自然と早足になり、戦場へと向かっていった。


 しばらく草原地帯の道を進んで、目的の場所へとたどり着いた。すでに戦いが始まっていて、デュラハンやオークたちと街の冒険者が戦いを繰り広げている。

 明らかにさっきの魔物たちより手強いし、連携も取れている。
 こっちが主力部隊といって間違いないだろう。

 志願した冒険者ではない。奇襲が来たと聞いて、急遽戦うことになった冒険者たちだ。

 そんな彼らでは、やはり強いランクの魔王軍相手ではきついようだ。苦戦しているのが手を取るようにわかる。


「俺たちも、加勢しよう」

「はい」

 とりあえず、俺たちも戦いに参加していく。
 目の前には棍棒を持ったゴブリンの集団に一人で対応している冒険者。

 斧を振り回しゴブリンを一匹倒したものの、集団戦を繰り広げるゴブリンたちに四苦八苦しているのがわかる。


「おう兄ちゃん。ありがとよ」


「こっちこそ。俺たちが来るまで戦ってくれていてありがとう」

「いいってことよ」

 まずは、俺たちが来るまで戦ってくれた人たちへの労いだ。
 何かあって、最初の襲撃に来れなかったにもかかわらず、こうして強い敵と戦っている。まずがそれに対して感謝の言葉を送らないと。

「まだ戦える? さすがにこの数だと私たちだけじゃきついわ」

 エリアの言葉にボロボロになった冒険者が答えた。とはいえ息を荒げ、だいぶ消耗しているのがわかる。

「まあ、襲撃から一般人を守るのが俺たちの役目だ。最後まで、戦わせてもらうよ」

「そうか、でも限界になったらちゃんと撤退するんだぞ」

「わかってるわ。そのくらいの分別はついてるっての」

「だよね」

 冗談交じりで、エリアに言葉を返す。まあ、エリアだって数々の戦場を潜り抜けてきたんだ。
 死ぬ気で必死に戦うのと、無茶をして犬死をするのが違うことくらい理解している。

 別に、あえて俺が言う必要はなかったか。


 そして俺たちは再度戦いの場へ突っ込んでいく。
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