新手の公爵令嬢ものがあらわれた! もううんざりだって? そう言わずに!

波桜みつき

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家族旅行 ~アマルトゥス王国~

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 港に降りたった瞬間、私は思わず深呼吸した。
 潮風の匂いと、ほんのり甘いような暖かい空気がふわっと顔に当たる。

 見渡す限りの青い空と、同じくらい青い海。
 カラフルな壁にペイントされた街並みがずらっと広がってて、道行く人たちもなんかすごいのんびりしてる。

 ──これが、アマルトゥス王国……!

 「わぁ、すごい、きれい!」

 思わず声が漏れたら、お母様が微笑んだ。

 「ええ、アマルトゥスは芸術と海の国。 空気まで輝いて見えるでしょう? あなたも気に入ると思っていましたわ」

 うん、超気に入った!

 お兄様はあまり興味なさそうにしてるけど、たぶん内心めっちゃテンション上がってる。
 ほら。 なんか、耳がちょっと赤いし。
 
 「さあ、ホテルに向かうぞ」

 お父様の声に促されて、用意された馬車に乗り込む。
 馬車が石畳の道を進むたびに、窓の外の景色がくるくる流れていく。

 街の中心を抜けて、ちょっとした高台を登ったところで、それは見えた。
 白くてでっかい建物――リゾートホテル!

 海を見下ろす場所に建っていて、壁は真っ白、屋根は赤い瓦のようなもので、南国の陽射しを反射してピカピカ光ってる。

 「すごい……!」

 なんか私、この国来てから「すごい」と「きれい」以外喋ってない気がする。
 語彙力を家に忘れてきたのかも。

 馬車がホテルの正面で止まると、ずらっと並んだ従業員さんたちが一斉に頭を下げて礼をする。
 おおっ、すごい! なんか、王族にでもなった気分。

 「ようこそ、アルディア公爵ご一行様」

 にこやかにそう告げた支配人らしき人に、ちょっとだけ背筋を伸ばして微笑み返す。
 この旅、楽しくなる予感しかしない!



 案内されたのは、ホテルの最上階。 いわゆるスイートルームだ。
 広すぎるリビング、ふかふかの絨毯、天井からぶら下がるキラキラのシャンデリア。
 大きな窓から見える景色は、この街と海が一望できてしまう。

 「うわぁ、凄い……!」

 思わずつぶやいたら、お兄様がクスクス笑った。
 お父様とお母様は、さっそくソファーに座ってくつろいでいる。

 従業員が荷物を運び終えると、支配人さんがにこやかに言った。

 「どうぞごゆっくりお過ごしください。 何かございましたら、いつでもお申し付けくださいませ」

 礼儀正しく頭を下げて去っていった。
 なんか動きからなにから洗練されている。 これが高級リゾートホテルってやつか……。


 「一休みしたら、少し外を散策しようか」

 お父様がそう提案すると、お兄様がすかさず頷く。

 「賛成だ。せっかく海のそばに来たんだしな」

 「わたくしも行きたいです!」

 思わずぴょこんと手を挙げたら、お母様が微笑みながらうなずいてくれた。

 「ええ、みんなで行きましょう」

 そんなわけで、私たちは海沿いを散策することに決まった。


 外に出ると、潮風がふわっと頬を撫でる。
 ホテルから少し歩くだけで、すぐに海辺に出られるみたいだ。

 白い砂浜。
 青い海。
 何組かの家族やカップルが砂浜でそれぞれ楽しんでいる。
 日本の海水浴場みたいに人でごった返しているのではなく、まるでプライベートビーチのような空間がそこに広がっていた。

 わぁぁ……!

 思わず声にならない感嘆が漏れる。
 裸足になって砂浜を全力で駆け回りたい衝動に駆られたけど、さすがにそれはお嬢様失格なのでぐっと我慢。
 でも、靴越しにも伝わってくる砂の柔らかさがたまらなくて、足元をふにふに踏みしめながら海の方へ歩いていった。

 海風が気持ちいい。
 海の色は、底まで透き通ってるみたいだった。
 泳ぎたい。 けどこの世界の貴族って、海に入る風習があまり無いんだよね。
 水着とかもないし。 残念だけど諦めるしかない。

 しばらくお兄様と一緒に砂浜を歩いたり、貝殻を拾ったり、波打ち際でぱしゃぱしゃ水を蹴ったりして遊んだ。
 ……うん、満足満喫。

 十分に海を堪能して、私はホテルへの道を引き返した。
 ホテルの白い建物が、夕陽を浴びてまぶしく輝いている。
 私は深呼吸をして、もう一度、笑った。
 最高!
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