新手の公爵令嬢ものがあらわれた! もううんざりだって? そう言わずに!

波桜みつき

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家族旅行 ~アマルトゥス王国~

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 ホテルに戻ると、両親はそれぞれ自室に戻ることになった。

 「リシェリアさん、夕食までまだ時間があります。 あなたも少し休んでおきなさい」

 「わかりましたわ、お母様」

 とは答えたものの、正直このまま部屋に戻るのももったいない気がした。
 もう少し見て回りたい。
 せっかくこんな素敵なリゾートホテルに来てるんだし!

 そんな私の様子を見たお兄様が、軽く肩をすくめながら言った。

 「じゃあ、オープンテラスのカフェにでも行くか? 海を見ながら休憩するのも悪くないぞ」

 「うん!」

 即答した。
 やっぱりお兄様はわかってるね。


 私たちはホテルの庭園を抜けて、海を臨むカフェへ向かった。
 白い大きなパラソルの下、涼やかな海風を感じながらくつろげる素敵な場所だった。

 「ここで待ってて。何か飲み物を頼んでくる」

 そう言って、お兄様はカウンターへ向かう。
 私は席に座ったまま、海と空をぼーっと眺めていた。

 ──と、その時。

 「やあ、素敵なお嬢さん。 ひとりかい?」

 不意に、優しい声がかけられた。
 見ると知らない男の人が、柔らかく微笑んで立っていた。 かなりのイケメンだ。
 きれいな海みたいな青い目とさらさらな金髪。
 ちょっとだけ無精髭があって、貴族にしてはラフな格好祖している。 年齢は20代半ばくらいかな?
 なあんとなく、誰かに似てるような気がするけど……思い出せない。
 不思議と嫌な感じはしないなあ。 私の危険感知センサーは特に反応しなかった。

 「えっと……こんにちは?」

 少し警戒しながらも、私はちゃんと挨拶を返した。
 なんだろう、この人? 人攫いとかじゃないよね?
 ここは上位貴族が来るような高級リゾートホテルだし、不審者じゃないよね?


 「驚かせたならごめんね。 ちょっと君があまりに可愛らしかったから、声をかけずにはいられなかったんだ」

 ――なな、なにこの人、台詞がナチュラルに口説き文句なんだけど!?
 まさか、ナンパか?!?! 
 こいつ危険だ! 私はすぐさま警戒レベルを高めた。

 「ぼくは今日ここに来たんだ。 君もここに滞在してるのかな?」

 「え、ええ。 家族で……」

 もごもごと答えると、その人は「そっか」と優しく微笑んだ。
 その笑顔が、なんというか……すごく、あったかい。
 ああ、警戒レベルが下がっていくぅ……。

 「君の瞳って、まるで海のように蒼く澄んでいるね」

 ふわっと、軽やかに、でもどこか本気でそんなことを言われた。

 「ふえっ……?」

 突然の不意打ちに思わず固まる私。 変な声出た。
 顔がぽわっと熱くなっていくのを感じながら、どう返していいかわからずにぱちぱち瞬きしていると、その人はまた、にこっと微笑んだ。

 「そんなに驚かないで。 君があんまりきれいだったから、つい」

 さらっと言うんじゃない!
 ああもう、心臓に悪い!
 胸の奥がぶわあぁっとあったかくなるような感覚が襲ってくる。

 その人は、ふっと懐から小さくて丸いもの取り出すと、私に差し出した。

 「お近付きの印によければ、これ、どうぞ。 僕が作ったんだ」

 そっと受け取ると、小さな丸いガラスのオブジェだった。
 テニスボールくらいの大きさかな。
 中には青い水と白い砂、星の砂、小さな貝殻、小さなアクアマリンとエメラルドの原石かな? 綺麗な石が点々と置かれ、金色の蓋からは繊細なチェーンが伸びている。

 まるで――
 小さな海が、そこに閉じ込められているみたいだった。

 「……きれい……」

 つい、呟いてしまう。

 「気に入ってもらえてよかった。 ここの海をイメージして作ったんだ。 海の瞳を持つ君にぴったりだね」

 その穏やかな声に、私はこくんと頷くしかなかった。

 「ありがとうございます……。 とても、素敵です」

 両手で大切に受け取った。
 心臓はハードテクノを派手に奏で始める。
 やめて。 私、壊れちゃう――――
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