新手の公爵令嬢ものがあらわれた! もううんざりだって? そう言わずに!

波桜みつき

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家族旅行 ~アマルトゥス王国~

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 ホテルの部屋に戻ったのは、夕方近くになってからだった。
 ふかふかのソファに身体を沈めて、私は深いため息をひとつ。

「……終わったぁ」

 これでアマルトゥス王国観光も、ほぼ終了。
 明日の朝には港へ向かって、船でアウレリア王国へと帰る。

 「本当に盛りだくさんだったわね」

 お母様がやわらかく微笑みながら、ティーカップを手に取る。

 「リシェリアさん。 あなた、体調はもう大丈夫なの?」

 「うん、大丈夫。 もう何ともない」

 「それにしても……叔父さん、すごかった」

 兄様がぼそっと言った。

 「え?」

 「いや、なんかこう……もっと軽い人だと思ってたから。 どんな場でもフランクで女の子に優しくて、よく笑ってて」

 「それは間違ってないと思うけど……?」

 「でもさ。 リシェリアがふらついた時、誰より早く動いて、倒れる前に抱えて、指示出して、医師まで連れてきて。 完璧だった。 周りを常に見てて、いざと言うときにすぐ動ける立ち位置にいるんだ」

 兄様は、少し悔しそうに肩をすくめた。

 「俺なんて、名前呼んだだけで立ち尽くしてたのに……。 あれは、見習わなきゃダメだな」

 「えっ、それって兄様が天然ナンパ師に進化するってこと?」

 「違う! それは違う!」

 兄様が思い切り否定して、私はくすっと笑ってしまう。


 「……俺さ、わかったんだ」

 兄様がふと、窓の外に目をやりながらつぶやいた。

 「叔父さんって、二十代半ばのはずなのに、まだ結婚してないだろ? 王族でその年齢なら、普通はとっくに誰かと結婚してるはずなのにさ」

 「え? あ、うん……そう、かも?」

 私はちょっとだけ首を傾げた。
 言われてみればそうだ。 お兄様の言う通り、あの人が未婚だなんて、ちょっと不思議な気もする。

 「だろ? でも、その理由がわかった」

 お兄様はそれ以上は言わず、ほんの少しだけ、目を細めて笑った。

 「なになに、なにそれ気になる。 もしかして、年下じゃないと駄目な人だったり?」

 「……それはないと思うけどな」

 「じゃあなに? 許嫁がとんでもなく恐ろしい人とか? 逆に多すぎて選べないとか?」

 「リシェリアにもわかるはずだよ。 よく考えれば」

 お兄様はお茶を一口含んで、まるで煙に巻くように微笑んだ。

 ──え、なにそれ、なにそれ!

 気になるんだけど!? でも兄様は何も言わない!

 ……こういうとき、お兄様ってほんとずるいと思う。 ときどき意地悪だよね? そうおもわない?


 私はふいっとソファの背にもたれて、天井を見上げた。
 いろんなことがあったアマルトゥス旅行も、これで終わり。
 明日の朝にはもう帰路について、連休が終われば二年生。

 そう思うと、なんだか少し、さみしい気もした──。
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