料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子

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第1章 揚げ出し鶏と淡い恋 料理屋「〇」黎明編1

揚げ出し鶏と淡い恋4

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「ここがハルの家でありミャオの家なのかにゃ?」

「あぁそうだね…」

「思ったよりも良い感じなのにゃ・・・ハルのご飯屋さんのご飯も楽しみニャー♡」

帰ってくる間にミャオには俺が料理屋をやっている事は説明しておいたのだが、美味しいご飯への期待値が上がっただけで、細かい所はあんまり気にしていないみたいだった

俺の店は基本的に夜営業が中心の居酒屋に近い何でも食べれる小料理屋スタイルだ
だから休みは取りたい時に取ることにしてほとんど休まず開店していた……まぁお客さんが来ることはほとんど無かったが…

ミャオが来てくれたら気が紛れて良いかなと思ったのも事実だ…一人でお客さんを待つ時間は意外に辛い
暇疲れが一番嫌なのは日本の飲食業界でもあるあるだろう

まぁしかし、おかげでこのアナスタシアでの飲食事情を調べたり、新たな仕入れのシステムをゆっくり構築できたのだが、流石にお客さんに来てもらわないと生活にも関わってくるからな

様々なスキルのおかげで、正直食べることや生きることはほとんど問題ないのだが、俺は飲食業が心から好きなのだ



「2階は生活の部屋になっているから好きな部屋を選んで住んでもらって構わないよ」
「何を言ってるのにゃ?いっしょに寝るに決まってるにゃ…あとお店のお仕事も手伝うのにゃ!」
「え?手伝うって猫の手も借りたいってよく言うけど本当に猫の手は借りれないよ?」
「何言ってるのにゃ?ミャオは獣人にゃ!」

ポンッと音がしたと思ったら目の前に黒髪猫耳の美少女が裸で現れた

「!!!?」

「人型にもなれるんだから手伝うに決まってるのにゃ」

「あ・・・あ・・・とりあえず…服を着ろー!!!!」

黒髪の美少女の姿になれるのも驚いたが、スタイルもなかなか…げふんげふん
じゃなくて…とりあえず俺の服を適当に見繕って着替えさせた
簡素なシャツと短めのズボンが気軽に動けて良いと気に入ったようだ

「別に今まで裸だったのにゃ…今更ハルの前で裸を見せるのはミャオは気にしないのにゃ…♡」

「それはありがたい…いや、お客さんも居る所で裸は困る!」
「じゃあいない所ならいいのにゃ…ハルはエッチにゃ♡」

「…まぁ否定はしないが…いきなりでびっくりしたと言いますか…TPOが…」
「わかったにゃ・・・いきなり裸はならないのにゃ…びっくりさせない様に先に言っておくにゃ・・・夜は楽しみにしておくにゃ♡」

「はいはい…猫の気まぐれには気を付けます」…まぁ揶揄ってるだけの冗談だろう…
「そんなことより腹は減ってないのか?そろそろ仕込み始めるからついでに賄いも作っとくぞ」

目を輝かせてミャオがはしゃぐ
「もちろん食べるのにゃ!!」
「でしょうね!」

俺は仕事の仕込みと賄いを同時進行で作り始める
「手伝うのにゃ」
「んーじゃあお客さんの座る椅子をテーブルから下げてテーブルをこいつで拭いといてくれ」
「わかったにゃ!」

一生懸命慣れない仕事を楽しそうにやっているミャオを見ながら仕込みをする時間は今までの暗い気持ちを吹き飛ばしたかのように幸せな気分に浸ることができた

お客さんがこのままずっと来なければ生きることは出来そうだが、やりたい事が出来ない人生は異世界にまで来てもったいないだろう

俺は転移前の日本では様々なしがらみの中で生きてきたんだと今では思う
だからこそこのアナスタシアではやりたい事や生きる道は自分で決め後悔のない楽しい人生を送りたいと思っている

お客さんが喜ぶお店作りには俺が幸せに感じることも大事なのだ

誰に言うでもない小さな声で
「ありがとう」

俺は感謝の言葉を紡がずにはいられなかった…

「今日の賄はさっき取れたウッドバードを使うぞ!」
ミャオに大きな声で言うと

「はにゃー!ごちそうにゃ!楽しみだニャー♡」

ミャオのとろけそうな笑顔で癒されながら俺はいそいそと仕込みを続けるのであった
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