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第5章:騎士の誇り
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「しかし、見事なものじゃ……これが、アイラが数年で興した国の姿か……。」
エルシード王城。
ただの王国の城とは異なる、堅固な造りの城門。
ところどころに兵が配置できるスペースを設け、2階・3階部分にも、大砲や砲門が見える。
「王城っていうより、巨大要塞だな、ここは……」
最上階の大きな国旗を見上げながら、ゼロが感嘆の声を上げる。
「新王がまず手掛けたのが、軍備の徹底。まずは王城から。そして各地の要所に砦を構え、そして各地方・そして城下の兵力を強化しました。」
カミューが、自分の漆黒の鎧、そしてマントにつく勲章を指す。
「各地の領邦軍でも選りすぐりの騎士に与えられるのが、この『騎士勲章』。そして、その騎士勲章を持つものだけで結成される王宮直属の騎士団が『黒騎士団』・『白騎士団』なのです。領邦軍の部隊長クラスでないと、黒にも白にも所属できないのです。」
カミューは漆黒の鎧。つまりエルシード黒騎士団なのであろう。
しかし、カミューのマントには、騎士勲章のほかにもう一つ勲章がついていた。
ガーネットは、それを見逃さない。
「カミュー殿の、その勲章は?」
「あぁ……これね、私、一応副団長なんです。黒騎士団の。」
あまり言いたくなかった、そんな様子で笑うカミュー。
「……何だと!?」
「……人は見た目で判断するな、と言う事じゃの……。」
カミューの言葉に思わず絶句する、ゼロとヨハネ。
「それで……エルザ様は?」
「あぁ……エルザはですねぇ……。」
シエラの問いに、カミューは少しだけ上を見る。
4人もつられて上を見ると、そこには白銀の鎧を身にまとい、長く美しい金の髪を風になびかせる女騎士がいた。
「カミュー!遅い帰還だな!!どこで油を売っていた!!」
その姿は凛としながらも気品を感じ、そして……
「あの女、絶対強いぞ。隙が全く見当たらねぇ……。」
ゼロを一瞬で認めさせる、そんな雰囲気を醸し出していた。
「油を売る……エルザ、それはサボっている人間に言うものだよ?俺は領内にやってきた客人の様子を見に……。」
「そんなもの、部下に任せればよかろう!!全く、お前が居なければ黒騎士団の統率が取れないことくらい自覚しているだろう?」
カミューの返答に、大きな溜息を吐くエルザ。
「……失礼。私はエルシード白騎士団長・エルザ。ようこそエルシードへ!」
「彼女が我がエルシード白騎士団の長・エルザ。かの英雄・槍聖アイラの血筋にして、国内一の槍の使い手でもあります。……ちなみに私、槍を持って彼女に勝ったことは一度もありません。」
カミューがエルザを指して紹介する。
「何を言う……お前のもともとの武器は剣だろう?槍を持って私と相対するなど、陳腐な事よ。」
「だって……女子に得意な武器で勝負したら、何か必死みたいじゃない?」
「馬鹿か!戦場など、常に必死であるべきだ!男女の違いなど、戦場では無意味。殺すか殺されるかのやり取りなのだぞ!!」
『武人』という言葉がぴったりなエルザに、のらりくらりとしたカミュー。
お互い、信頼し合っているのだろう。
団長と副団長という格の差を感じさせないやり取りである。
「でさ、カミュー、黒騎士団長はどんな奴なんだ?」
ふと、ゼロが疑問を口にした。
「あぁ……黒騎士団長、ですねぇ……。」
副団長・カミューが思わず苦笑いをする。
「陛下の腰巾着なら、謁見の間にいるだろう。……会うだけ無駄だぞ?」
エルザが、心底不満そうに吐き捨てた。
「何……?黒騎士団長は嫌われ者か?団長ってくらいだから、相当強いんだろ?エルザにカミュー、お前たちと同等かそれ以上って事だろう?」
ゼロは、黒騎士団長に対するふたりの反応に違和感を感じていた。
彼の頭の中では、『騎士団長は尊敬されるべき猛者』でしかないのだ。
そう、彼の姉・アインがそうだったように。
「ウチの団長殿は……貴族出身でねぇ……。」
副団長のカミューが、言いづらそうに口を開く。
「革命のときに、貴族出身者が王となり、その王のお気に入りの男が黒騎士団長になった。腹心、のつもりなのだろう。しかし、勝手なことはこの私が白騎士団長の間はさせぬ。民を守るのが、騎士団の務めなのだから。」
カミューが言葉を濁していたのを見て、エルザははっきりと自身の思いを告げる。
「……凄い、騎士の鑑だな。」
そのエルザの言葉に、最も感銘を受けたのはガーネットだった。
「こんなところで立ち話も何でしょう。陛下に会いませんか?何か理由があってここに来たのでしょう?」
カミューが、ちょうど良く空気を読み、会話が停滞したところでゼロ達4人に提案をする。
「そうですね。私の知る国王陛下では無い以上、現在の国勢などをしっかりお伝えしておく必要があります。」
エルシード王城。
ただの王国の城とは異なる、堅固な造りの城門。
ところどころに兵が配置できるスペースを設け、2階・3階部分にも、大砲や砲門が見える。
「王城っていうより、巨大要塞だな、ここは……」
最上階の大きな国旗を見上げながら、ゼロが感嘆の声を上げる。
「新王がまず手掛けたのが、軍備の徹底。まずは王城から。そして各地の要所に砦を構え、そして各地方・そして城下の兵力を強化しました。」
カミューが、自分の漆黒の鎧、そしてマントにつく勲章を指す。
「各地の領邦軍でも選りすぐりの騎士に与えられるのが、この『騎士勲章』。そして、その騎士勲章を持つものだけで結成される王宮直属の騎士団が『黒騎士団』・『白騎士団』なのです。領邦軍の部隊長クラスでないと、黒にも白にも所属できないのです。」
カミューは漆黒の鎧。つまりエルシード黒騎士団なのであろう。
しかし、カミューのマントには、騎士勲章のほかにもう一つ勲章がついていた。
ガーネットは、それを見逃さない。
「カミュー殿の、その勲章は?」
「あぁ……これね、私、一応副団長なんです。黒騎士団の。」
あまり言いたくなかった、そんな様子で笑うカミュー。
「……何だと!?」
「……人は見た目で判断するな、と言う事じゃの……。」
カミューの言葉に思わず絶句する、ゼロとヨハネ。
「それで……エルザ様は?」
「あぁ……エルザはですねぇ……。」
シエラの問いに、カミューは少しだけ上を見る。
4人もつられて上を見ると、そこには白銀の鎧を身にまとい、長く美しい金の髪を風になびかせる女騎士がいた。
「カミュー!遅い帰還だな!!どこで油を売っていた!!」
その姿は凛としながらも気品を感じ、そして……
「あの女、絶対強いぞ。隙が全く見当たらねぇ……。」
ゼロを一瞬で認めさせる、そんな雰囲気を醸し出していた。
「油を売る……エルザ、それはサボっている人間に言うものだよ?俺は領内にやってきた客人の様子を見に……。」
「そんなもの、部下に任せればよかろう!!全く、お前が居なければ黒騎士団の統率が取れないことくらい自覚しているだろう?」
カミューの返答に、大きな溜息を吐くエルザ。
「……失礼。私はエルシード白騎士団長・エルザ。ようこそエルシードへ!」
「彼女が我がエルシード白騎士団の長・エルザ。かの英雄・槍聖アイラの血筋にして、国内一の槍の使い手でもあります。……ちなみに私、槍を持って彼女に勝ったことは一度もありません。」
カミューがエルザを指して紹介する。
「何を言う……お前のもともとの武器は剣だろう?槍を持って私と相対するなど、陳腐な事よ。」
「だって……女子に得意な武器で勝負したら、何か必死みたいじゃない?」
「馬鹿か!戦場など、常に必死であるべきだ!男女の違いなど、戦場では無意味。殺すか殺されるかのやり取りなのだぞ!!」
『武人』という言葉がぴったりなエルザに、のらりくらりとしたカミュー。
お互い、信頼し合っているのだろう。
団長と副団長という格の差を感じさせないやり取りである。
「でさ、カミュー、黒騎士団長はどんな奴なんだ?」
ふと、ゼロが疑問を口にした。
「あぁ……黒騎士団長、ですねぇ……。」
副団長・カミューが思わず苦笑いをする。
「陛下の腰巾着なら、謁見の間にいるだろう。……会うだけ無駄だぞ?」
エルザが、心底不満そうに吐き捨てた。
「何……?黒騎士団長は嫌われ者か?団長ってくらいだから、相当強いんだろ?エルザにカミュー、お前たちと同等かそれ以上って事だろう?」
ゼロは、黒騎士団長に対するふたりの反応に違和感を感じていた。
彼の頭の中では、『騎士団長は尊敬されるべき猛者』でしかないのだ。
そう、彼の姉・アインがそうだったように。
「ウチの団長殿は……貴族出身でねぇ……。」
副団長のカミューが、言いづらそうに口を開く。
「革命のときに、貴族出身者が王となり、その王のお気に入りの男が黒騎士団長になった。腹心、のつもりなのだろう。しかし、勝手なことはこの私が白騎士団長の間はさせぬ。民を守るのが、騎士団の務めなのだから。」
カミューが言葉を濁していたのを見て、エルザははっきりと自身の思いを告げる。
「……凄い、騎士の鑑だな。」
そのエルザの言葉に、最も感銘を受けたのはガーネットだった。
「こんなところで立ち話も何でしょう。陛下に会いませんか?何か理由があってここに来たのでしょう?」
カミューが、ちょうど良く空気を読み、会話が停滞したところでゼロ達4人に提案をする。
「そうですね。私の知る国王陛下では無い以上、現在の国勢などをしっかりお伝えしておく必要があります。」
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