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第6章:戦火・再び。
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そして、もうひとり。
ゼロはローランド城かの広場に民を集め、隣国エリシャに向けて出発するところだった。
「忘れ物や、大切なものがあるなら取ってくるんだ!絶対、また戻ってくるけど、もしものことはいつも考えておいた方が良い。それに、心細い時……大切にしているものが側にあれば、必ず励みになる!」
民たちの不安の言葉の数々を、ゼロは真摯に受け止め、出来るだけ不安が無いようにと気を回す。
「ゼロさん……出発、こんなに遅くても大丈夫なんですか?そろそろ……。」
心配した民がゼロに問う。
「大丈夫!!まだまだ城下に敵はこないさ。なんたって、ローランドの将はみんな、そこいらの将よりも強い。城下の民を避難させるのだって、配色が濃厚だからじゃない。近くが戦地になってるから、念のため安全のため、だ。心配すんな。またみんなでここに帰って来よう。」
ゼロは、笑顔で民たちに言う。
「ゼロ様がそう言うなら……。」
「しかし、ゼロ様が前線に出ないで、本当に勝てるんですか?」
民の不安は、まだまだ消えない。
それもそのはず。
自国で大きな戦が始まっているのだ。不安になるのも無理はない。
「あんたらさ、自分たちのこと、もっと大切にしろよ。」
ゼロが、大きなため息を吐く。
「王様が、俺を避難誘導につけたときに言ってた。民は国の宝だってな。あんたらは、王様も認める『宝』なんだ。だから、俺が責任をもって必ず、全員無事にエリシャへ逃がす。それで、また全員無事で帰ってくる。……俺の今回の仕事はな、戦うよりもずっと責任重大なんだよ!」
ゼロが大きな声で訴える。
その言葉に、涙する民も出てきた。
「ゼロ様……私たちのために、本当にありがとうございます……。」
「礼なんかいらねぇよ。またここに戻ったら、メシ……みんなで食おうぜ。それでいいや。」
民から歓声が上がる。
そしてその頃、城内から騎士たちが出てくる。
「おぉ……聖騎士と魔法剣士の隊……。」
「本気で戦うんだ……。そりゃそうだよな……。」
ゼロはその中に、シエラの姿を見つけた。
シエラと視線が交錯する。
(そんな心配そうな顔するな。ちゃんと仕事してくるからさ。)
ゼロがシエラに向かい、親指を立てると、シエラの表情が明るくなった。
「さーて、じゃぁ行くか!」
「ゼロ様、エリシャまではどのくらいで行けるんですか?」
老人や子供に速度を合わせながら移動するゼロとローランド国民達。
移動を始めておよそ1時間後、民のひとりがゼロに訊ねた。
「そうだなぁ……俺一人なら2日くらいで行けるけど、今回は老人や子供もいるからなぁ……4日はかかるんじゃないか?」
「そんなに……かかるんですね……。」
「まぁ、戦争だし、移動先は隣国だからな。そのくらいは覚悟しながら動こうぜ。」
慣れた様子でゼロは言うが、戦争というものから縁遠い民たちには、その日数が長いものに感じた。
「戦争って、実際は1年近くかかるものもあるし、もっとかかる戦いだって過去にはあった。国同士の殺し合いって言うのはすぐには終わらないし、終わらせられないんだ。そして、終わったら終わったで、負けた国は民を弔ったり、壊れた家屋を復旧したり……勝った国に賠償を払ったり、大切なものを奪われたり……。戦争なんて、良いことは何一つねぇよ。」
ゼロは将軍の弟として、そして剣士としてたくさんの戦いを体験し、また目の当たりにしてきた。
そんなゼロだからこそ、戦争の怖さ、悲しさを民に語れるのだ。
「ローランドは、戦争を自分から起こすなんてのは、先の内戦で最後に使用
この国は、土地も国も美しい。こんな国をわざわざ炎に包む必要なんて、どこにもないんだからな。だから……守ろう。これからは、この国を。」
自分の母国ではないのだが、まるで自分の国のように親身に話すゼロに。民たちの信頼感も次第に増してくる。
「私……申し訳ない話ですが、ゼロ様は結局は他国の民だろうって思ってました。もし負けそうになったら、この国を置いて居なくなってしまうのかも……って。」
「ごめんなさい、私もです……。」
「本当は、こんなに良い方なのにな……。情けないことです。」
民が口々に自分の本音を語る。
そんな民たちの様子に、ゼロは思わず吹き出してしまう。
「誰だって、そんなもんだろ。実際に俺は他国民だし、そんな奴に避難を任せようだなんて、王様もどうかしてるぜ。」
笑いながら、冗談めかすゼロ。
「でもな、俺は絶対にみんなを守るぜ。王様は違う国の人だけどさ、ガーネットも、シエラもヨハネも、みんな違う国の人間だけどさ……、みんな信頼できる『仲間』なんだ。仲間が俺を信じてこの役目をくれたんだ。俺は絶対に信頼に応えてみせるさ。」
エリシャを滅ぼされ、独りぼっちになってしまったゼロ。
そんなゼロに仲間たちは手を伸ばし、そして掴み上げてくれた。
ゼロを独りぼっちにしなかった。
口には出さないが、ゼロは仲間たちに感謝していたのだ。
「だからさ……。他所の国の剣士だけど、ローランドの民はみんな『仲間』だと俺は思ってる。頼りねぇ剣士だけど、信じてくれよな。」
ゼロの言葉に、民たちは一様に頷く。
「もちろんです。ゼロ様、私たちを導いてくれて、ありがとう……。」
移動1日目は、穏やかな雰囲気で終わろうとしていた。
ゼロはローランド城かの広場に民を集め、隣国エリシャに向けて出発するところだった。
「忘れ物や、大切なものがあるなら取ってくるんだ!絶対、また戻ってくるけど、もしものことはいつも考えておいた方が良い。それに、心細い時……大切にしているものが側にあれば、必ず励みになる!」
民たちの不安の言葉の数々を、ゼロは真摯に受け止め、出来るだけ不安が無いようにと気を回す。
「ゼロさん……出発、こんなに遅くても大丈夫なんですか?そろそろ……。」
心配した民がゼロに問う。
「大丈夫!!まだまだ城下に敵はこないさ。なんたって、ローランドの将はみんな、そこいらの将よりも強い。城下の民を避難させるのだって、配色が濃厚だからじゃない。近くが戦地になってるから、念のため安全のため、だ。心配すんな。またみんなでここに帰って来よう。」
ゼロは、笑顔で民たちに言う。
「ゼロ様がそう言うなら……。」
「しかし、ゼロ様が前線に出ないで、本当に勝てるんですか?」
民の不安は、まだまだ消えない。
それもそのはず。
自国で大きな戦が始まっているのだ。不安になるのも無理はない。
「あんたらさ、自分たちのこと、もっと大切にしろよ。」
ゼロが、大きなため息を吐く。
「王様が、俺を避難誘導につけたときに言ってた。民は国の宝だってな。あんたらは、王様も認める『宝』なんだ。だから、俺が責任をもって必ず、全員無事にエリシャへ逃がす。それで、また全員無事で帰ってくる。……俺の今回の仕事はな、戦うよりもずっと責任重大なんだよ!」
ゼロが大きな声で訴える。
その言葉に、涙する民も出てきた。
「ゼロ様……私たちのために、本当にありがとうございます……。」
「礼なんかいらねぇよ。またここに戻ったら、メシ……みんなで食おうぜ。それでいいや。」
民から歓声が上がる。
そしてその頃、城内から騎士たちが出てくる。
「おぉ……聖騎士と魔法剣士の隊……。」
「本気で戦うんだ……。そりゃそうだよな……。」
ゼロはその中に、シエラの姿を見つけた。
シエラと視線が交錯する。
(そんな心配そうな顔するな。ちゃんと仕事してくるからさ。)
ゼロがシエラに向かい、親指を立てると、シエラの表情が明るくなった。
「さーて、じゃぁ行くか!」
「ゼロ様、エリシャまではどのくらいで行けるんですか?」
老人や子供に速度を合わせながら移動するゼロとローランド国民達。
移動を始めておよそ1時間後、民のひとりがゼロに訊ねた。
「そうだなぁ……俺一人なら2日くらいで行けるけど、今回は老人や子供もいるからなぁ……4日はかかるんじゃないか?」
「そんなに……かかるんですね……。」
「まぁ、戦争だし、移動先は隣国だからな。そのくらいは覚悟しながら動こうぜ。」
慣れた様子でゼロは言うが、戦争というものから縁遠い民たちには、その日数が長いものに感じた。
「戦争って、実際は1年近くかかるものもあるし、もっとかかる戦いだって過去にはあった。国同士の殺し合いって言うのはすぐには終わらないし、終わらせられないんだ。そして、終わったら終わったで、負けた国は民を弔ったり、壊れた家屋を復旧したり……勝った国に賠償を払ったり、大切なものを奪われたり……。戦争なんて、良いことは何一つねぇよ。」
ゼロは将軍の弟として、そして剣士としてたくさんの戦いを体験し、また目の当たりにしてきた。
そんなゼロだからこそ、戦争の怖さ、悲しさを民に語れるのだ。
「ローランドは、戦争を自分から起こすなんてのは、先の内戦で最後に使用
この国は、土地も国も美しい。こんな国をわざわざ炎に包む必要なんて、どこにもないんだからな。だから……守ろう。これからは、この国を。」
自分の母国ではないのだが、まるで自分の国のように親身に話すゼロに。民たちの信頼感も次第に増してくる。
「私……申し訳ない話ですが、ゼロ様は結局は他国の民だろうって思ってました。もし負けそうになったら、この国を置いて居なくなってしまうのかも……って。」
「ごめんなさい、私もです……。」
「本当は、こんなに良い方なのにな……。情けないことです。」
民が口々に自分の本音を語る。
そんな民たちの様子に、ゼロは思わず吹き出してしまう。
「誰だって、そんなもんだろ。実際に俺は他国民だし、そんな奴に避難を任せようだなんて、王様もどうかしてるぜ。」
笑いながら、冗談めかすゼロ。
「でもな、俺は絶対にみんなを守るぜ。王様は違う国の人だけどさ、ガーネットも、シエラもヨハネも、みんな違う国の人間だけどさ……、みんな信頼できる『仲間』なんだ。仲間が俺を信じてこの役目をくれたんだ。俺は絶対に信頼に応えてみせるさ。」
エリシャを滅ぼされ、独りぼっちになってしまったゼロ。
そんなゼロに仲間たちは手を伸ばし、そして掴み上げてくれた。
ゼロを独りぼっちにしなかった。
口には出さないが、ゼロは仲間たちに感謝していたのだ。
「だからさ……。他所の国の剣士だけど、ローランドの民はみんな『仲間』だと俺は思ってる。頼りねぇ剣士だけど、信じてくれよな。」
ゼロの言葉に、民たちは一様に頷く。
「もちろんです。ゼロ様、私たちを導いてくれて、ありがとう……。」
移動1日目は、穏やかな雰囲気で終わろうとしていた。
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