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錆び付いた青
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ズッパタンズッパタン
ダルそうに上履きを引きずって歩く足音がリノリウムの廊下に響く。
その足音に段々ともう一つの足音が近付いてくる。
こちらは先程の足音とは対照的に元気を持て余しているようだ。
キュッキュッとやや早く子気味良いテンポで四、五歩進んだところでドスッと人にぶつかったか、いつも通り彼を殴った(彼女曰く普通の「挨拶」らしいが)ような音がした。
驚き九割痛さ一割といった具合の間抜けな声と、ドア越し故にボソボソと聞こえる彼女への恨み節であろう言葉を聴くにどうやら後者のようだ。
どうやらなんてとぼけてはみたが、この時間になるといつも行われるやり取り。
考えるまでもなく彼は殴られているのだ。
……間違ってはいないが、酷く聞こえが悪い。
そんな益体もないことを考えていると
ガラガラッとドアが開き二人が……
目が、覚めた。
覚めてしまった。
また私だけ目覚めてしまった。
溺れていたい。絡まっていたい。
ともすれば囚われてしまうほど幸せな、幸せだったあの時間に。
この頃、よくあの時の夢を見る。
私の人生が本来の輝きを放っていた唯一の時間。
かけがえのない高校三年間の夢だ。
幸せな夢だが最悪の目覚めだ。
頭が重い。喉も乾いた。
昨日ベッドの傍に置いた水が見当たらない。
今は探すのも億劫だ。先に顔を洗ってから新しい水を取りに行こう。
洗面所まで歩く。気のせいだろうか。
いつもと何かが微妙に違う。頭痛の所為か。
違和感が気持ち悪い。
早く顔を洗って意識をハッキリさせよう。
鏡の前に立つ。今度は確かだ。
違和感なんてものじゃない。
昨日までとの確かな違い。
部屋に閉じこもり日光を浴びなかった故に不健康に青白くなった肌、伸び放題になり腰の下程まであったパサついた髪。
それが昨日までの私だったはずだ。
だが今、鏡に映る私は赤みがさしたハリのある肌、顎下までのショートボブでツヤのある髪。
間違いない。あの頃の私だ。
分からない…なんで…どういうこと・・・?
幻覚?明晰夢?何故かしっくりこない。
分からない。部屋で落ち着いて考えたい。
頭を抱えながら歩いていると、デスクの上の
ノートが目に付く。
全く身に覚えがない。
ここ数年ノートなんて使っていない。
なんの変哲もないノート。
だが、目が離せない。見なければいけない。
何故かそんな気がする。
ダルそうに上履きを引きずって歩く足音がリノリウムの廊下に響く。
その足音に段々ともう一つの足音が近付いてくる。
こちらは先程の足音とは対照的に元気を持て余しているようだ。
キュッキュッとやや早く子気味良いテンポで四、五歩進んだところでドスッと人にぶつかったか、いつも通り彼を殴った(彼女曰く普通の「挨拶」らしいが)ような音がした。
驚き九割痛さ一割といった具合の間抜けな声と、ドア越し故にボソボソと聞こえる彼女への恨み節であろう言葉を聴くにどうやら後者のようだ。
どうやらなんてとぼけてはみたが、この時間になるといつも行われるやり取り。
考えるまでもなく彼は殴られているのだ。
……間違ってはいないが、酷く聞こえが悪い。
そんな益体もないことを考えていると
ガラガラッとドアが開き二人が……
目が、覚めた。
覚めてしまった。
また私だけ目覚めてしまった。
溺れていたい。絡まっていたい。
ともすれば囚われてしまうほど幸せな、幸せだったあの時間に。
この頃、よくあの時の夢を見る。
私の人生が本来の輝きを放っていた唯一の時間。
かけがえのない高校三年間の夢だ。
幸せな夢だが最悪の目覚めだ。
頭が重い。喉も乾いた。
昨日ベッドの傍に置いた水が見当たらない。
今は探すのも億劫だ。先に顔を洗ってから新しい水を取りに行こう。
洗面所まで歩く。気のせいだろうか。
いつもと何かが微妙に違う。頭痛の所為か。
違和感が気持ち悪い。
早く顔を洗って意識をハッキリさせよう。
鏡の前に立つ。今度は確かだ。
違和感なんてものじゃない。
昨日までとの確かな違い。
部屋に閉じこもり日光を浴びなかった故に不健康に青白くなった肌、伸び放題になり腰の下程まであったパサついた髪。
それが昨日までの私だったはずだ。
だが今、鏡に映る私は赤みがさしたハリのある肌、顎下までのショートボブでツヤのある髪。
間違いない。あの頃の私だ。
分からない…なんで…どういうこと・・・?
幻覚?明晰夢?何故かしっくりこない。
分からない。部屋で落ち着いて考えたい。
頭を抱えながら歩いていると、デスクの上の
ノートが目に付く。
全く身に覚えがない。
ここ数年ノートなんて使っていない。
なんの変哲もないノート。
だが、目が離せない。見なければいけない。
何故かそんな気がする。
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