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ワイバーン
16体目 ニンジャ奮闘する!2
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(速え……まるで……峠で競ってる二台のマシン見てえだ……)
スカウト1と荒獣の様子を上空から観察するメイラー1のパイロットは、遅れて着いた無人ヘリを引き連れてそんな感想を抱く。
機関砲の照準は動きが早すぎて不可。ミサイルも、いつ進路を変更するか分からず撃てない。
低空を飛ぶ一機と一匹は、戦闘ヘリの介入すら許さぬ限界ギリギリの死闘を繰り広げていた。
ビルから垂れ下がったツタを、細身の機体が揺らす。排気の熱が空気をかき混ぜ揺らぐ。
次の瞬間、陽炎が渦を巻いた空間を空飛ぶ爬虫類が切り裂いた。
荒獣は皮膜を力強く押し下げ、速度を上げてヘリに迫る。
ヘリが逃げようと左に傾く。荒獣も左へ曲がろうとする。
しかしヘリはそのままロールを続けて一気に右へ向くと、十字路を大回りに駆け抜けた。強烈なGを受けてギシギシと機体がたわむ。
荒獣は左に曲がる想定が外れたため狼狽えるが、すぐに姿勢を直して右へ飛ぶと追跡を再開した。
(コイツの最高速度に付いてくるのか!……しかもジリジリ追い込まれる……大通りだけ飛んでたら喰われるな)
冬威は荒獣の速度が予想以上に早い事を認めると、次の行動に移る。
OH-1ニンジャの動きが単純な「逃げ」から複雑な「回避運動」に変わった。
廃墟と化したビルの間。そこに機体が押し込まれる。驚いた荒獣だが、こちらは生物特有の柔軟さと俊敏さを活かしてビルの間へ翼をねじ込んだ。
水平飛行で少々速度は落ちたが、250kmを超える速度で低空に描かれる道を飛ぶ。空中橋のように渡された木々の下を潜り抜け、100m下まで伸びたツル植物の一本をローターで切り飛ばした。
(次は……右!)
ヘリにとっては隙間のような道を抜けた瞬間、横転と旋回を同時に行い、通りを駆け抜ける。
ビルから手を伸ばした木に機体が当たらないよう、ほんの僅かに機首を下に向けながら。
機体が小刻みに揺れ、ミシリとガラスが音を立てる。ローターが竹のようにしなる。
「ギイイイイイッ!」
追いかける荒獣はビルに衝突する寸前、足で壁面を蹴って助走を付け、速度を上げながらニンジャへと迫る。
ニンジャが避けた木が邪魔になって速度が落ちるはずだったが、そんなものは口内に素早く生成した火炎球を打ち出して灰に変えてしまった。
(化け物め……)
冬威は高速の逃避に追いすがる荒獣を見て、自然に考えついた名前を付ける。
「まだ奴は追ってくる!ワイバーンは……ワイバーンは速い!中位荒獣と推定する!」
偵察の役目は、新たな荒獣の名付けや脅威度認定も仕事に入る。冬威は逃げながらもサブの仕事まできっちりこなしていた。
『……ワイバーン……分かりやすく、端的に表している。いい名前だ。その名前を付けたお前を讃える!生きて戻ってこい!』
「……言われなくても!」
ニンジャが今度は右方向に強く旋回し、大きなビルへと突っ込んでいく。それを見て追跡を止めるワイバーン。逃避を諦めて自殺するものと考えたのだろう。
だがそうではなかった。
「冬威さん!冬威さんやめ……うわあああああああ!」
ビルの最下層、そこには巨大なトンネルができている。
トンネルの形は歪で、それが設計によるものだったのかそれともただの崩落なのかは、冬威の知る所ではない。
冬威は、それを利用するだけだ。
機体を信じ、かけに出る。コクピットいっぱいに暗い空間が迫る。時速200kmで、半円の中に突入する。
ローターがトンネルを擦った。二、三度火花が散る。大きく乱れた気流で機体が浮き上がりそうになる。
身体全体でそれを鋭敏に感じ取り、手を繊細に動かす。上がりすぎても下がりすぎても、左右に触れても激突する限界ギリギリのデスゲーム。
自殺行為とも思える挑戦はすぐに終わりを迎えた。真っ白な光が視界を覆う。瞳孔が引き絞られるにつれて、景色が戻ってくる。
戻り切る前に、大きな衝撃が機体に走った。二人のパイロットは驚いて肩を竦めるが、ヘリに大きな損傷はない。
次に迫るは廃墟。機体にダメージは無いか、と考える前に手が動く。
ニンジャは命令に忠実に答え、斜め上空へと向けて飛び上がった。
通り過ぎた道の一部には、真新しいタイヤ痕が二本引かれている。衝撃の理由はこれだ。
なんとかだが、かけに勝った。ニンジャは速度を上げ、今度こそ逃亡を計る。
素晴らしき操縦。それに当てられたのか、ワイバーンも翼を折りたたみ豪速球に変身してトンネルを潜り抜ける。
潜り抜けた後は着地することも無く即座に翼を展開し、左に逃げたニンジャを追って……その先に待ち受けていたのは装甲車部隊だった。
全ての機関銃が自分を向いている━━事態に驚き慌て、逃げようとする。
だが逃げる直前、後ろから唐突に聞こえてきた羽ばたきは、ニンジャのものよりもずっと大きく力強く、低い唸り。
「メイラー1、攻撃する」
穴の空いたビルの垂直な壁を舐めるように降下するのは、手練れの攻撃ヘリ。対空装備のアパッチロングボウがミサイルを放つ。
白煙が先端に炎を瞬かせて一直線に伸びる。
いくら俊敏と言えどミサイルは避けきれず、大きな衝撃に揺さぶられたワイバーンは姿勢を崩し地上へ落ちた。
そこに向かって打ち込まれる多数の銃弾。翼をボロ切れに変えられ、もう飛ぶことは叶わない。立ち上がって威嚇してみるも、的が大きくなったと余計に撃ち込まれる始末。
だが、これだけでは評価上でも事実上でも中位荒獣であるワイバーンは倒せない。
だからこそ彼女達が今、服を脱ぐ。
「おい、下だ」
「ギウウ……?」
ワイバーンは彼女達を確認すると、一拍置いて女体化を開始した。
大きな羽はあっという間に縮小され、奥行のある顔は人間らしく扁平に、手と足は細長く形成される。
褐色の美女が、しかし皮膚表面だけ明らかに人間でないことを強調しながら現れた。
「……もう少しで喰えたんだけどな。仕方ない、お前らもまとめて喰ってやる」
「できるものなら、やってみるがいい」
ワイバーンはスポーティな身体付きを悠々と見せつけながら、挑発した緑に正面から覆いかぶさるようにしてキスを交わす。
その動きに合わせて菜々がワイバーンの後ろを取り、二対一の構図を作り上げる。
楽と奈津美は待機中だ。一糸まとわぬまま適当な場所を見つけて座っているのでかなりシュールだが、二人と一匹を観察する目は真剣そのものである。
真剣に観察する二人の後ろでは、もう出番の無くなった装甲車達が一両だけ残して別の場所へと移動し始める。ハーピーは依然脅威であり、多発地帯へ向かうのだ。
そうして数分後には、開けた通りで交合う音しか残らなかった。
スカウト1と荒獣の様子を上空から観察するメイラー1のパイロットは、遅れて着いた無人ヘリを引き連れてそんな感想を抱く。
機関砲の照準は動きが早すぎて不可。ミサイルも、いつ進路を変更するか分からず撃てない。
低空を飛ぶ一機と一匹は、戦闘ヘリの介入すら許さぬ限界ギリギリの死闘を繰り広げていた。
ビルから垂れ下がったツタを、細身の機体が揺らす。排気の熱が空気をかき混ぜ揺らぐ。
次の瞬間、陽炎が渦を巻いた空間を空飛ぶ爬虫類が切り裂いた。
荒獣は皮膜を力強く押し下げ、速度を上げてヘリに迫る。
ヘリが逃げようと左に傾く。荒獣も左へ曲がろうとする。
しかしヘリはそのままロールを続けて一気に右へ向くと、十字路を大回りに駆け抜けた。強烈なGを受けてギシギシと機体がたわむ。
荒獣は左に曲がる想定が外れたため狼狽えるが、すぐに姿勢を直して右へ飛ぶと追跡を再開した。
(コイツの最高速度に付いてくるのか!……しかもジリジリ追い込まれる……大通りだけ飛んでたら喰われるな)
冬威は荒獣の速度が予想以上に早い事を認めると、次の行動に移る。
OH-1ニンジャの動きが単純な「逃げ」から複雑な「回避運動」に変わった。
廃墟と化したビルの間。そこに機体が押し込まれる。驚いた荒獣だが、こちらは生物特有の柔軟さと俊敏さを活かしてビルの間へ翼をねじ込んだ。
水平飛行で少々速度は落ちたが、250kmを超える速度で低空に描かれる道を飛ぶ。空中橋のように渡された木々の下を潜り抜け、100m下まで伸びたツル植物の一本をローターで切り飛ばした。
(次は……右!)
ヘリにとっては隙間のような道を抜けた瞬間、横転と旋回を同時に行い、通りを駆け抜ける。
ビルから手を伸ばした木に機体が当たらないよう、ほんの僅かに機首を下に向けながら。
機体が小刻みに揺れ、ミシリとガラスが音を立てる。ローターが竹のようにしなる。
「ギイイイイイッ!」
追いかける荒獣はビルに衝突する寸前、足で壁面を蹴って助走を付け、速度を上げながらニンジャへと迫る。
ニンジャが避けた木が邪魔になって速度が落ちるはずだったが、そんなものは口内に素早く生成した火炎球を打ち出して灰に変えてしまった。
(化け物め……)
冬威は高速の逃避に追いすがる荒獣を見て、自然に考えついた名前を付ける。
「まだ奴は追ってくる!ワイバーンは……ワイバーンは速い!中位荒獣と推定する!」
偵察の役目は、新たな荒獣の名付けや脅威度認定も仕事に入る。冬威は逃げながらもサブの仕事まできっちりこなしていた。
『……ワイバーン……分かりやすく、端的に表している。いい名前だ。その名前を付けたお前を讃える!生きて戻ってこい!』
「……言われなくても!」
ニンジャが今度は右方向に強く旋回し、大きなビルへと突っ込んでいく。それを見て追跡を止めるワイバーン。逃避を諦めて自殺するものと考えたのだろう。
だがそうではなかった。
「冬威さん!冬威さんやめ……うわあああああああ!」
ビルの最下層、そこには巨大なトンネルができている。
トンネルの形は歪で、それが設計によるものだったのかそれともただの崩落なのかは、冬威の知る所ではない。
冬威は、それを利用するだけだ。
機体を信じ、かけに出る。コクピットいっぱいに暗い空間が迫る。時速200kmで、半円の中に突入する。
ローターがトンネルを擦った。二、三度火花が散る。大きく乱れた気流で機体が浮き上がりそうになる。
身体全体でそれを鋭敏に感じ取り、手を繊細に動かす。上がりすぎても下がりすぎても、左右に触れても激突する限界ギリギリのデスゲーム。
自殺行為とも思える挑戦はすぐに終わりを迎えた。真っ白な光が視界を覆う。瞳孔が引き絞られるにつれて、景色が戻ってくる。
戻り切る前に、大きな衝撃が機体に走った。二人のパイロットは驚いて肩を竦めるが、ヘリに大きな損傷はない。
次に迫るは廃墟。機体にダメージは無いか、と考える前に手が動く。
ニンジャは命令に忠実に答え、斜め上空へと向けて飛び上がった。
通り過ぎた道の一部には、真新しいタイヤ痕が二本引かれている。衝撃の理由はこれだ。
なんとかだが、かけに勝った。ニンジャは速度を上げ、今度こそ逃亡を計る。
素晴らしき操縦。それに当てられたのか、ワイバーンも翼を折りたたみ豪速球に変身してトンネルを潜り抜ける。
潜り抜けた後は着地することも無く即座に翼を展開し、左に逃げたニンジャを追って……その先に待ち受けていたのは装甲車部隊だった。
全ての機関銃が自分を向いている━━事態に驚き慌て、逃げようとする。
だが逃げる直前、後ろから唐突に聞こえてきた羽ばたきは、ニンジャのものよりもずっと大きく力強く、低い唸り。
「メイラー1、攻撃する」
穴の空いたビルの垂直な壁を舐めるように降下するのは、手練れの攻撃ヘリ。対空装備のアパッチロングボウがミサイルを放つ。
白煙が先端に炎を瞬かせて一直線に伸びる。
いくら俊敏と言えどミサイルは避けきれず、大きな衝撃に揺さぶられたワイバーンは姿勢を崩し地上へ落ちた。
そこに向かって打ち込まれる多数の銃弾。翼をボロ切れに変えられ、もう飛ぶことは叶わない。立ち上がって威嚇してみるも、的が大きくなったと余計に撃ち込まれる始末。
だが、これだけでは評価上でも事実上でも中位荒獣であるワイバーンは倒せない。
だからこそ彼女達が今、服を脱ぐ。
「おい、下だ」
「ギウウ……?」
ワイバーンは彼女達を確認すると、一拍置いて女体化を開始した。
大きな羽はあっという間に縮小され、奥行のある顔は人間らしく扁平に、手と足は細長く形成される。
褐色の美女が、しかし皮膚表面だけ明らかに人間でないことを強調しながら現れた。
「……もう少しで喰えたんだけどな。仕方ない、お前らもまとめて喰ってやる」
「できるものなら、やってみるがいい」
ワイバーンはスポーティな身体付きを悠々と見せつけながら、挑発した緑に正面から覆いかぶさるようにしてキスを交わす。
その動きに合わせて菜々がワイバーンの後ろを取り、二対一の構図を作り上げる。
楽と奈津美は待機中だ。一糸まとわぬまま適当な場所を見つけて座っているのでかなりシュールだが、二人と一匹を観察する目は真剣そのものである。
真剣に観察する二人の後ろでは、もう出番の無くなった装甲車達が一両だけ残して別の場所へと移動し始める。ハーピーは依然脅威であり、多発地帯へ向かうのだ。
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