ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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ワイバーン

20体目 ワイバーン4

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 緑がワイバーンを倒した同時刻、上空では無線が騒がしく現況を伝えあっていた。

『なんだ……ハーピーが解散する!』

『全員堕ちちまったのか……!』

 無人機のカメラはハーピーが次々と空へ飛び立つ様を、映し出していた。
 もう既に希望は無いものとし、悲観に暮れる司令部。あれだけの数のハンターがやられた、という絶望が広がっていく。

 だが、前線のヘリは状況を冷静に見ていた。

『ロングボウレーダーに感あり』

『こちらも目視で確認。女神は……我らのヴァルキリーは健在!』

『なにっ!? ……う、ぅぉおおおおおおおおお! よおおおおおおおおし!』

 司令塔一丸となって大喜びする。滅亡の危機から開放された安心感を伴った声が、薄暗い司令室全体を震わせた。

『よぉし! よし! 上々だ! 全防空部隊!』

『サー?』

『何でしょうか』

 司令部が発破をかける。それは反撃の合図。

『全力攻撃を許可する! 状況開始!』

『……了解!』

『言われなくとも』

『二言目には撤退のHQが……応! やってやるよ!』

『全部ヴァルキリーに任せてられっかよ!』

 埋め尽くさんばかりのハーピーによって灰色に塗りつぶされた空。その鼠色に向かって人類の叡智の弓が放たれる。

 窓を失ったビル群を覆い尽くさんばかりの白煙が立ち上り、上空へと翔る。

 同時に、ビル群一帯が光に包まれ、廃墟のネオン街を形成する。建物を照らした無数の光弾は空を飛び、ハーピーに当たるとポップコーンのように弾けた。

「撤退します! 乗ってください!」

「ありがとう! ……楽、気を保て」

「あ、はは……悪いね……」

「ななちー大丈夫?」

「大丈夫に……決まってるでしょ……」

 緑含め13人が装甲車に乗り込み、撤退を開始する。後は防空隊の仕事だ。6輪の装甲車は次第に速度を増し、ハーピーの追撃を逃れた。



 誰もいなくなって時間が経ち、すえた匂いも収まった部屋で小さな荒獣は彼女の顔よりもずっと大きいタブレットの画面を凝視していた。
 前の主人が持っていたものより大きかったが、幸い操作性が似ていたためスムーズに動かせている。

 レモンは前触れなく足を拘束されたまま一人ぼっちにされたため、言いようのない不安感とそれから来る焦燥にも似た怒りを感じていた。

(やっぱりスマートフォンのような情報機器は便利です。楽様の事を調べ放題。経歴からファンの意見まで全部。あのお砂糖のような言葉も!)

 使えそうな情報を片っ端から集めていく。何に使うかといえば、楽を虐めるためだ。
 何せレモンは怒っているのだ。自分がされたように楽を、言葉を持ってがんじがらめに縛り服従させ、そして尻の一つや二つ叩かなければ収まらない。
 レモンの本性が……荒獣として、彼女自身としてのSっ気をたっぷり塗りたくったような本性が、鎌首をもたげる。

「ふふ……楽様、私がすっごく気持ちよくさせてあげます」

 画面上部に作戦の成功を伝える通知が表示されると、レモンは奇襲をかけるべく動き始めた。



 激戦を制し、皇都に凱旋したハンター達。驚くべきことに堕ちたハンターは一人もいなかったという。奇跡的な大勝利を収め、歓声を持って迎え入れられた。

 しかし、起きた悲劇が消えることは、無い……。

「ふぅ……」

 ワイバーンを見事退けた緑は、起き上がれなくなった菜々の見舞いを行おうと病院の乳白色の廊下を静かに歩いていた。

 笑うべきか否か、起き上がれなくなった理由は「腰を痛めたから」だという。要は腰の動かしすぎだ。
 だから見舞いといっても、半分以上からかいの意味が占めていた。

 廊下を曲がった時、目の前からガラガラと音を立てて負傷者が運ばれてくる。負傷者は全身を布で覆われていたが、それに違和感を感じた。

(形が……おかしい……?)

 明らかに布の盛り上がりが足りない。人の形で無いものが、人の頭だけを伴って運ばれてくる。

 嫌な予感━━的中する。

 緑の真横を通り過ぎる時、なぜ変な形なのかが明らかになった。肩の輪郭、腰の輪郭は残っている。あばら部分も、布が盛り上がり人の形を形成している。
 だが、その他の部分は、骨と思われる小さな盛り上がりだけを残して、無くなっていた。

 ……ハーピーに食われたのだ。

 思わず、その光景を頭の中に描いた。描いてしまった。

(━━っっっ!?)

 緑は、死体を間近で目にするのは初めてだった。
 困惑、強烈な不快感、えも言えぬ恐怖、責任感に申し訳の無さ。そういうものがグチャグチャに混ざり合ってこみ上げてくる。

 頭痛、目眩、耳鳴り。吐き気。

 気づけば、トイレで胃の中にあったものをぶちまけていた。

「うっ……ぅえええええぇぇぇ! ……げほっ! げ……えぇぇ!」

 涙で前が見えないが、口の中に酢が逆流してきたような味と苦しさが嘔吐している事を強烈に訴えていた。

「はー……はー……っ!」

 悔しさでトイレの壁を殴る。

 いくら強くなったとしても、一人では何もできない。守れない。人は無残に死んでいく。

「お前のせいじゃない」なんて、よく言われた。分かってる。でも違う。自分が不甲斐ないからだと、思う。

 快楽に飲まれ、動けない内に。彼ら一般兵は恐怖と痛みに覆われて死ぬ。
 その度に何人もが涙を流し、途方に暮れる。もうこんな事は嫌だ。そんな思い、誰にもさせたくない。

 だから━━

「強く……私は……強くならなければならない……!」

 どこかを睨みつける目からは、嚥下の苦しさから来る涙とは別の、涙が零れていた。
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