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ふたなりへの道
25体目 緑、ふたなりになる
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『えー、三瓶緑くん、サラダ……じゃなかった、紅菜菜々なくん、これより第一研究室に至急移動してください』
「誰がサラダよ! っていうか「な」が多いわよっ! イダダダ……」
ふざけた呼び出しが病院内を駆け巡る。基地に設置された全てのスピーカーから流れているのだろう。菜々と緑はベッドで寝ていたが、まず緑が目を覚まし、次いで「サラダ」の単語に反応した菜々が飛び起きた。
「……なんなんだ、一体」
「あのクソバカ、研究室に呼び出すってどういう了見? こっちは腰が痛いっていうのに……」
二人とも不機嫌そうに身を起こす。菜々は腰をさすりながら脚を布団の外に出したが、そこから動く気配が無い。
「立てるか?」
様子に気づいた緑が、半ば確信したように菜々に近づき、手を差し伸べた。
「……肩貸して」
緑が菜々の肩を持ち、頑張って病室を抜ける二人。ただ、一番の問題は、病室から研究室までの距離が長いという事だった。
「やあ、よく来てくれた!」
「荒獣研究室」と書かれた札を下げている部屋のドアを開けると、いつも通り五月蝿い八雲がペタペタとスリッパを鳴らしながら、部屋の奥から出迎えにくる。
蛍光灯の下で艶やかに光る数々のガラス器具類が見えるよりも、DNAの解析や何かの培養に使う高度で高価そうな機械が見えるよりも先に、八雲の声が飛んできた。
「ぜーっ、ぜーっ、やっと着いた……ちょっと、あのふざけた放送何なのよ! しかも呼び出しとか、見合う話じゃないとほんとに殺すわよ!?」
「ああ、私も菜々に同感だ。研究室などに呼び出して、何のつもりだ。坂場」
二人は怒りながら、近くにあったソファに腰を下ろす。臙脂色が腰を受け止め、菜々はようやく一息つけた。
「どうしてもやらないといけない事でね。できれば紅菜くんも参加して欲しかったんだけど……その様子じゃ無理みたいだねえ」
出迎えた時こそテンションが高かった八雲だが、非常に珍しいことに今は大人しい口調で話している。そのせいか二人には直感的に、良くない事だと分かった。
「……まず概要を説明しろ」
「うーん、概要か。まず、回収班の設置により荒獣の回収が進んでいる。同時にDNA解析もある程度進んだんだ。結果、ラットや犬にDNAを埋め込む事で、オリジナルに比べれば弱いが荒獣の性質を発現するようになった。これが問題その一。あまりにも素晴らしい話で、お偉いさんがたちまち食いついてきちゃった」
八雲は誇らしげに、ただやはり疲れた様子で説明を始める。
「……いいじゃないの」
「ここまでならね。次に、DNAを『メスの』動物に組み込んでみたんだ。それがこの娘」
八雲は、近くにおいてあった飼育箱を取り出し、二人の目の前に置く。中にいるラットは二人の姿を確認すると、電気を放出した。
青い光が空気を切り裂き、薄いプラスチックに当たって砕ける。それ以上の事はできないみたいだが、普通のラットとは明らかに違うという事が分かれば十分だろう。
「おお……これ凄いな」
「電鰐の能力ってわけね……あれ、立派なの付いてる。ちょっと坂場、これオスよ。間違えてる」
目の前の成果に驚いていた二人だが、親指ほどもあるペニスに気づいた菜々がオスだと思い込み指摘する。八雲は首を横に振った。
「正真正銘、その娘はメスだよ」
「は?」
「ラットにしては異様に立派なペニスが付いてるだろう? それこそがメスだった証拠さ」
「ちょ、ちょっと待て。じゃあ何だ。荒獣のDNAを組み込んだラット……いや、その動物は生えてくるのか!?」
「察しがいいね。正解だよ、三瓶くん」
疲れた様子で、頭を抱えながら二重丸を言い渡す八雲。心底驚いた様子で、ラットをもう一度まじまじと見る二人。それ以上は誰も、何も言えなかった。
静寂を切ったのは、別の女の声。
「人に能力を移植したい。でも移植すると生える。悩ましい問題よね」
ダウナーな印象を与える不思議な声の主に、緑と菜々の視線が釘付けになった。
「しっ……!」
「東雲咲希!」
坂場八雲と並ぶマッドサイエンティスト、東雲咲希。カールのかかった薄紫色のポニーテールは着込んだ白衣と対照的だ。八雲と同じく印象は最悪に近い。
「あんたが絡んでたのね!」
「どうりで、坂場の様子がおかしいと思った」
「そんな言い方しなくてもいいじゃない? 能力を高める方法を教えてあげようとしているのに」
咲希は特徴的な髪を揺らしながら、菜々の方へ近づいてくる。それだけなのに、どこか意地悪そうに眼鏡の奥の瞳がキラリと光った。
「ちょっ、こっちくんな!」
「どうして……?」
「普通得体の知れない注射針を持って近づいてこられたら嫌でしょ!」
「あら気づいてたのね。残念」
「シャレになら無いわ……」
今回は気づいて自己防衛できたからいいが、気づかなければ逃げることもできずに人体実験の材料にされていた菜々は恐怖に震える。
咲希の印象が悪い理由は、たった一つ。隙あらば人体実験を行おうとしてくるところだ。その牙にかけられた女性は数しれず……。まあ、誰も今のところ死んでいないのが救いだ。
「それで、何の用だ東雲……いや、お前が何をしたいかは大体分かった。やるならさっさとしろ」
「あらごめんなさい。つい、ね。話が分かっているなら、早いわ」
何がつい、よ。と菜々が顔をしかめた。
「まあ、やる前に一つ確認しておくよ、三瓶くん。……気づいているだろうけど、この実験は端的に言えば君に荒獣のDNAを打ち込み、特殊な能力を得る代わりに陰茎を生やすというものだ。つまり……君の純粋な女としての人生は、終わる」
「予想は付いていた」
「それでもいいのかい?」
「……」
少し難しそうな顔をして、一瞬迷ったかのように見えた緑。女ではなくふたなりとしての人生は、周りからどのように扱われるのか、色々と考えてしまう。
さてヒーローとして取り上げられるのか、はたまたふしだらで節操無しとして蔑まれるのか。いずれにせよ差別的な視線は避けようもない。
そもそも急すぎる話なのだ。いきなり、強くなれるがふたなりになります。その試験対象になってください、などと言われて誰が考え無しに快諾できるのか。
…………しかし、彼女はすぐに笑顔を取り戻した。いつもの不敵な笑みを。
「こういう仕事だ。元々奇異の目には晒され慣れている」
「……そうか。なら、もう一つ確認したい。DNAを打ち込んでから、陰茎の完全な発現までに要する期間は、人の場合一週間と見積もられてる。その間は出撃禁止。更に発情状態が続く。また発現した直後の陰茎はかなり敏感だ。君たちにとっては大きなウィークポイントになりかねない。そこで、快感に慣らすため更に一週間、出撃禁止命令が出る。計二週間の出撃停止と……紅菜くん」
八雲は話の途中でいきなり菜々の名前を呼ぶ。
「え? 私?」
「うん。快感に慣らす一週間は、紅菜くんがサポートしてあげてほしい」
「……ちょっ、ちょっと待ってよ! それってつまりアレをするってことでしょ!? なんで私なのよ!」
ヌいて差し上げろとの命令に驚く菜々。いつもやっている事となんら変わらないはずだが、心の準備が出来ていない状態でそういった話が出ることには流石にびっくりしたのだろう。
「なんとなく」
「今すぐ変えなさい」
「と、言いたいところだけど、紅菜くんの責め方が一番荒獣に似ているから頼んだ次第だ」
もちろん嘘だ。そんなもの調べた人はいないし、調べようも無い。それは菜々も分かっているが、そこまで言われてしまうと抵抗はし辛かった。
「何その、本当かどうかも分からない取ってつけたような理由……分かったわよ」
「菜々、そんなに嫌なら自分でするぞ……」
「い、嫌ってわけじゃないわよ……ちょっと驚いただけ。……まあいいわ、散々に泣かせてあげるから」
「ふ、楽しみにしている。……東雲、用意はできた」
「分かったわ。じゃあこっちに……」
心を決めた緑は、言われるがままに付いていく。重そうな扉一枚隔てた場所にある部屋に入った。
清潔そうな研究室とは反対に、コンクリートが剥き出しで明かりは小さな電灯が一つ。研究室にあった机の上にパソコンと何やら怪しい薬品が置いてあるが、それ以外は中央に医療用ベッドが一つあるのみ。
暗くて湿っぽく、何をやる気なのかよく分からない不気味な部屋だ。実際にはそうでも無いのに、カビ臭ささえ感じる。
緑は嫌な予感を抱えながら、中央のベッドに横たわった。
「痛いから暴れないように縛るわ。麻酔ができないから」
「麻酔無しか。まあいい」
両手両足を堅固に縛られ、横で咲希が薄黄色の液体を注射器に注入する作業を見て、目をつむる。
「じゃあ、覚悟してね」
「……っ」
極細の針が、太ももの付け根に入ってくる。左右に一回ずつ。痛みはすぐに去った。
「……これで終わりか?」
「いいえ。今度はもっと痛いから、でも我慢して」
「……い゛っ~!」
手足を固定されていなかったら、どこかしら大きく動いていただろう痛みが襲ってくる。陰唇そのものに針が侵入し、脂肪をかき分けて液体が入った。
「……お、終わりか……」
「まだよ」
「……まだあるのか?」
脂汗をかいた額が歪む。さっきのでも大声を上げそうなほど痛かったのに、まだ差し込むところがあるという。
「ええ。マウスピースはあるけど、くわえる? あまり意味は無いと思うけど」
「マウスピース……まて、そんなに痛いのか。どこに刺す気だ」
安易に受けない方が良かったかもしれないと、今更後悔の念が浮かぶ。
「聞く? 嫌と言っても、止められないから無理やり刺すけど」
「……き、聞く」
脂汗に冷や汗までかき始めた緑は恐怖から逃げるように目を閉じた。
「クリよ」
「……まっ、待て待て待て! そんな神経が集まってる所に刺したら……ぃいいいいぃぃぃぃぃぎゃあああああああああああああっっっ!」
これまでに感じたどの激痛よりも酷い痛みが、密集した神経をズタズタに切り裂きながら脳にダイレクトに伝わってくる。
身体は暴れようと電気信号を送るが、その程度では外れないほど強固に手足は固められていた。注射自体はすぐに終わったが、緑には何分もの苦痛に感じたし、終わった後も痛みが長引いている。
手足が自由になっても、残る痛みに歯を食いしばり、両手で痛む陰部を抑えながらひたすらに泣いていた。
「うあああ……っ!」
「ペニスの発現はすぐに始まるから、痛みもじきに無くなるわ。最後にこれを飲んで」
「ぅっ……ぐっ……」
話を聞きながら弱々しく首を縦に振る。
暫く横になっていたものの、痛みも引いてきたところでそろそろと身体を起こし、小さなカプセルを水で流し込んだ。
「それにはDNAの定着を促す、簡易なナノロボットみたいな物が入っているわ」
「わ、分かった……もう、出ていって良いか」
「動けるなら、どうぞ」
「……ぃっ! ~っ!」
パンツを履いてみるが、注射した場所が擦れて痛む。なんとか耐えながらズボンまで履いたが、上手に歩けそうには無かった。
ドアをゆっくり開け、菜々の隣へクリトリスを痛めないように座る。
「……なに変な歩き方して。というか、さっき騒いでたけど何されたの」
「注射だ」
「注射? その程度で? あんた子供みたいなとこあんのね~」
「クリに注射針を打ち込まれる感覚をその程度と言えるなら、確かに子供みたいなのだろうな」
「……ごめん」
緑はそれ以上喋らない。おぞましい話を聞いて、菜々も黙りこくった。
(……段々痛くなくなってきたな)
異常な速度で消えつつある痛みに、何の疑問も持たず再度立ち上がってみる緑。多少痛みがあるも、歩くには支障ないレベルまで軽減されていた。
「菜々、もう大丈夫みたいだ。歩くぞ」
「えぇ~? また?」
「ならここにいるか?」
「付いていきます」
懸命な判断をした菜々は、歩けるようになった緑の肩を借りて、共に病室へと戻っていくのだった。
「誰がサラダよ! っていうか「な」が多いわよっ! イダダダ……」
ふざけた呼び出しが病院内を駆け巡る。基地に設置された全てのスピーカーから流れているのだろう。菜々と緑はベッドで寝ていたが、まず緑が目を覚まし、次いで「サラダ」の単語に反応した菜々が飛び起きた。
「……なんなんだ、一体」
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二人とも不機嫌そうに身を起こす。菜々は腰をさすりながら脚を布団の外に出したが、そこから動く気配が無い。
「立てるか?」
様子に気づいた緑が、半ば確信したように菜々に近づき、手を差し伸べた。
「……肩貸して」
緑が菜々の肩を持ち、頑張って病室を抜ける二人。ただ、一番の問題は、病室から研究室までの距離が長いという事だった。
「やあ、よく来てくれた!」
「荒獣研究室」と書かれた札を下げている部屋のドアを開けると、いつも通り五月蝿い八雲がペタペタとスリッパを鳴らしながら、部屋の奥から出迎えにくる。
蛍光灯の下で艶やかに光る数々のガラス器具類が見えるよりも、DNAの解析や何かの培養に使う高度で高価そうな機械が見えるよりも先に、八雲の声が飛んできた。
「ぜーっ、ぜーっ、やっと着いた……ちょっと、あのふざけた放送何なのよ! しかも呼び出しとか、見合う話じゃないとほんとに殺すわよ!?」
「ああ、私も菜々に同感だ。研究室などに呼び出して、何のつもりだ。坂場」
二人は怒りながら、近くにあったソファに腰を下ろす。臙脂色が腰を受け止め、菜々はようやく一息つけた。
「どうしてもやらないといけない事でね。できれば紅菜くんも参加して欲しかったんだけど……その様子じゃ無理みたいだねえ」
出迎えた時こそテンションが高かった八雲だが、非常に珍しいことに今は大人しい口調で話している。そのせいか二人には直感的に、良くない事だと分かった。
「……まず概要を説明しろ」
「うーん、概要か。まず、回収班の設置により荒獣の回収が進んでいる。同時にDNA解析もある程度進んだんだ。結果、ラットや犬にDNAを埋め込む事で、オリジナルに比べれば弱いが荒獣の性質を発現するようになった。これが問題その一。あまりにも素晴らしい話で、お偉いさんがたちまち食いついてきちゃった」
八雲は誇らしげに、ただやはり疲れた様子で説明を始める。
「……いいじゃないの」
「ここまでならね。次に、DNAを『メスの』動物に組み込んでみたんだ。それがこの娘」
八雲は、近くにおいてあった飼育箱を取り出し、二人の目の前に置く。中にいるラットは二人の姿を確認すると、電気を放出した。
青い光が空気を切り裂き、薄いプラスチックに当たって砕ける。それ以上の事はできないみたいだが、普通のラットとは明らかに違うという事が分かれば十分だろう。
「おお……これ凄いな」
「電鰐の能力ってわけね……あれ、立派なの付いてる。ちょっと坂場、これオスよ。間違えてる」
目の前の成果に驚いていた二人だが、親指ほどもあるペニスに気づいた菜々がオスだと思い込み指摘する。八雲は首を横に振った。
「正真正銘、その娘はメスだよ」
「は?」
「ラットにしては異様に立派なペニスが付いてるだろう? それこそがメスだった証拠さ」
「ちょ、ちょっと待て。じゃあ何だ。荒獣のDNAを組み込んだラット……いや、その動物は生えてくるのか!?」
「察しがいいね。正解だよ、三瓶くん」
疲れた様子で、頭を抱えながら二重丸を言い渡す八雲。心底驚いた様子で、ラットをもう一度まじまじと見る二人。それ以上は誰も、何も言えなかった。
静寂を切ったのは、別の女の声。
「人に能力を移植したい。でも移植すると生える。悩ましい問題よね」
ダウナーな印象を与える不思議な声の主に、緑と菜々の視線が釘付けになった。
「しっ……!」
「東雲咲希!」
坂場八雲と並ぶマッドサイエンティスト、東雲咲希。カールのかかった薄紫色のポニーテールは着込んだ白衣と対照的だ。八雲と同じく印象は最悪に近い。
「あんたが絡んでたのね!」
「どうりで、坂場の様子がおかしいと思った」
「そんな言い方しなくてもいいじゃない? 能力を高める方法を教えてあげようとしているのに」
咲希は特徴的な髪を揺らしながら、菜々の方へ近づいてくる。それだけなのに、どこか意地悪そうに眼鏡の奥の瞳がキラリと光った。
「ちょっ、こっちくんな!」
「どうして……?」
「普通得体の知れない注射針を持って近づいてこられたら嫌でしょ!」
「あら気づいてたのね。残念」
「シャレになら無いわ……」
今回は気づいて自己防衛できたからいいが、気づかなければ逃げることもできずに人体実験の材料にされていた菜々は恐怖に震える。
咲希の印象が悪い理由は、たった一つ。隙あらば人体実験を行おうとしてくるところだ。その牙にかけられた女性は数しれず……。まあ、誰も今のところ死んでいないのが救いだ。
「それで、何の用だ東雲……いや、お前が何をしたいかは大体分かった。やるならさっさとしろ」
「あらごめんなさい。つい、ね。話が分かっているなら、早いわ」
何がつい、よ。と菜々が顔をしかめた。
「まあ、やる前に一つ確認しておくよ、三瓶くん。……気づいているだろうけど、この実験は端的に言えば君に荒獣のDNAを打ち込み、特殊な能力を得る代わりに陰茎を生やすというものだ。つまり……君の純粋な女としての人生は、終わる」
「予想は付いていた」
「それでもいいのかい?」
「……」
少し難しそうな顔をして、一瞬迷ったかのように見えた緑。女ではなくふたなりとしての人生は、周りからどのように扱われるのか、色々と考えてしまう。
さてヒーローとして取り上げられるのか、はたまたふしだらで節操無しとして蔑まれるのか。いずれにせよ差別的な視線は避けようもない。
そもそも急すぎる話なのだ。いきなり、強くなれるがふたなりになります。その試験対象になってください、などと言われて誰が考え無しに快諾できるのか。
…………しかし、彼女はすぐに笑顔を取り戻した。いつもの不敵な笑みを。
「こういう仕事だ。元々奇異の目には晒され慣れている」
「……そうか。なら、もう一つ確認したい。DNAを打ち込んでから、陰茎の完全な発現までに要する期間は、人の場合一週間と見積もられてる。その間は出撃禁止。更に発情状態が続く。また発現した直後の陰茎はかなり敏感だ。君たちにとっては大きなウィークポイントになりかねない。そこで、快感に慣らすため更に一週間、出撃禁止命令が出る。計二週間の出撃停止と……紅菜くん」
八雲は話の途中でいきなり菜々の名前を呼ぶ。
「え? 私?」
「うん。快感に慣らす一週間は、紅菜くんがサポートしてあげてほしい」
「……ちょっ、ちょっと待ってよ! それってつまりアレをするってことでしょ!? なんで私なのよ!」
ヌいて差し上げろとの命令に驚く菜々。いつもやっている事となんら変わらないはずだが、心の準備が出来ていない状態でそういった話が出ることには流石にびっくりしたのだろう。
「なんとなく」
「今すぐ変えなさい」
「と、言いたいところだけど、紅菜くんの責め方が一番荒獣に似ているから頼んだ次第だ」
もちろん嘘だ。そんなもの調べた人はいないし、調べようも無い。それは菜々も分かっているが、そこまで言われてしまうと抵抗はし辛かった。
「何その、本当かどうかも分からない取ってつけたような理由……分かったわよ」
「菜々、そんなに嫌なら自分でするぞ……」
「い、嫌ってわけじゃないわよ……ちょっと驚いただけ。……まあいいわ、散々に泣かせてあげるから」
「ふ、楽しみにしている。……東雲、用意はできた」
「分かったわ。じゃあこっちに……」
心を決めた緑は、言われるがままに付いていく。重そうな扉一枚隔てた場所にある部屋に入った。
清潔そうな研究室とは反対に、コンクリートが剥き出しで明かりは小さな電灯が一つ。研究室にあった机の上にパソコンと何やら怪しい薬品が置いてあるが、それ以外は中央に医療用ベッドが一つあるのみ。
暗くて湿っぽく、何をやる気なのかよく分からない不気味な部屋だ。実際にはそうでも無いのに、カビ臭ささえ感じる。
緑は嫌な予感を抱えながら、中央のベッドに横たわった。
「痛いから暴れないように縛るわ。麻酔ができないから」
「麻酔無しか。まあいい」
両手両足を堅固に縛られ、横で咲希が薄黄色の液体を注射器に注入する作業を見て、目をつむる。
「じゃあ、覚悟してね」
「……っ」
極細の針が、太ももの付け根に入ってくる。左右に一回ずつ。痛みはすぐに去った。
「……これで終わりか?」
「いいえ。今度はもっと痛いから、でも我慢して」
「……い゛っ~!」
手足を固定されていなかったら、どこかしら大きく動いていただろう痛みが襲ってくる。陰唇そのものに針が侵入し、脂肪をかき分けて液体が入った。
「……お、終わりか……」
「まだよ」
「……まだあるのか?」
脂汗をかいた額が歪む。さっきのでも大声を上げそうなほど痛かったのに、まだ差し込むところがあるという。
「ええ。マウスピースはあるけど、くわえる? あまり意味は無いと思うけど」
「マウスピース……まて、そんなに痛いのか。どこに刺す気だ」
安易に受けない方が良かったかもしれないと、今更後悔の念が浮かぶ。
「聞く? 嫌と言っても、止められないから無理やり刺すけど」
「……き、聞く」
脂汗に冷や汗までかき始めた緑は恐怖から逃げるように目を閉じた。
「クリよ」
「……まっ、待て待て待て! そんな神経が集まってる所に刺したら……ぃいいいいぃぃぃぃぃぎゃあああああああああああああっっっ!」
これまでに感じたどの激痛よりも酷い痛みが、密集した神経をズタズタに切り裂きながら脳にダイレクトに伝わってくる。
身体は暴れようと電気信号を送るが、その程度では外れないほど強固に手足は固められていた。注射自体はすぐに終わったが、緑には何分もの苦痛に感じたし、終わった後も痛みが長引いている。
手足が自由になっても、残る痛みに歯を食いしばり、両手で痛む陰部を抑えながらひたすらに泣いていた。
「うあああ……っ!」
「ペニスの発現はすぐに始まるから、痛みもじきに無くなるわ。最後にこれを飲んで」
「ぅっ……ぐっ……」
話を聞きながら弱々しく首を縦に振る。
暫く横になっていたものの、痛みも引いてきたところでそろそろと身体を起こし、小さなカプセルを水で流し込んだ。
「それにはDNAの定着を促す、簡易なナノロボットみたいな物が入っているわ」
「わ、分かった……もう、出ていって良いか」
「動けるなら、どうぞ」
「……ぃっ! ~っ!」
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ドアをゆっくり開け、菜々の隣へクリトリスを痛めないように座る。
「……なに変な歩き方して。というか、さっき騒いでたけど何されたの」
「注射だ」
「注射? その程度で? あんた子供みたいなとこあんのね~」
「クリに注射針を打ち込まれる感覚をその程度と言えるなら、確かに子供みたいなのだろうな」
「……ごめん」
緑はそれ以上喋らない。おぞましい話を聞いて、菜々も黙りこくった。
(……段々痛くなくなってきたな)
異常な速度で消えつつある痛みに、何の疑問も持たず再度立ち上がってみる緑。多少痛みがあるも、歩くには支障ないレベルまで軽減されていた。
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