ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

文字の大きさ
39 / 120
ふたなりへの道

35体目 近づく男達

しおりを挟む
「ぅ……」

 緑は目を覚ましたが、周りが薄暗いためにどこにいるのか分からず、柔らかな布とスプリングの上で寝たまま数分間ぼんやりとしていた。

 だが動きの鈍かった脳が回り出し、突如として東雲咲希に負けた記憶が蘇ってくる。

「っ! そ、そうか私は……」

 予想もしていなかった相手に負けた屈辱。しかも記憶の最後に言っていた言葉は……。

「東雲が……旧四天王……だと」

 研究職に就いている東雲が猛者だと、誰が想像し得ただろうか。ある意味負けたことよりもショックが大きく呆然となる。

「もしかして私は大先輩に対して物凄く失礼な事を言ったのでは……やってしまった……」

「あら、起きたの」

「キャー!」

 背中側から声をかけられ、柄にもない声を出してソファから転がり落ちる。いつも自信家として振る舞う緑らしからぬ行動だが、東雲の性技はそれだけのインパクトがあった。

「お疲れ様です! 先輩!」

「? ……元気そうなら、いいわ」

「はい! この通り!」

「そろそろ、お昼の時間だから、帰った方が良いわよ」

「ありがとうございます! では、帰らせてただきます
 !」

 訓練生時代に散々叩き込まれた上下関係が、勝手に口と身体を動かす。敬礼からお辞儀、ドアの閉め方に至るまで、軍隊式にやってのけた。

「東雲……いや、東雲さんがそんな……でもあの人がヤバいのに変わりは無いし……ああそれでも知ってしまったからには敬わなければいけないのか……」

 規則と感情の狭間で揺れ動く緑。どうでもいいといえば
 どうでもいいのだが、頭の痛い問題であることは間違い無かった。




「ハイウルフを確認。20頭ほどの群れ」

 荒野と化した平地を幾頭もの荒獣が横断していく。ハイウルフは狼や犬に近い種類の荒獣だ。防御力、攻撃力共に高くはないが、機動力は荒獣中随一と言える。

 その機動力は現代兵器を持ってしても脅威だ。数百メートル離れたところから銃撃したが、高速で避けられまともに当らないまま接近されて食い殺された事例もある。

 さらに恐るべきは群れを作る習性だろう。人類からしてみれば、一度に数十頭が襲ってくるのだからたまったものではない。

 幸い車内にさえいれば安全なのだが、軍需工場と呼べるような物が殆どない現日本では大規模な機甲部隊を作るのは不可能であり、よって戦力の大半は生身の歩兵である。

『……HQ確認。間に合うように皇都へ向かえ。以上』

「……だとよ」

 遠くからハイウルフを見つめる三人の男達に、無茶な命令が下される。

 このまま皇都に向かえば確実に見つかる。かといって、群れが過ぎるのを待っていたら時間を食ってしまう。

「ヒトヒトマルサン(11:03)……突っ切る」

「人使いが荒いな」

「弾は温存する方向で行くぞ」

 男達は決死の覚悟でハイウルフの前に出ていった。このまま気付かれずに隠れられる場所まで移動できれば良いのだが、そう上手くはいかない。

「……来た」

 ハイウルフは男達を確認すると、弾かれるように走り出す。男達は銃弾を撃つことなく、その差は見る見る間に縮まっていく。

 獰猛な牙が男達の首を引きちぎろうとしたその時だった。

「突け!」

 目にも止まらぬ速さで銃を振りかざす男達。

 銃の先に取り付けられた銃剣がハイウルフの眉間を寸分違わず捉える。まるで重量物に殴り飛ばされたような音を立てて、剣先が突き刺さった。

 第一波の攻撃は一瞬で止められた。だが20頭の内3頭減っただけである。

 果敢に二波目が挑んでいく。対して男達の持つ銃は3kg近くあり、棒きれのように素早く振り回すことはできない。

 ……普通ならば。

 二波目も、全く同じ攻撃を受けて倒れる。勢いで突っ込んだ三波目も。

 九匹、約半数が眉間に銃剣を突き立てられ死んだ。時間にして三秒ほどである。残りは威嚇するように唸ったが、身体は男達から離れようとしている。

 その隙を見逃す男達ではなく、僅かに息を吐くと目にも留まらぬ速さで突っ込む。彼らの胸に打ち据えられた徽章(きしょう)が光っていた。


 第一空挺団という部隊がある。彼らの任務は空中機動作戦と言われる。空中から降下し、重要地点の確保や奇襲を主とする作戦だ。

 作戦の性格上、彼らは敵部隊のド真ん中に降下することさえある。また、戦車や装甲車などといった大型の装備を持ち込むのも不可能だ。

 つまり部隊としては非常に脆く遅いのに、最も危険な地で戦わねばならない事を意味する。

 彼らは弱い。火力も防御も機動力もない、無い無い尽くしの最弱の部隊。

 だからこそ、己を鍛える。

 鍛え上げた身体は対戦車ミサイルさえ振り回す事を可能にし、塹壕を即座に構築し、重装備を持って自由に走り回る事を許す。

 己が火力であり防御であり機動力である。

 故に、強い。

 彼らは精鋭無比の特殊部隊であり、最強。


「ヒトヒトマルヨン(11:04)、よし急ぐぞ」

 十数秒後、そこにはハイウルフ20頭の死体が転がっていた。



「……凄いな」

 無人機が映す彼らを見ていた恰幅の良い男は感嘆の言葉を漏らす。そして一安心したように、黒い椅子をギシリと軋ませた。

「これで一つ、戦力増強策が済むことになる。多少の戦力にはなるだろう。後はまあ、レモンくんと……できればあいつも戦力に数えられるようにして……防衛しつつ時が来るのを待つのみ、か」

 彼ができることは、あまりにも少ないように思えた。無精髭を指で撫で、自分を安心させるかのように固まりつつある計画を口にし、またモニターの動きに注目した。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...