ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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ふたなりへの道

36体目 近づく男達2

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「菜々~聞いてくれよ~。東雲さんがさー……」

「うわっ、何いきなり……」

 色々とショックの大きかった緑は、菜々の部屋に入っていくなりベッドに寝転がっている部屋の主に抱きついたのであった。


「はあ? じゃ、あの東雲が大先輩ってこと!?」

「ああ、そうだ……」

 緑から事の経緯を聞いた菜々はベッドから勢い良く飛び上がり、なぜかスマホを手に取り何か打ち始めた。

「はあー……そりゃ確かにコテンパンにされても仕方ないわね」

「仕方ないと思うなら『東雲に負けたって。だっさ(笑)』って書くな!」

「だってこう書いたら大ニュースの予感でしょ?」

「タチ悪いぞ……」

 緑はため息を吐き、脚を組んだままベッドに転がる。それから、まるで事前に待っていたかのようにほんの数秒で部屋のドアが開け放たれた。

「菜々ちーマジでマジで!? てか本人いるじゃん!」

「嬉しそうにしてるから奈津美は後で処刑する」

「東雲に負けた人に脅されても怖くないよーだ」

 何も知らない奈津美は緑のことを完全にバカにしている。その上わざわざ自分のお尻まで叩いてみせた。

「くっ……事の真相聞いたら驚くぞ……」

「ほう、では聞かせてもらおうか、緑」

「ふん、楽お前もか……聞いて驚くといい」

 全員が揃ったところで緑がネタバレする。否、しようとした。

「あのー、東雲さんに負けたからってとやかく言うのはどうかと……多分皆さん誰も勝てないんじゃないかなあ……」

 楽の後ろから現れたレモンが小さく手を挙げながら、意見を述べる。奈津美と楽はそれを聞いて固まった。

「……え、なんで?」

「ど、どういう事かな?」

「ええと、ですね。東雲さんは旧々四天王の一人です。正式に四天王制度が始まる前、皇都で最強と呼ばれた四人の内の一人。テクニック系で、媚薬や強化剤によるバフ・デバフを主とした戦い方をしていたようです。そのせいか、身体は完全に薬物中毒状態となってしまい、今は前線から引いて研究職に就いている……らしいです」

「……く、詳しいな」

 東雲など一切マークしていなかった緑が驚嘆する。それに対してレモンは短い説教をかました。

「むしろ気になったのなら調べるべきだと、私は思います。こんなに便利なモノがあるのに……私には理解しかねますね」

「あっすみません」

 ペシペシとXpadを手の上で遊ばせながら、レモンは自論を投げつける。

「そ、そうだったんだ……知らなかった~」

「僕もだよ。初めて聞いた」

「……と、言うことで奈津美?」

 緑はレモンがネタをバラし終わったところで組んでいる足を解き、奈津美に近づく。

「うぇっ!? なんでみどりん立ち上がってそんな怖い顔するの!?」

「処刑と言っただろう。バカにしたツケだ」

「わわ、悪かったよう! バカにしてごめんなさい!」

「……」

 別に緑が弱くなったのでも何でもないという事に気づいた奈津美が両手を合わせて謝った。その姿を前に許そうかと悩む緑。

 奈津美はそんな緑の姿に希望を抱いたのか、そろそろと片手を差し出してきた。

「ほ、ほら握手……仲直り……うう」

「……仕方ない。今回は許してやろう」

「やった!」

「とでも言うと思ったか!」

「きゃあああ!」

 パアッと顔を明るくしたが最後、大して反省してない事を見抜いた緑が奈津美の手を握ったまま自分の腕の中へ引きずり込み、奈津美の脇をくすぐり始めた。

「うぇひゃひゃひゃ! やめっ! やめっへっへへへへっ!」

「このっ! このっ! お前反省してるのか!?」

「してるからっ! してるからあひゃひゃひゃ!」

 もう奈津美が反省してようがしていまいが関係無く、くすぐりを続行する。罰と称したお遊びになっていた。

「あんまり暴れないでよー……楽、あんたは何やってるの」

「ええ? だってこれ新作ゲームでしょ? 僕持ってないからさ」

 菜々がホコリを向こうに飛ばす仕草をしながら、勝手にゲーム機を触り始める楽を注意する。その楽は、特に菜々を気にすること無くゲームを始めた。

「持ってないからって人のでやろうとするんじゃないわよ。私がまだやってないの」

「お、じゃあ協力プレイだ!」

「私に返すって考えは無いのね……はあ。まあ良いわ」

「ふふ、楽しみだな」

 白く光り、始まりを告げるゲーム画面。楽はそれを一瞥するとスタートボタンで映像をスキップした。しかしその瞬間菜々が怒り始める。こっちは本気だ。

「あーっ! オープニング飛ばした! なんで!?」

「え? このシリーズ大体同じだし」

「分かってないわね! 同じだとしてもあのオープニングを見てから世界観に浸るのが最高なの!」

「えー、面倒だなあ。チュートリアル終わってからで良いじゃないか」

「チュートリアル前に見なきゃなんの意味も無いわよ!」

 東雲の話が終わると、緑がベッドの上で奈津美をくすぐり、菜々はオープニングムービーをスキップした楽にムービーの大切さを説き始め、またたく間にどんちゃん騒ぎが始まってしまった。

 レモンだけはその様子を困り顔で静観する。

 暫くどんちゃん騒ぎは続いたが、ゲームのチュートリアルが終わった辺りで楽が話を切り出す。

「そういえば……」

「なによ」

「僕達直属の部隊が来るって噂知ってる?」

「えっなにそれ」

 フラリと切り出された話題。菜々は、なんでそんなに重要そうな話題を今頃出してくるのかという面持ちで楽を見つめる。

 そこにベッドの上で暴れていた二人が加わってくる。どうでもいい所で地獄耳を発揮したものだ。
 因みにレモンはもう知っているみたいで、雲が途切れ暖かくなり始めた窓際でゴロリと横になり幸せそうな表情を浮かべた。

「なんだと!?」

「直属!? それkwskくわしく!」

「聞いてたのかい? ……あくまで噂なんだけどさ、僕達が直接命令できる部隊が配属されるみたいなんだよ。この前ワイバーンがハーピーを操ってたっていう報告があったみたいで、同じ事があっても下位荒獣までなら対応しようって動きになったらしいんだ」

 楽はどこからか仕入れた情報をペラペラと話してしまった。もし機密情報だったら……というのは、自分から話す分にはあまり気にしないタイプのようだ。

 さてこの話に素早く反応したのは緑。というのもワイバーンがハーピーを操っていた(かもしれない)という報告をしたのは彼女一人なのだ。

「その報告したの私だ」

「アンタだったの!?」

「やるねえみどりん」

「……なるほど、緑のおかげで駒を持てる、って事かな?」

 緑は思いがけず視線を集めてしまい、鼻高々になってニヤける。

「ふふ、そう褒めなくてもいいぞ」

「あくまで噂だけどね」

「……」

「……どんまいダナ」

 一言余計だったせいで撃沈され、緑は肩を落とした。

「いやーでも配備されたら凄いね! うん凄いと思う!」

 一方奈津美は、緑の肩に手を添えて慰めつつも凄く嬉しそうに笑った。

「何そんな喜んでんのよ」

「だってさ、下位までって事は男の人達でしょ? きっと……迫り来る荒獣の波! 傷ついた私達! 絶体絶命のピンチ! その時! 戦車がド派手に駆けつける! ……みたいな」

 奈津美はもう意気揚々とし、自分の思い描く「直属部隊」の活躍を語り始める。

「いや私達に直接戦車は配備しないと思うわよ……」

 菜々が最もな考えを述べるが、奈津美は聞き入れない。

「もしくは!」

「無視すんなし」

「私達美少女に相応しいイケメンが! ピンチの時に駆けつけてくれる! そしてお姫様抱っこをしてくれながら、こういうのだ! 『頑張ったね、もう大丈夫だ。後は僕の腕の中でお休み、子猫ちゃん』! イヤー!」

「キャー! 憧れるわー! ……ってそんな都合いいやつがいるかー!」

 別にリアルの男は好きではないものの、菜々は乙女心全開で奈津美の妄想に乗っかった後ノリでツッこむ。そこで「デキる」と踏んだ奈津美が何故かエセ関西弁で返した。

「いるかもしれないやん?」

「いやいやおらへんおらへん」

「でもウチらそうやん?」

「お前除いてな」

「何私の部屋覗いとんねん。キッモ」

「そっちの覗きやないわ!」

「あっそうそうそれでね」

「いや無視すんなや」

「ああごめん、今日のお天気お姉さんがかっかっか噛んだ話やったっけ?」

「いやお前が噛みすぎやろ」

「そうそう噛むって言えばね奥さん……」

「いやもう何の話や。読者置いてかれとんねん」

「メメタァ!」

 いきなりかつ勝手に始まったコントに苦笑いしかできない楽とレモン。落ち込んでる自分を無理やり笑わせに来ている二人に耐えきれなくなって顔を隠しながら笑い出す緑。

 奈津美が調子に乗って今度はツッコミに回ろうとした瞬間だった。

 不意に廊下で鳴ったけたたましい電子音が壁を突き抜け部屋中に鳴り響く。

「警報!?」

「やばっ!」

「あうう……私は禁止命令出てるから行けないのよね……」

「私もだ。くそっ、呑気なものだな」

「わ、私も行けないです……」

 全員身体は反応するも、実際に戦場へ出られるのは楽と奈津美だけ。緑、菜々、レモンの三人は歯がゆそう足踏みする他無かった。

「三人は待機! 分かってると思うけどね」

「イケメンくん連れてくるから待ってろよー!」

 二人は颯爽と部屋を飛び出していき、後にはどことなく気まずい雰囲気が残る。

「大丈夫かしら」

「……大丈夫だろう。としか言えんな」

「でも心配です……」

 三人分の溜め息が部屋の中で交差した。




「……これで、終わりか」

 デイビーズの巨大な眼球から血濡れた銃剣が引き抜かれ、同時に男が周囲を確認する。

「ああ」

「いや、あっちにもいるぞ」

 別の男が相槌を打つが、更に別の方向を見ていた男が新たに現れたデイビーズを見つける。

「……ふむ」

「際限なく出てくるな。さりとてボーナスステージってとこか」

「言ってる場合では無さそうだな。ヒトフタニイニイ(12:22)、遅れるぞ」

 銃剣を振って血を飛ばした男が、左手首の裏側に付けた腕時計で時間を確認した。

「無視しろというのも無理な話だ」

「ならば突っ切るしかあるまいて」

 部下の意見が一致したのを見計らい、男は時計から目を離すと号令をかけた。攻撃の号令を。

「……では、全員息を吸ってー」

「すー」

「すー」

「吐いてー」

「はー」

「ふぅー」

「……ゴゥッ!」

「「ぅおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!」」

 獣のような雄叫び。

 合図と共に鍛え抜かれた筋肉が力を全開放し、脚が数度空転するほどの加速を持って走り出す。重量級の砲弾と化した三人の男が、先端に銃剣を構え突撃する。

 何者も止められぬ重撃は、道を塞ぐ荒獣を吹き飛ばして進み行く。
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