ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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地獄の黒狼

37体目 漆黒の烈狼

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『北にハイウルフの群れ50頭以上、東側から更に大きな群れ100頭以上。共に移動中、皇都中心に向かっている。訂正、北の群れはもっと大きい。100頭以上……中位、高位確認!』

 装甲車の中で乗り込んだハンター達が聞き耳を立てる。偵察ヘリであるスカウト1の報告は危機的状況を表していた。

『白狼が2、ヘルハウンドが1! 繰り返す、高位荒獣のヘルハウンドがいる!』

「ヘル……ハウンド……」

「そんな……」

 ヘルハウンド。その単語だけで、深い絶望感が車内に広まった。

「ヘルハウンドか……奈津美くんは戦ったことある?」

「うん、だけど共同撃破かな。それに単体だったし……」

「加えて中位が2か……厳しいな……」

 せめて菜々か緑のどちらかが出撃できる状況であれば。もしくはレモンの出撃が許されていたら、あるいは何とかなったかもしれない。

 だが、下位とは言えこれだけの数のハイウルフに中位と高位の組み合わせでは、自らを犠牲にしたとしても護るべき皇都を護りきれない。

 どうすればいいのか……頭をフル回転させるがどんな戦術を取っても勝ち目は薄そうだ。

(それでも……やるしか!)

 装甲車が止まり、後部ハッチが下に大きく開いた。差し込む光に目を瞑りながら素早く外に出る。出た瞬間目に入ってきたのは、総数112頭というそこにいる誰もが経験したことのない大軍勢。

 薄暗い車内で状況を聞いているのと、実際に目にするのでは圧倒感がまるで違う。無数のハイウルフもそうだが、一際目立つのはやはり高位荒獣のヘルハウンド。

 雪のように真っ白な毛並みを持つ白狼に囲まれたそれは、白狼より一回り大きく、猛々しく、そして常世の闇を彷彿させる毛皮は美しい程に真っ黒だ。

 思わず生唾を飲み込む。脚が震える。歯が音を立てる。通常30人のハンターを持ってして挑む相手に一人で立ち向かう。「勝てない」と本能が告げていた。

(そ……それでも……ここまで来て逃げられないよ!)

 自分が逃げればここのハンター達は総崩れになるだろう。恐怖を押し殺し、楽は軍勢の前に堂々と立つ。

「皆はハイウルフを相手にして! 僕と奈津美くんであの三匹をやる!」

「おっ、やる気だねえ。乗った」

「楽様!? 奈津美さん!?」

「そんな……あまりにも危険すぎます!」

「くぅ! ですが代替案が見つかりませんわ!」

 当然待ったをかける声が飛ぶが、楽はウィンクを飛ばしながら微笑んだ。

「心配しないで。僕を誰だと思っているんだい?」

 その言葉に自分の能力も乗せながら、仲間を鼓舞する。

「楽様……承知致しました! 全員、雑魚を引きつけろ!」

「分かりました!」

「了解ですわ!」

「皆いい顔してるよ……では、行こうか……!」

 楽が大きく一歩を踏み出す。ハイウルフの軍勢とハンターが相対する、その時。

「「「……ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおっっっ!」」」

「!?」

 人間とは思えない雄叫びを上げながら、三人の男達が路地裏から飛び出てくる。突然の襲撃に怒り狂うハイウルフを切り、殴り、弾き飛ばしながら群れの防御に大穴を開けていく。
 銃剣が鋭く眉間に突き刺さり、頭蓋骨を割り裂く。その後ろから飛び出し、男の横へ移動すると直角に方向を変えるハイウルフ。
 まずは攻撃手段の腕を潰そうと踏んだのだろう。鋭い牙が服を破り皮膚へと進むが、男は力を込めて受け止める。食いちぎることも抜くこともできなくなり、宙にぶら下がる犬の躯体。
 それを男は、腕を大きく振って地面に叩きつけた。アスファルトから受ける衝撃は頑丈な荒獣の骨を砕き内臓を破壊する。

「な、なんだいあれ……?」

「良く見えないけど、兵隊さん?」

「あんな人間いてたまるか」

 下位荒獣に関して言えば、自分達よりも銃砲を使用した方が圧倒的に効率がいい。
 今回ハイウルフを砲撃で消し飛ばさなかったのも、軍勢の進軍速度が早すぎて榴弾砲の用意が間に合わないと判断されたからだ。

 それでも、荒獣とは生身の人間がナイフ一本で相手取れるものでは無い。それは最早人間ではない。

「凄い……ハイウルフ相手に一歩も引かない……どころか無双してますわよ……」

「人じゃないよあれ」

 既存の認識と雰囲気をいい意味でぶち壊しながら、多数のハイウルフを行動不能にしていく。

 快進撃。だが、白狼には敵わない。

「てぇやっ!」

 一人が白狼の足にナイフを突き立てるが、分厚い毛皮に阻まれた。その足に腹を強く殴られる。

「ぅぐ!」

 反撃をくらい、宙を舞う。数十頭のハイウルフの上を飛び越え、楽達の目の前に落ちた。

 硬質な音を立てて男が激しく転がる。

「……ぁ」

「し、死んじゃった……」

「っ……」

 白狼が与えたダメージは、明らかに過剰。飛んだ距離からして即死。それも硬いアスファルトに叩きつけられている。表面に薄く生えたコケや雑草などクッションにならない。

 目の前で背を向け動かない男を見て、多大なショックを受ける。

「嘘……」

「ぃやあ……」

 もう二人の男も、包囲網をぶっちぎりながら倒れた男の元へ駆けつけた。

「いや、大変だなこの量は」

「全くだ。白狼相手だと何もできねえな」 

 一人死んだことなど意にも介さないような口ぶり。目線は相変わらずハイウルフへ向いている。

「もう一度しかけるぞ」

「削れ」

 何かに吹き飛ばされたかのような加速で走り出す。だが突っ込む先は左右に分かれ、真ん中がガラ空きになる。それ即ち、死んだ人間へ冒涜の牙が伸びることを指していた。

 ここぞとばかりに数頭のハイウルフが止めを刺す事と兼ねて死肉を漁ろうと前に飛び出す。牙は長く伸び、死体へと到達する。

 ………………寸前で牙は折られた。

 地面からナイフが飛び上がり、怪力を持って顎(あご)に突き刺したまま反転させる。脳天まで打ち上がる英知の牙。殺意に満ちた大車輪を受けて背中側から地面に落ちたハイウルフは、その瞬間にはもう息絶えていた。

 男はハイウルフを叩きつけながら起き上がり、一瞬で顎から抜いた刃を横に一閃、二頭の目を切りつける。視界を奪われた二頭は暗黒の中で襲い来る痛みに耐えかね勢いよく走りながらもがいてしまう。
 ハンターが避けてできた道に突っ込み、断末魔の踊りを宙に描いて首から固い地面に激突する。速度が仇となり、複雑骨折を負って絶命した。

 次いで男はナイフをソフトボールでもやっているかのように下から上へと手を振って投げ捨て、噛み付いてくる四頭目の上顎と下顎を掴むと上下方向に引き裂いた。

 最後、五頭目は投げつけられたナイフにより、四頭目よりも先に死んでいた。

 男はゆっくりと立ち上がり、首をコキコキと鳴らす。

「……ってえな、クソが」

 二、三度首を曲げて異常がないことを確認した後、不意に後ろを向いた。

「……」

「……」

 男は腰を抜かした楽を見下ろす。次いで、手を伸ばしながら一言。

「大丈夫ですか?」

「あ……はい……」

「四天王」と「空挺」初めての接触であった。
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