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少女達の守護者
54体目 少女と守護者の戯れ7
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焼肉屋で美味しい昼ご飯を取った後、一同は行き場所も決めずウロウロと歩き回っていた。
実は映画のチケットを取ってあると空挺三人衆が言うのだが、その上映まで時間がありどうしようかと迷っているのだ。
踊り場に設置されたマップの前であーでもないこーでもないとやっていた時、緑がとある文字を見つけこう言ったのであった。
「カッセルに行こう」
大きな窓ガラスから降り注ぐ陽の光が二人を照らす。周囲のざわめきは気にせず、黒髪の少女は手元のケーキをフォークで切り分け、紅髪の少女の口元に差し出した。
「はい、あーん」
「ちょ、ちょっと緑……」
「ダメだ。私が奢るんだからこれくらいしてもらわないとな」
「じゃあ自分で払うわよ……」
緑はケーキが出てくるや否や、菜々に「あーん」をやり始めた。なぜこんな辱めを強要しているのかというと……。
「それもダメだ。迷惑をかけた謝罪の意味も込めているのだから」
彼女なりのお詫びの気持ちらしい。
「私が嫌がってるのに謝罪になるっておかしくなぁい?」
「嫌なのか! ?」
「え゛っ、う……い、嫌じゃ……ない」
「それなら問題ないではないか! ほら、あーん」
「うぐぐぐぐ……あ、あー……むっ」
周りに知り合いも客もいるというのにイチャつく二人は、例え菜々が恥ずかしがっているとしても大変幸せそうに見える。
というか、菜々は菜々でまんざらでも無いようだ。嫌がってるかといえば、一切そんなことは無い。
緑と菜々が喧嘩し、すれ違った数日前、緑の買ってきたケーキ。その時は誰も食べずに捨ててしまったが、今度こそは菜々に食べてもらえている。
「予想はしてたけど、やっぱり菜々くんに食べさせるためかー」
「もし喧嘩したとしても、あれだけ真摯に謝られたら全て許してしまいそうですね」
「実際お二人の仲は前よりも深まっていると噂伝いに聞きますぞー。ていうか、みどりんまだ気にしてたんだ」
「単に、自分が食べたかったっていうのもあると思うけどね」
楽の言う通り、緑は菜々と自分、交互に食べるようにフォークを動かし続けている。
そんな仲睦まじい姿を横目で見ながら、男共は中々一人では入り辛い店の味を堪能していた。
「うめえっす」
「僧帽てめえはもう少しゆっくり食べろ」
「隊長が一番先に食い終わってるじゃないすか」
「俺のは小さいやつだからいいんだよ」
「けっ、小せえの選ぶとかアホくせえ。同じ値段なら断然こっちの大きい方だろうがよ」
「良太郎さん、味が違うのですよ、味が」
「生憎俺は腹に溜まる方が好きなんでな」
堪能していた(一部除く)。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
深々と頭を下げる店員を背に、後十分程で始まってしまう映画を見に足早になる。
三人衆が選んだのは最近人気の恋愛物。女性なら誰しもがキュンと胸を打たれる一シーンは何度もCMで繰り返し宣伝されている。
全員が席に着いた時にはCMが流れていたが、暫くするとホール天井のライトが光を急速に失い暗闇に包まれる。
全てが静かになった瞬間、映画が始まった。
初めての高校生活━━とある男との出会い━━しかしその人はなぜか家族から敵視されていて……。
昔から続く遺産相続の問題と過酷な社会環境が二人を引き裂き、顔を合わせることすらできなくなってしまう。
その最中に起きる事故。主人公の女の子は火災の起きたビルに閉じ込められてしまう。
「助けて……」
ガスを吸ってしまった女の子はその場に倒れ込み、脳裏に浮かんだ「あの人」の名前を呼ぶ。
その瞬間、恋した男が炎の中から飛び込んでくる。
人口呼吸の為のキス……だが、女の子にとっては周りを炎に囲まれているにも関わらず至福の一時。お陰で女の子は回復したが、炎はすぐそこまで迫ってきている。覚悟を決める二人……。
「……悪い」
「何……が?」
「初めてだったんだろ……キス」
「良いよ……だって私……幸せだもん。でも……ふふ、一回しかキス、できなかったね」
「……っ! ば、バカお前! 諦めるなよ! ……何度だってキスしてやる。だから……生きろ」
そう言って、男は女の子をお姫様抱っこして走り出す。熱さと煙で何度も気が遠くなりかけるが、最後は生還し、青空の下で本当のキスを交わす。
その後、周りの反対を押し切って二人は結ばれる……。
そこで映画は終わり。画面が暗くなり常夜灯のような電灯が点くと楽は持論を展開し始めた。
「……ちょっと重いんだけど、王道から外れてないし、緊張感があって良かったね。僕としては、あの火災が遺産相続で揉めていた側の起こした人為的な火災っていうのが、ちょっとバレバレすぎて面白くなかったかも。全体的には眠くならずに楽しめたよ。ね、レモン、君はどう思う……って、寝てるし」
そういえば、と楽は気づく。スタッフロールに入っても立ち上がる影がない事に。
緑、菜々、奈津美の性格からして、スタッフロールはまず見ない。刀也、僧帽、隼、良太郎も同じだろう。誠一郎だけは分からないが……。
「……」
ゆっくりと前に回って微弱な光の中顔を確かめる。果たして結果は……。
「全員かよ!」
分かってはいたが、色々悔しい楽であった。
実は映画のチケットを取ってあると空挺三人衆が言うのだが、その上映まで時間がありどうしようかと迷っているのだ。
踊り場に設置されたマップの前であーでもないこーでもないとやっていた時、緑がとある文字を見つけこう言ったのであった。
「カッセルに行こう」
大きな窓ガラスから降り注ぐ陽の光が二人を照らす。周囲のざわめきは気にせず、黒髪の少女は手元のケーキをフォークで切り分け、紅髪の少女の口元に差し出した。
「はい、あーん」
「ちょ、ちょっと緑……」
「ダメだ。私が奢るんだからこれくらいしてもらわないとな」
「じゃあ自分で払うわよ……」
緑はケーキが出てくるや否や、菜々に「あーん」をやり始めた。なぜこんな辱めを強要しているのかというと……。
「それもダメだ。迷惑をかけた謝罪の意味も込めているのだから」
彼女なりのお詫びの気持ちらしい。
「私が嫌がってるのに謝罪になるっておかしくなぁい?」
「嫌なのか! ?」
「え゛っ、う……い、嫌じゃ……ない」
「それなら問題ないではないか! ほら、あーん」
「うぐぐぐぐ……あ、あー……むっ」
周りに知り合いも客もいるというのにイチャつく二人は、例え菜々が恥ずかしがっているとしても大変幸せそうに見える。
というか、菜々は菜々でまんざらでも無いようだ。嫌がってるかといえば、一切そんなことは無い。
緑と菜々が喧嘩し、すれ違った数日前、緑の買ってきたケーキ。その時は誰も食べずに捨ててしまったが、今度こそは菜々に食べてもらえている。
「予想はしてたけど、やっぱり菜々くんに食べさせるためかー」
「もし喧嘩したとしても、あれだけ真摯に謝られたら全て許してしまいそうですね」
「実際お二人の仲は前よりも深まっていると噂伝いに聞きますぞー。ていうか、みどりんまだ気にしてたんだ」
「単に、自分が食べたかったっていうのもあると思うけどね」
楽の言う通り、緑は菜々と自分、交互に食べるようにフォークを動かし続けている。
そんな仲睦まじい姿を横目で見ながら、男共は中々一人では入り辛い店の味を堪能していた。
「うめえっす」
「僧帽てめえはもう少しゆっくり食べろ」
「隊長が一番先に食い終わってるじゃないすか」
「俺のは小さいやつだからいいんだよ」
「けっ、小せえの選ぶとかアホくせえ。同じ値段なら断然こっちの大きい方だろうがよ」
「良太郎さん、味が違うのですよ、味が」
「生憎俺は腹に溜まる方が好きなんでな」
堪能していた(一部除く)。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
深々と頭を下げる店員を背に、後十分程で始まってしまう映画を見に足早になる。
三人衆が選んだのは最近人気の恋愛物。女性なら誰しもがキュンと胸を打たれる一シーンは何度もCMで繰り返し宣伝されている。
全員が席に着いた時にはCMが流れていたが、暫くするとホール天井のライトが光を急速に失い暗闇に包まれる。
全てが静かになった瞬間、映画が始まった。
初めての高校生活━━とある男との出会い━━しかしその人はなぜか家族から敵視されていて……。
昔から続く遺産相続の問題と過酷な社会環境が二人を引き裂き、顔を合わせることすらできなくなってしまう。
その最中に起きる事故。主人公の女の子は火災の起きたビルに閉じ込められてしまう。
「助けて……」
ガスを吸ってしまった女の子はその場に倒れ込み、脳裏に浮かんだ「あの人」の名前を呼ぶ。
その瞬間、恋した男が炎の中から飛び込んでくる。
人口呼吸の為のキス……だが、女の子にとっては周りを炎に囲まれているにも関わらず至福の一時。お陰で女の子は回復したが、炎はすぐそこまで迫ってきている。覚悟を決める二人……。
「……悪い」
「何……が?」
「初めてだったんだろ……キス」
「良いよ……だって私……幸せだもん。でも……ふふ、一回しかキス、できなかったね」
「……っ! ば、バカお前! 諦めるなよ! ……何度だってキスしてやる。だから……生きろ」
そう言って、男は女の子をお姫様抱っこして走り出す。熱さと煙で何度も気が遠くなりかけるが、最後は生還し、青空の下で本当のキスを交わす。
その後、周りの反対を押し切って二人は結ばれる……。
そこで映画は終わり。画面が暗くなり常夜灯のような電灯が点くと楽は持論を展開し始めた。
「……ちょっと重いんだけど、王道から外れてないし、緊張感があって良かったね。僕としては、あの火災が遺産相続で揉めていた側の起こした人為的な火災っていうのが、ちょっとバレバレすぎて面白くなかったかも。全体的には眠くならずに楽しめたよ。ね、レモン、君はどう思う……って、寝てるし」
そういえば、と楽は気づく。スタッフロールに入っても立ち上がる影がない事に。
緑、菜々、奈津美の性格からして、スタッフロールはまず見ない。刀也、僧帽、隼、良太郎も同じだろう。誠一郎だけは分からないが……。
「……」
ゆっくりと前に回って微弱な光の中顔を確かめる。果たして結果は……。
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