ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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少女達の守護者

55体目 少女と守護者の戯れ8

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「ん~っ! 眠った眠った!」

「音楽が静かで眠りを邪魔されることもなかったしな」

「暗くなるとついだよねー!」

 大きく背伸びをし、欠伸をしつつ……。
 無数の埋め込み式ライトが照らす広々とした通路の手すりに寄りかかる三人を見て、楽は思わずため息を漏らした。

 なぜこの人たちは純粋に映画を楽しむようなことができないのだろう……と。

「はあ……」

「えへへへ……あの、楽様?」

 呆れたような諦めたような、そんな顔をする楽の隣でレモンは罰が悪そうに笑う。いつもは構うくらいする楽だが、この時ばかりは慰めも要らなかったようだ。

「何も言わないで、レモン」

「……はい」

 途中から熟睡していたのを何とも思っていない三人の楽しそうな声を聞いて、楽はもう一度頭をたれる。

 まあでも……男陣だって映画よりはこっちの方が楽しいだろう。彼らは今、彼女達の後ろでガチャガチャとレバーを操っていた。

「まだまだまだまだまだ! はいっそこ!」

「奥! もっと奥です!」

「ここだぁー!」

「だーっ!」

「隊長のばーかばーか!」

「うるっせえ!」

「ホントだな。貴様ら退いてろ。俺がやる」

「良太郎さん、それかなり難しいので無駄かと」

「ふん、俺を誰だと思っている。俺は最強のスナイパーだぞ? 左右のズレ、奥行き、ミリ単位で調整可能……ここだ! ……がああああっ!」

「ばーかじゃないですか?」

「今すっげえ普通にばーかって言われた! ばーかって言った方がばーかだばーか!」

「……緑、アンタ止めなさいよ」

「い、嫌だ」

 ゲームセンター入口で強そうな男達が五人もたむろして順番にUFOキャッチャーへ百円玉を投入しながら、「みんなのフレンズだよ! かーわいー!」とポップ書かれたサーバルキャットのぬいぐるみを取ろうと悪戦苦闘している。

 なぜこのような異様な光景になったのか……事の発端は緑がぬいぐるみを欲しがったからであった。男勢に詰め寄り、上目遣いで物欲しそうに「駄目……?」などと言ったからである。

 お陰で男達はUFOキャッチャーの中にあるデカいぬいぐるみのために既に数千円を投入し、それでもまだ取れないため戦闘を続けている。

 そして、大人気ない男達を見るのも飽きた、というか次第にヒートアップする彼らから離れたくなり、少女達はその場を離れようとしているところだ。

「私湾岸やってくる」

「僕は音ゲーかな」

「楽様付いていきます~!」

「……私もどっか行くわよ」

「そ、それも嫌だ……ああ待って……」

 必死にぬいぐるみを狙い続ける集団の中に取り残されるわけにはいかないと、緑までもがその場から離れてしまう。
 後にはぬいぐるみを取ろうとして失敗し、その度に絶叫する五人の男達が残された。

「うぉおおおおダメだあーーーー!」

「ちくしょうめえー!」

「来いよサーバル! 貧弱なアームなんて捨ててかかってこい!」

「ネタを人前で叫ぶのはやめろ貴様ら」

「こちらのアームはどうですか? いいアームでしょう? 余裕のすくい上げだ。モーターが違いますよ」

「誠一郎!?」

 男達はただ一人の女の子のわがままに答えるべく奮闘する。周りから変な目で見られているとは気づかずに。




 車の疎らな首都高速道を二台のスポーツカーが疾走する。
 奈津美がハンドルを握りしめ、真剣な顔で画面を凝視する。ギアを4速から5速へ……。道路の白い破線は繋がっているように見える。

 相手も負けてはいない。高速域での加速で巻き返してくる。後ろから追い上げてくるヘッドライトに冷や汗が吹き出す。

「あと……少し……」

 ゴールが見えた。相手との距離はほぼ無い。

 数秒で終着点が迫り、後ろへと吹き飛んでいった。

「よっし!」

 結果は僅差で奈津美の勝ち。お気に入りのミニクーパーSで60連勝を達成した。

「あんたこれ好きよねー」

 ガッツポーズをする奈津美の後ろで、菜々が興味無さそうに呟く。

「あったりまえじゃーん! ミニを好き放題走らせられるゲームなんてそうそうないよ! いやーでもNSXに勝てて良かったー!」

「NSX?」

 今度は緑が聞き慣れない言葉にハテナを飛ばす。

「ホンダのスポーツカーだよ。モーターアシスト搭載の、ミッドシップ500馬力エンジン。最高速度はGT-Rと同じく300kmを超えるね!」

 聞かれると奈津美は嬉々として車ウンチクを語り始める。が、知らない言葉ばかりで緑には何がなんやらといった感じだ。

「ほー。GT-Rが分からん」

「ウッソだろお前。……日産のスポーツカー。600馬力。量産車最高の加速性能を持つ車なのに……」

「ふーむ。別に、奈津美みたいに車が好きなわけではないからなあ……」

「自分の車も持ってないもんね……いつまでも支給品の商用車使ってないで、一台持ったら?お金はあるでしょ」

「そうは言ってもな……」

 車をホイホイ買うほどのお金は流石にない。この狭い皇都の中、使い所もないものを買う意味は無かった。

「ちぇー。つまんないのー。……菜々ちーは?」

「私も分かんないしいらないわよ。あの車が使えるんだからそれで良いでしょ。大体自家用車とかいつどこで使うのよ」

「むー、反論までされた。まっ、プロボ(※プロボックス)とアルトだけで満足してるサラダには一生、自分の車ってやつの魅力は分からないね」

「誰がサラダよっ!」

「いだだだっ! こめかみはダメえええ!」

 菜々と奈津美がいつものコントをやっていると、騒がしい喧騒に混じって遠くから優しげな音が流れてくる。

 緑がその音に誘われるように歩いていくと、楽がなにやらピアノを弾いているのが見えた。ピアノを模した筐体を使う音ゲーのようだ。レモンはその様子を心を奪われたように動かず見ている。

(……上手いなあ)

 緑もついつい、楽が一曲引き終わるまで見蕩れてしまった。

「凄いです楽様!」

「はは、照れるなあ。……どう?レモンも弾いてみる?」

「わっ、私ですか!?」

 主人と従者という関係ながら、その枠にははまらず楽しく話す二人。それをどことなく羨ましそうに見ていると、いつの間に来たのか菜々が不機嫌そうに耳元で囁いた。

「行くわよ」

「菜々!? お、おい……」

 菜々は緑の腕を掴んで強引に引っ張り歩く。なぜ怒っているのかは分からない。

 緑は困惑しつつも、抵抗はしなかった。連れて行かれるがままに歩く。そうして菜々が店の中を突っ切って足を止めた先は……。

「プリクラ?」

「ん」

 仏頂面でプリクラの中へと入っていく。

「撮るわよ」

「う、うむ……」

 カラッと音を立てて硬貨が投入口に吸い込まれる。すぐに楽しげな音楽とメニュー画面が現れ、菜々は素早くモードを選んだ。カメラが動き二人の顔を捉える。

 菜々は口をへに結んでいるし、緑は大分困惑していたが、シャッターが切られる数秒前から自然な笑顔を作っていく。

 一枚目、普通の仲良さそうな絵が撮れた。距離が離れすぎても近すぎてもいない。二人とも片手でピースしている。

「……次」

「うむ」

 二枚目はもう少し姿勢を変えて……緑としては、ふざける場面だったのだが、菜々はそんな緑を抑えて最初と代わり映えのしない姿勢を取った。

(これではつまらないではないか)

 密かに不満を持つ緑。しかし、三度目のシャッターの切られる寸前でそんな感情は吹き飛ばされた。
 何が起きたのかよく分からないままシャッター音を、ハッキリとしていてどこか曖昧な意識の中で聞く。

「ん……!?」

「はむ……ふぅ……」

 菜々が頭をグイと抑え、自分の存在を強調するようなキスをしてきたのだった。
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