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スピードガールズ
92体目 スピードガールズVR 3
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排気口から炎が噴出し、タイヤが地面を蹴りつけ、エンジンが限界へと突っ走る。
亜酸化窒素の精を受け、頂点へと達した。
「ここでニトロだと!?」
一気に加速した86は遠心力でカーブのアウトコースへ吹き飛び、エボXの横を通り過ぎていく。
完全に頭を抑えられたエボは前に出られず、その後のコーナーで置いていかれてしまった。
「抜いたな……だが、まだ前に三台いる。誠一郎はどこにいるんだ……?」
良太郎を抜いた事も冷静に流し、緑は前方に注意する。もうすぐ最後のカーブが終わる。終わってしまうのに、誠一郎の姿は見えない。
「……追いつけないのか?」
レースが始まって、初めて悔しそうな顔を見せた。
直線に入る。低馬力の車が不得意とする条件。もうずっと向こうへ走り去ってしまっている三台が見えるのみ。
(ニトロ! ……だが、これは流石に……いいや! 追いつく! 追い抜いてみせる!)
距離にして600mは離れている。ニトロの量は無限ではない上、最高速で負けているので抜かすのは不可能である。
だが、緑の戦意は衰えなかった。
鈴谷と楽がそれの存在に気がついたのは、ゴールまで2kmを切った時である。
(……なっ!?)
(……なんだ? これ……!?)
最高速へ加速していくと、あまりにも速い空気の流れによって二台の間には乱気流ができる。その影響で車同士が自然と離れるのだが、そうしてできた隙間に入ってくる者がいた。
「フェアレディ……」
「誠一郎さん……?」
いつからなのか、ハイパワーな二台に離されることなく後ろに張り付いていたようだ。
誠一郎は真ん中に車体をねじ込み、最後の加速勝負を仕掛けてきた。
暴れ馬が電子制御造りに食ってかかる。見た目は垢抜けたお嬢様だが、その走りは品性を感じさせない暴力性を持つ。
グラマーなその身体を大胆に揺らして周りを脅す。まるで視線を集めようと艶やかに。
三台が並ぶ。どの車も一歩も譲らない。巨乳を押し合うように、狭いコースで大きな隙間も開けず最高速で直進する。ゴールへと突っ込んでいく。
(ここが最後の……)
(カーブ。少しのミスが命取りになりますわ)
ゴール直前、小山のように小さく外側に出た二つのカーブがある。比較的緩やかだが、速度は落とさざるを得ない。
三台同時にブレーキを踏む。テールランプの残像が伸び、揺れる。横っ飛びに巨体が弾ける。
カーブは一瞬で過ぎ去った。後はもう、ゴールへ飛び込むだけ……。
三台の位置関係は変わらず、並走している。
再加速のためにアクセルが踏まれる。
その瞬間、三人同時に異様な気配を感じ取った。
(((!)))
猛烈に追い上げてくる一台の車。鷹のような車が、横に並ぶ。直線を吸い付き、なぞり上げてくる。
ニトロを吹き、エンジンを限界まで酷使しながらも最下位からトップ争いまで躍り出た。
緑の86GRMNである。
カーブを、ほとんど減速せずに曲がってきた……曲がれたのは運が良かったとしか言いようがない。
(エンジン、持ってくれ……)
許容限界を超えて赤熱したエンジンが86の全開を引き出す。
緑が三台を追い抜き先頭になる。置いていかれまいと三台が追い上げる。
86のニトロが切れる。加速が重くなる。四台が横並びになり、疾走する。
四台の女が、その美貌をたなびかせて絡み喰らい合う。勝利に向けた絶叫が周囲を震わせる。
ゴールはもう目と鼻の先。誰が一番になる。誰が……誰が……。
白と黒のチェックが後ろに飛び越えていった。レースが終わった。
誰が、一番だ。
音が消え去る。緊張の数秒が過ぎる。
はたして、結果は……。
「……ドロー?」
「引き分け」。その四文字が、四人に伝えられた結果であった。
結果が分かると、一気に周りの音が戻ってくる。緑はアクセルを抜き、車の動きは慣性に任せる事にした。
「……一位でないのは悲しいが、まあ悪くない……なんだ!?」
感傷に浸ろうとしたその時、86のエンジンが異常な音を立て始める。ハンマーで叩くような金属音。一瞬で大きくなり、そして……。
「ぐあっ……!」
エンジンが爆ぜた。黒い液体が飛び散る。黒煙が吹き上がる。
車が制御不能になり、スピンし、コース外へと向かって……。
緑と86は木に激突し、エンジンから火を吹き上げ焼失した。
亜酸化窒素の精を受け、頂点へと達した。
「ここでニトロだと!?」
一気に加速した86は遠心力でカーブのアウトコースへ吹き飛び、エボXの横を通り過ぎていく。
完全に頭を抑えられたエボは前に出られず、その後のコーナーで置いていかれてしまった。
「抜いたな……だが、まだ前に三台いる。誠一郎はどこにいるんだ……?」
良太郎を抜いた事も冷静に流し、緑は前方に注意する。もうすぐ最後のカーブが終わる。終わってしまうのに、誠一郎の姿は見えない。
「……追いつけないのか?」
レースが始まって、初めて悔しそうな顔を見せた。
直線に入る。低馬力の車が不得意とする条件。もうずっと向こうへ走り去ってしまっている三台が見えるのみ。
(ニトロ! ……だが、これは流石に……いいや! 追いつく! 追い抜いてみせる!)
距離にして600mは離れている。ニトロの量は無限ではない上、最高速で負けているので抜かすのは不可能である。
だが、緑の戦意は衰えなかった。
鈴谷と楽がそれの存在に気がついたのは、ゴールまで2kmを切った時である。
(……なっ!?)
(……なんだ? これ……!?)
最高速へ加速していくと、あまりにも速い空気の流れによって二台の間には乱気流ができる。その影響で車同士が自然と離れるのだが、そうしてできた隙間に入ってくる者がいた。
「フェアレディ……」
「誠一郎さん……?」
いつからなのか、ハイパワーな二台に離されることなく後ろに張り付いていたようだ。
誠一郎は真ん中に車体をねじ込み、最後の加速勝負を仕掛けてきた。
暴れ馬が電子制御造りに食ってかかる。見た目は垢抜けたお嬢様だが、その走りは品性を感じさせない暴力性を持つ。
グラマーなその身体を大胆に揺らして周りを脅す。まるで視線を集めようと艶やかに。
三台が並ぶ。どの車も一歩も譲らない。巨乳を押し合うように、狭いコースで大きな隙間も開けず最高速で直進する。ゴールへと突っ込んでいく。
(ここが最後の……)
(カーブ。少しのミスが命取りになりますわ)
ゴール直前、小山のように小さく外側に出た二つのカーブがある。比較的緩やかだが、速度は落とさざるを得ない。
三台同時にブレーキを踏む。テールランプの残像が伸び、揺れる。横っ飛びに巨体が弾ける。
カーブは一瞬で過ぎ去った。後はもう、ゴールへ飛び込むだけ……。
三台の位置関係は変わらず、並走している。
再加速のためにアクセルが踏まれる。
その瞬間、三人同時に異様な気配を感じ取った。
(((!)))
猛烈に追い上げてくる一台の車。鷹のような車が、横に並ぶ。直線を吸い付き、なぞり上げてくる。
ニトロを吹き、エンジンを限界まで酷使しながらも最下位からトップ争いまで躍り出た。
緑の86GRMNである。
カーブを、ほとんど減速せずに曲がってきた……曲がれたのは運が良かったとしか言いようがない。
(エンジン、持ってくれ……)
許容限界を超えて赤熱したエンジンが86の全開を引き出す。
緑が三台を追い抜き先頭になる。置いていかれまいと三台が追い上げる。
86のニトロが切れる。加速が重くなる。四台が横並びになり、疾走する。
四台の女が、その美貌をたなびかせて絡み喰らい合う。勝利に向けた絶叫が周囲を震わせる。
ゴールはもう目と鼻の先。誰が一番になる。誰が……誰が……。
白と黒のチェックが後ろに飛び越えていった。レースが終わった。
誰が、一番だ。
音が消え去る。緊張の数秒が過ぎる。
はたして、結果は……。
「……ドロー?」
「引き分け」。その四文字が、四人に伝えられた結果であった。
結果が分かると、一気に周りの音が戻ってくる。緑はアクセルを抜き、車の動きは慣性に任せる事にした。
「……一位でないのは悲しいが、まあ悪くない……なんだ!?」
感傷に浸ろうとしたその時、86のエンジンが異常な音を立て始める。ハンマーで叩くような金属音。一瞬で大きくなり、そして……。
「ぐあっ……!」
エンジンが爆ぜた。黒い液体が飛び散る。黒煙が吹き上がる。
車が制御不能になり、スピンし、コース外へと向かって……。
緑と86は木に激突し、エンジンから火を吹き上げ焼失した。
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