103 / 120
大洗港奪還作戦
94体目 スピードガールズSerious 2
しおりを挟む
地面の下から太陽の元へ出ていく。道路の両脇にちらほらと観衆がいる以外には、政府の広報やテレビ局、動画サイトのカメラが硝子の目を見開いているのみである。
その無機質なレンズの前をMCVが走り抜けていく。航空機用エンジンを搭載する暴挙が、装甲車にスポーツカー並の戦闘力を与えた。
立派な砲塔を空に向け、前進する。
「日本国軍は健在である」と、国民に世界に知らしめるために、巨大な唸り声をあげる。
その後ろに、日本のスーパーカーLFAが護衛を伴って続く。
スーパーカー。速く、美しく、スポーツカーよりも一段上の存在。
動力性能、空力、エンジン、駆動系、タイヤ、それら全てが高い次元でまとめられている。
さらに後ろ、八雲の乗ったS660が往く。
軽自動車でありながら、走りに全ステータスを振ったこの車の動きは軽快の一言。
重量配分とブレーキ径の大きさから来る制動力もトップクラスで、ギリギリまで加速し続けられる。
そして最後に、7台のスポーツカーが横一列に並んでカメラの前を通り抜けていった。
「……この視線は、なかなか悪くないな」
緑は自分の事を両サイドから見つめるカメラに対し、一種の優越感を感じていた。
自信家として、世界に映っているという認識は心地よいものに感じられるのだ。
「へいへーい! お楽しみのところ悪いんだけど、一先ず確認だよ!」
不意にナビの電源が点き経路が表示され、同時に西の声が飛び込んでくる。
「経路は表示されてる?」
「ああ、問題ない」
「オッケー。荒獣がいたり、道路が崩れてたりしたらそれも表示される予定だから、そのナビはしっかり見ておいてね。後は、目の前のHUDはどう?」
ハンドルの奥に設置された手のひら大のパネル。
その両端が薄緑色に光り、速度や車両の状態などが表示された。
「色々映っている」
「オッケーだね。この先高速道路に入るから、そこから加速していいよ! 具体的には上がっていくところからね」
「分かった」
「それじゃあ楽しんでねー」
忙しいのか、このハイテクに関して特に触れることも無く無線が切れた。
西はどうやら一人一人に直接確認しているらしく、隣の奈津美が口を動かしている様子が見える。
その時、前方を走っていたMCVがレシプロエンジンの音を豪快に吹き上げて坂を登り始めた。
先行し、障害を予め排除するという命を受けたMCVは、大重量高車高というおよそスポーティーな走りには向いていないガタイでありながら誰よりも先にいなくてはいけない。
そのためにLFAより三十秒も速く出発しているのだ。
追いかけたい気持ちを押さえ、スピードメーターが40前後を指すよう維持する。
続いてLFAが護衛と共に加速。鋭く上昇していく。
次にS660が。軽の面影もないエンジンを載せた事で軽々と登り終える。
近づく。高速道路の入口が。僅かに隆起し、そのままなだらかな坂になっているアスファルトの変化が。
前輪が盛り上がりに押され、サスペンションが衝撃を軽減して僅かな押上感だけを伝えてくる。
時速40kmの枷は外された。
まだるっこしそうにドロドロと音を立てていたエンジンのメーターが振り上がる。
咆哮とも、嬌声とも言えるエンジン音がくぐもって操縦席に充満する。
タイヤが悦ぶように短く鳴った。
左回りのカーブを駆け上がり、環状線の白線を踏む。
強化された獣達は悠々と100km/hを超え、直線を加速していった。
「MCVよりLFAへ。呉橋クリア、江戸橋クリア。……江戸橋ジャンクションクリア」
砲塔を高くあげてMCVが疾走しつつ、荒獣がいない事を逐一伝えている。
通常のMCVに比べ、ギリギリまで下げられた車高は安定したコーナリング性能を生んでいる。車体の幅がある事も幸いし、横転しそうな感じは少ない。
26tの車体は八輪のタイヤで支えられ横風にはビクともしないが、巨大な遠心力は僅かな旋回でも速度を落とさせた。
箱崎と呼ばれる区間に入る手前、緩やかにだが90度も曲がる場所がある。
大幅に速度を落とさざるを得ないが、速度を落としすぎるとLFAに追いつかれる。
(あまり使いたくは無いが……)
MCVの運転手は「スポーツモード」ボタンを押した。
即座に電子制御システムが駆動部へ積極的に介入する。
それまで歩調を完全に合わせていた八つのタイヤが、全て個別に動き始めた。
それぞれ別の生き物のように動いて路面をなぞる。
MCVがカーブに突っ込む。外側に膨らんでいく。センサーが過剰Gを感知し、制御をかける。
車体の移動方向を向いていたタイヤが一斉にカーブ内側を向いた。
ゴムの擦れる耳障りな音が響く。帯熱し、捻じれてなおも動きを伝える。
巨大な力がタイヤによって相殺されると、タイヤは車体と同じ向きに戻る。
外側に大きく膨らみクラッシュするはずだったMCVは、タイヤの向きを変える事で何事も無かったかのように高速走行を維持した。
その無機質なレンズの前をMCVが走り抜けていく。航空機用エンジンを搭載する暴挙が、装甲車にスポーツカー並の戦闘力を与えた。
立派な砲塔を空に向け、前進する。
「日本国軍は健在である」と、国民に世界に知らしめるために、巨大な唸り声をあげる。
その後ろに、日本のスーパーカーLFAが護衛を伴って続く。
スーパーカー。速く、美しく、スポーツカーよりも一段上の存在。
動力性能、空力、エンジン、駆動系、タイヤ、それら全てが高い次元でまとめられている。
さらに後ろ、八雲の乗ったS660が往く。
軽自動車でありながら、走りに全ステータスを振ったこの車の動きは軽快の一言。
重量配分とブレーキ径の大きさから来る制動力もトップクラスで、ギリギリまで加速し続けられる。
そして最後に、7台のスポーツカーが横一列に並んでカメラの前を通り抜けていった。
「……この視線は、なかなか悪くないな」
緑は自分の事を両サイドから見つめるカメラに対し、一種の優越感を感じていた。
自信家として、世界に映っているという認識は心地よいものに感じられるのだ。
「へいへーい! お楽しみのところ悪いんだけど、一先ず確認だよ!」
不意にナビの電源が点き経路が表示され、同時に西の声が飛び込んでくる。
「経路は表示されてる?」
「ああ、問題ない」
「オッケー。荒獣がいたり、道路が崩れてたりしたらそれも表示される予定だから、そのナビはしっかり見ておいてね。後は、目の前のHUDはどう?」
ハンドルの奥に設置された手のひら大のパネル。
その両端が薄緑色に光り、速度や車両の状態などが表示された。
「色々映っている」
「オッケーだね。この先高速道路に入るから、そこから加速していいよ! 具体的には上がっていくところからね」
「分かった」
「それじゃあ楽しんでねー」
忙しいのか、このハイテクに関して特に触れることも無く無線が切れた。
西はどうやら一人一人に直接確認しているらしく、隣の奈津美が口を動かしている様子が見える。
その時、前方を走っていたMCVがレシプロエンジンの音を豪快に吹き上げて坂を登り始めた。
先行し、障害を予め排除するという命を受けたMCVは、大重量高車高というおよそスポーティーな走りには向いていないガタイでありながら誰よりも先にいなくてはいけない。
そのためにLFAより三十秒も速く出発しているのだ。
追いかけたい気持ちを押さえ、スピードメーターが40前後を指すよう維持する。
続いてLFAが護衛と共に加速。鋭く上昇していく。
次にS660が。軽の面影もないエンジンを載せた事で軽々と登り終える。
近づく。高速道路の入口が。僅かに隆起し、そのままなだらかな坂になっているアスファルトの変化が。
前輪が盛り上がりに押され、サスペンションが衝撃を軽減して僅かな押上感だけを伝えてくる。
時速40kmの枷は外された。
まだるっこしそうにドロドロと音を立てていたエンジンのメーターが振り上がる。
咆哮とも、嬌声とも言えるエンジン音がくぐもって操縦席に充満する。
タイヤが悦ぶように短く鳴った。
左回りのカーブを駆け上がり、環状線の白線を踏む。
強化された獣達は悠々と100km/hを超え、直線を加速していった。
「MCVよりLFAへ。呉橋クリア、江戸橋クリア。……江戸橋ジャンクションクリア」
砲塔を高くあげてMCVが疾走しつつ、荒獣がいない事を逐一伝えている。
通常のMCVに比べ、ギリギリまで下げられた車高は安定したコーナリング性能を生んでいる。車体の幅がある事も幸いし、横転しそうな感じは少ない。
26tの車体は八輪のタイヤで支えられ横風にはビクともしないが、巨大な遠心力は僅かな旋回でも速度を落とさせた。
箱崎と呼ばれる区間に入る手前、緩やかにだが90度も曲がる場所がある。
大幅に速度を落とさざるを得ないが、速度を落としすぎるとLFAに追いつかれる。
(あまり使いたくは無いが……)
MCVの運転手は「スポーツモード」ボタンを押した。
即座に電子制御システムが駆動部へ積極的に介入する。
それまで歩調を完全に合わせていた八つのタイヤが、全て個別に動き始めた。
それぞれ別の生き物のように動いて路面をなぞる。
MCVがカーブに突っ込む。外側に膨らんでいく。センサーが過剰Gを感知し、制御をかける。
車体の移動方向を向いていたタイヤが一斉にカーブ内側を向いた。
ゴムの擦れる耳障りな音が響く。帯熱し、捻じれてなおも動きを伝える。
巨大な力がタイヤによって相殺されると、タイヤは車体と同じ向きに戻る。
外側に大きく膨らみクラッシュするはずだったMCVは、タイヤの向きを変える事で何事も無かったかのように高速走行を維持した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる