ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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大洗港奪還作戦

97体目 スピードガールズSerious 5

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「制御システムフル稼働なのに……」

 MCVの操縦手はナビに映る小さな矢印を見て驚愕した。

 自分では速く走っているつもりなのだが、後ろの護衛対象がどんどん差を詰めてくるのだ。

 具体的には、山の麓に入るまでに距離で1km以上離していたのにも関わらず、頂上に至る前に500mまで迫られてしまっている。

 道幅いっぱいに広がる車体では前を譲ることすらできない。何としてでもスーパーカーと同じ速度を出さなければならない。
 であれば、無数に搭載された機能をフルに活かさねばならない。

「……サブエンジン、始動」

 MCVの運転手はメインエンジンの下にある、それより一回り小さなボタンを押した。

 既にT56エンジンがフル回転しているのでほとんど聞こえないが、轟音に紛れて僅かにドルンという音が目覚めを主張した。

 MCV本来の、570馬力を生み出すエンジンの音である。T56エンジンを後付けしてもまだ残しておいたのだ。
 残した理由は幾つかあるのだが、ここで始動する意味は一つ。

 T56エンジンはターボプロップエンジンであるため、最大出力に優れるが応答性はイマイチ。
 それに対し本来のエンジンはディーゼルエンジンであるため、T56エンジンとは比べ物にならないほど応答性はいい。つまり低速時の加速が大幅に改善されるのだ。

 ただこれを動かすということはエンジンを二台動かしている事になるため、必然的に燃費が悪くなる。運転手があまり使いたがらなかったのはこのせいだ。

 さて、動かしてみた感触は……大正解のようだった。

 重たそうな車体がゆるりとカーブを曲がったと思えば、瞬間移動でもしたかのようにいつの間にか次のカーブへ移動している。
 ブレーキランプの赤が仄暗い山中に鮮明なラインを描く。

 これでもスーパーカーLFAと同程度の速さでしか無いのだが、追いつかれる心配は無くなり運転手は胸を撫で下ろすのだった。




「くっ……やられた!」

「まずは一台……」

 下りに入って更にペースを上げた緑が、カーブで再度NSXを追い抜く。
 山肌を素早くなぞる走りで鮮やかに速度を上げた。

 GT-Rはもう目の前。だが非常にもどかしいことに、ミスでもしてくれないと抜ける隙ができない。

 しかもタイヤを残していた後方集団が追い上げており、大型ゆえにペースの落ちた先頭集団と距離が詰まって団子状態になり始めていた。

『追いついたよ楽ちん、みどりん、すずやん!』

 後ろを見なくても誰だか分かる元気な声が無線を介して聞こえてくる。
 鈴谷は変な愛称に眉をしかめた。

『すずやん……?』

『あれ、すずちーの方が良かった? すずっちー? すずぴょん! すずみん! すずみょん! すずりん!』

『なんでも良いですけど、変なあだ名を付けて惑わそうとする作戦なら、今すぐやめた方がいいですわよ』

 奈津美は呆れたような声を無視する。

『すず……ベル……ベルスポーツ!』

『それはヘルメットの会社』

『ベル・エアクラフト!』

『それは航空機メーカー』

『キャサリン!』

『それは女優』

『じゃあ……』

『相手に考えさせて乱す作戦を立てるのではなく、まず自分がしっかりとハンドルを握った方がいいかと』

『ちっ。姑息こそくなマネは通用しないか……』

 鈴谷の忠告通り、奈津美は純粋なフリをしてくだらない作戦を考えていたらしい。
 しかし完全に見抜かれた上、暗に遅いとまで言われてしまう。負けを悟った奈津美は舌を出して攻撃をやめた。

 ただ、本当に純粋に楽しんでる面もあったのだろうが。

『自分で姑息って分かってるならやめなさいよ』

『勝負は勝ちゃあいいんだよ。どんな手を使ってでもな!』

『勝手にクラッシュしてればいいと思うよ』

『え!? あれ!? 私、八雲に毒吐かれた!?』

 走りもお喋りもハイテンションな後方集団。緑だけは彼女らを無視して目の前の車に集中し続ける。

(どこかで隙を見せるはずだ……どこで……)

 必死に抜かせる瞬間を探している時だった。ナビが気の抜けた音で曲がるべき場所が近い事を教える。
 全車両が左の道に逸れ、不動峠の三叉路に差し掛かった。

(……ここだ!)

 緑は不意に閃く。三叉路で、向きを大きく変えるために隙が生まれると踏んだのだ。

 GT-Rの丸い四つ目が赤々と光る。後輪を滑らせ、約180°の大回転をドリフトでヘアピンカーブを流す。

 そのGT-Rよりも更に速く、小さく、鮮烈に。白い車体のフロントに、パンダカラーの86がグイグイくい込んでいく。

 車体表面が触れ合わんとする至近距離で、つばぜり合って優位を取る。女と女がぶつかり合う。

(!)

(よし……)

 超高速の方向転換が終わった時、緑の86は鈴谷のGT-Rと並んでいた。

(上手いですわね……)

 やはり、センスがある。強い。呆気にとられるも、緑を認めた鈴谷はハンドルを握り直す。

 走る。頭上を覆う枝葉の密度が小さくなり、日の光が差し込み始める。目の前が白く光り、そして大きく開けた。

 山の中から幾台ものスポーツカーが目を光らせ飛び出してくる。煌々と照らされた車体は艶で光を反射し、一つ一つが巨大な宝石のように輝く。

 先頭に二台を置き、荒地を素早く駆ける。

 先頭の86が直線で僅かに押される。NSXが先頭争いの座を虎視眈々こしたんたんと狙う。エボXとジョンクーパーがS660を華麗に抜き去る。

 順位を変えながら、全ての車がフルーツラインへ突入した。道路の合流地点で数多のレッドラインが空間に引かれる。

 86がGT-Rよりも鼻を突き出す。その隙にNSXがGT-Rの横へ滑り込む。S660がエボXを抜き返し、ロードスターも追随する。

 目まぐるしく回るタイヤ、火を吹くマフラー、甲高く吼えるエンジン。地面をこれでもかと蹴りつけ、風を切って押しのける。

 彼女達は、北関東自動車道への道を進み始めた。




「ここからまた高速道路に入ります」

 三台のスポーツカーは、太陽の光を燦々さんさんと浴びて、肢体を滑らかに光らせた。
 西がそういった次の瞬間、LFAが急激に進行方向を変え、高速道路への道を駆け上がる。

「んぐう……うおっ、おおおおおっ!」

 陸佐はGのせいでカエルが潰れたような声を出した。

 無理もない。笠間西インターチェンジは高速に入る時と合流する時で方向が180°変わるのだ。ここを高速で駆け抜ければ凶悪なGがかかるのは当たり前。

 ぶつかっていると錯覚するほどに壁の至近を通りながら、高速道路に車体を乗せた。




 高速道路のすぐ上をC-2輸送機が掠め飛ぶ。速度を落とし機種を上げ、フラップを全開にして揚力を稼ぎながらMCVが自らに追いつくまで耐え忍ぶ。

 北関東自動車道が川と並行に走る、長い長い直線で、MCVの最高出力が発揮される瞬間を待つ。巨鳥が、悠々と低空に飛んでいる。

 トンネルを抜けたMCVは4100馬力をフルに使った怒涛の追い上げでC-2に易々と追いつき、抜き去っていく。
 その瞬間、貨物のパラシュートが展開し空気の塊に引っ張られた貨物はC-2から滑り落ちた。

 日の元に躍り出た黒塗りの高級車、センチュリーがアスファルト目掛けて落ちていく。

 だが、下に敷かれた木板が着地する寸前で剣が振るわれた。

「隊長!」

「やっちゃってください!」

「応!」

 刀也によってセンチュリーを木板に固定していた縄が全て断ち切られ、自由を得る。

 重厚とは程遠い獣の爆音を立てながら木板を蹴り飛ばし、アスファルトに着地した。
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