ランブルビースト ~獣が強くて人類滅亡の危機なのでビッチがセックスで戦います~【東京編】

扶桑のイーグル

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大洗港奪還作戦

98体目 スピードガールズSerious 6

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 七台のスポーツカーが、整備が行き届かず二箇所しか明かりのないトンネルの中に突入する。速すぎて、ドンという圧縮された空気の炸裂音が辺りに響いた。
 トンネル自体は一瞬で抜けきるが、ほんの少しでも暗闇に適応しようとした目には太陽の光が眩しく、ホワイトアウトする。

「っ……」

 全体の速度が落ちる、その一瞬を狙った者がいた。

「遅せぇよ」

「なにっ!?」

 緑が、抜かされる。

 超精密の狙撃を実現するためにありとあらゆる方法で鍛え上げられた良太郎の目が眩むことは無く、彼の乗るランエボは悠々と他の車を追い抜いた。

(トンネルの前では四番目にいたはず……三人も抜いたというのか!)

 驚愕。更に、緑にとっては悪い事に、道が緩やかなカーブから直線へと変わった途端、パワー級の二台が頭角を表す。
 猛々たけだけしい音を鳴らして波のような流線形を推し進める。車が、運転手を刺激する。もっと、もっとと。
 刺激は加速する。高揚が身体を突き破って殺してしまいそうなほどに。
 ホイールが霞んでいく。白線が連なる。自分達だけの世界へ突入していく。

 86では、GT-RとNSXの最高速度に勝てない。明らかなパワーの差を前に、順位を下げる緑。それどころかタイヤを温存していた最後尾組に追いつかれてしまう。

『おっと、緑選手ペースが落ちている。ここに来てペースダウンです。一体何が起きたのか!?』

『緑、追いついたわよ』

「く……ふ、ふん! すぐに一位は取り返してみせる。見ていろよ……」

 強がる緑だったが、首都高から常磐自動車道、筑波山、そしてこの今も全力で走り続けてしまったツケが回ってきていた。




(……? )

 鈴谷は友部ジャンクションに差し掛かった時、一抹の疑問を覚える。
 一対のタイヤ痕が、ジャンクションから北関東自動車道の右車線に向かって伸びている。誰もそんな所からは出てこないはずだ。

(私達とは関係ない車が、ここに滑り込んだ事が……? いいえ、この近くに居住区はありません。人はいない。では誰が……)

 と、そこまで考えて気づく。いつからだったろうか。

 一台いなかったことに。




(もうすぐだ……)

 緑は巻き返しの瞬間を狙っていた。もう無駄に焦るような事は無い。直線で抜かれたのなら、ジャンクションのキツいカーブで抜き返す。それだけだ。
 幸いにもカーブのおかげで前を走っていたパワー級車両に追いつきつつある。テクニックを駆使すれば……十分抜ける。

 水戸大洗ジャンクションを駆け下りる。GT-Rが、NSXが、エボXが急減速する隣を走り抜け、強烈なドリフトを目の前で見せつける。
 慣性で車が後ろへ進むほどに早く方向を切り替え、ネットリとした動きで横に移動する。そして、タイヤが再度路面を捉えると国道へ車体を一気に突っ込んだ。

(ふん、どうだ)

 啞然あぜんとする四名を尻目に白煙を引いた86は、51号線に乗って市街地へと突き進んでいく。

 逆に、抜かされた三台は闘志を燃やし猛烈な追い上げを始めるのだった。




 グン、と速度が落ちる。ひしゃげた信号にぶら下がった青看板に書かれた大洗高校北の文字。MCVとセンチュリーはその下をくぐり抜け、今まで進んでいた道とは反対の方向に降りていく。二つのカーブを経て、また右へ。ついさっき通った道の下を抜ける。

 前方には半球を描く霧が立ち込めているのが見える。その霧へ向けて涸沼川にエンジンの音を反射させ、落ちた速度を回復しようとしたその時であった。

 不意に右側を追い抜く四つの影。LFAと護衛、そしてZ34である。
 更に続いてもう七台。前の四台とほとんど間が空いてない。

 合計11台に追い抜かれてしまったMCVとセンチュリーであったが、抜かされきる頃には速度が回復し、追い上げようとしている。

 県道106号線大貫勘十掘通り、臨海鉄道大洗鹿島線と交差する直前で、13台全てが集結した。

 遮断機の取り払われた線路を跳ねて飛び越え、ゴールへと向かってただひたすらに加速していく。

 MCVがクーパーを抜く。カーブで減速したところをがクーパーが抜き返し、更にロードスターと並ぶ。そのいざこざの隙間をS660が通り抜ける。エボとNSXが並ぶ。GT-Rが緑の86に迫る。86はZと並び、抜かんとしている。
 逞しくもなめらかな車両達が乱交状態の加速勝負を繰り広げる。

 不意に、最後の熾烈な順位争いは加速勝負から減速勝負に変わる。

 前のWRX、RX-8、そしてLFAがブレーキをかけ、それを皮切りに赤色が次々と伝播でんぱする。

 クーパーは欧州車特有の強力なブレーキを持って重い車体に急制動をかける。ロードスター、S660、86は軽さを持って最後のチキンレースに挑む。エボ、Z、NSX、GT-Rもまた、優れたブレーキを駆使してトップを狙う。

 ここで一位に躍り出たのは……。

「やはりお前が来るか」

『86のブレーキ性能は高くないはずだけど、大丈夫?』

「そんな評価は海にでも投げ捨てておけ」

『私の事も忘れないでくださる?』

 緑の度胸で性能を引き出された86、国産車最高レベルのブレーキを装備するGT-R、最新鋭のブレーキを搭載したLFAの三台である。

 一歩も譲らぬ三台。だが、目の前には巨大な霧の壁が待ち受けている。
 少しでもブレーキングを間違えれば霧の中に突っ込んでしまう。それだけは何としても避け、しかし一位の座も狙う。

 勝利は誰の手に……。

「貰った!」

 ほんの僅かに、GT-Rが、続いてLFAがブレーキを強めた。緑の86が頭一つ抜ける。だが問題ない。緑には86がギリギリで止まることが手に取るように見えている。

 勝ちを確信した。霧がフロントガラスから見える視界の全面を覆い、だが86は確実に減速して……。

 あろう事か止まる前に、タイヤとブレーキを酷使し続けたツケが回ってくる。いきなり制動力が失われ、Gがすり抜ける。声を出す暇さえ無かった。

 緑と86は予定されていた停止線を超え、霧の中に消えた。
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