恋の駆け出し記念日 ~23歳の地味処女にやたら優しいイケメンは、誰よりも真面目なワケありプレイボーイでした~

生津直

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第2章 大輝にようこそ

23 喪失

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 大輝は悦子の覚悟を確かめるように表情を伺いながら薄いゴムを己の肉の上に伸ばしていく。眉間でチュッと音がし、大輝の唇がたった今触れたその部分に、悦子はいつしかぎゅっとしわを寄せていたことに気付いた。

「何が心配?」

と覗き込まれ、目を合わせられないまま唾だけを飲み込む。

「痛いんじゃないかって?。そうだね。まあ、ある程度は」

 そう言って装着を終えると、大輝は先ほどの続きに戻り、悦子の首筋を舐め回しながら潤った膣の中を指でたっぷりと探索した。悦子があまりの気持ちよさに不安を忘れかけた頃、大輝の手に押された膝が間近に迫った。あっと思う間もなく、両脚は犬や猫のように無防備なMを描いていた。どうにでもしてくださいといわんばかりのその体勢に、布団の中とはいえ世にも甘美な羞恥を覚えた。

 大輝が悦子から取り出した指をベロンと一舐めする。その光景に目を見張ると同時に、大輝の先端が入口を撫でるのを感じた。大輝は悦子の顔を覗き込みながら、

「ちょっとずつね」

と言い、侵入を開始した。意外と大丈夫かも、と悦子が気を緩めた瞬間、引き裂かれるような痛みが走る。思わず「いっ」と声を上げると、大輝はそこで一時停止して言った。

「痛いのは大体最初だけ。最後まで入っちゃえば、後は意外と大丈夫」」

(最後って……?)

 大輝は悦子の下腹部を広く撫でながら言った。

「この辺全部、力抜いて楽にして。あと、息止めないでね」

 そう言われて一度深呼吸する。次に大きく息を吸ったのに合わせて、さらにじりじりと押し込まれる感覚があった。我慢できず、悦子は獣のような呻き声を喉の奥から漏らした。

「痛いね。ごめんごめん。もうちょっとね」

 大輝は悦子の耳たぶを口に含むと、食べようとするかのように耳全体を熱心にしゃぶった。抑えた息遣いが耳の中では増幅されて聞こえる。温かい舌が這い回るのが心地よくてごまかされそうになったものの、体の奥底の痛みは確実にそこにあった。飴玉をしゃぶらされながら予防接種を受ける子供はこんな気分だろうか。

「よし、もう大丈夫」

と囁く声が聞こえ、頬にそっと唇が触れた。

(大丈夫じゃない。痛い……)

 痛い痛い痛い。目をつぶって耐えている間、頬や顎に何度も柔らかなキスが与えられた。すると、鋭い痛みがいつの間にか遠のき、奇妙な圧迫感だけが残った。

「よしよし、よく頑張った」

 大輝に見つめられ、視線を返す。しかし繋がっている部分に意識を向けると、視覚的な焦点はぼけてしまう。自分の体に大輝が含まれ、恥骨同士が触れ合っていることがいつまでたっても信じられなかった。じきに太腿の内側がきしむような感覚を覚え、眉を寄せる。

「大丈夫?」

「脚が……」

「あ、疲れた? ちょっと座ってみよっか」

 大輝は背中に載った布団を脇へよけ、悦子の首と腰を支えて抱き上げた。中の方に一瞬痛みが走り、大輝の太腿の上にまたがるような形になる。結合部を見下ろすと、大輝のペニスは根元まできっちり悦子の中に埋もれていた。ふと気付き、慌てて胸を隠そうとすると、そのまま抱き締められた。背中にそっと腕を回してみると、大輝の胸で自分の不格好な乳房が潰れるのが感じられた。

 そんなことより、何だろう、この温かさは。ここまで誰かを信頼し、身を委ねたことがかつてあったろうか。人の体温がこれほど温かいことを、この年まで知らずに生きてきたのだと初めて悟った。それを失いたくなくて、強く抱き締めた。返ってきたのは拒絶でも罵声ばせいでもなく、優しい抱擁だった。これが深い愛情でなければ一体何だというのだ。心が揺さぶられる思いがした。いつの間にか涙が溢れていた。

(もう何もいらない。これ以上何も……)

 深く吸い込んだ息がわずかに震えると、大輝がはっと身を反らしてこちらを覗き込んだ。

「大輝……」

 思わず呼びかけてすがりつくと、その腕にますます強く抱き締められた。
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