恋の駆け出し記念日 ~23歳の地味処女にやたら優しいイケメンは、誰よりも真面目なワケありプレイボーイでした~

生津直

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第3章 女たちの恋模様

34 ラウンドスリー

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「じゃあ、ちょっと運動してもらおうかな」

「えっ?」

「自分で動いてみるとさ、どの辺がいいのかわかるじゃん」

「ん、まあ……」

 しかし、大輝の竿さおを使い、その目の前で自分から絶頂に向かっていくというのはかなり恥ずかしい。

「俺も手伝うし。ほら、膝体重でこう……ぴょんぴょんしてみ」

 腰をつかむ大輝の手に促されるようにして、遠慮がちに上下動を生み出してみる。マットレスのスプリングがいい具合に弾んでちょっと楽しいが、結合部の気持ちよさはさほどでもなかった。

「そう、うまいじゃん。そんで、ちょっとずつこう動かしてくと……」

 大輝は悦子の腰でゆっくりと円を描かせ、前後左右に少しずつ上半身を倒させた。

「あ……っぁん」

「ほら、中で当たる場所変わるっしょ?」

 もしかしたら、これが俗に言う「開発」なのだろうか。大輝の手に支えられながら角度を変えていくと、腰をらし気味にして大輝にもたれかかるように体を前に倒したところで、これまでに経験のない新たな性感のツボが押されるのを感じた。普段自分の手で触れている場所とは明らかに違う感覚だ。大輝の首にかじり付き、そっとそのツボに圧を与える。頭頂部からピンク色のため息が漏れるような心地だった。

「見つけちゃったんじゃない?」

と囁かれると、せっかく見つけたものを二度と逃したくないという欲がぶわっと湧き上がった。すかさず、大輝の手が悦子の腰の前後運動を誘う。

「好きにしていいよ」

 その気前のよい言葉に、羞恥心を投げ捨てる思いでそっと腰を揺らしてみると、もう止めることはできなくなった。

「は……ぁ……っっ」

 ほどなくして客観的な視点は吹き飛び、悦子は己の悦楽への道を夢中で駆け上った。足腰が痛み出す頃にちょうど、時は訪れた。

「ぁあっっっ……!」

 脳内で真っ白な光が弾ける。悦子の意思とは別のところで、体がそれ自身を不自然によじっていた。全てが限界までねじり上げられるように縮んだかと思うと、凶暴な渦に巻き取られるような荒々しい浮遊感。放り出された上半身を、大輝がしっかりと受け止めてくれるのをかろうじて認識した。

 目に映るものが脳に届くようになるまでにしばしの時間を要した。中だの外だのという局所的な感覚以上に、全身が甘くしびれ、そのよろこびを目一杯謳歌していた。

 大輝の肩に頭を預け、呼吸が落ち着くのを待っていると、改めてぎゅうっと抱き締められた。抱き返す力は残っておらず、悦子は締まりのない笑みで応えた。頬にチュッとキスが落とされる。二度、三度。そして頬ずり。

「良かった?」

「ん……」

 ふふっ、と笑いがこぼれてしまう。大輝はそんな悦子の背中をゆっくりとさすり、しばらくそのまま休ませた。しかし、悦子が寝入ってしまいそうになると、ユサユサと振動を与えてそれを食い止める。

「んんー」

「ごめん、ちょっとお尻上げてもらっていい?」

 億劫おっくうではあったが、よっこらしょとお尻を持ち上げ、大輝の肩に体重を預けながら膝立ちになる。すると、悦子の中からプルンと大輝が吐き出された。

「あ……」

 中に閉じ込めたままだったことをすっかり忘れていた。今度はゴムの内側に白濁は見当たらない。大輝は「よっ」と立ち上がると、それを外してゴミ箱に捨て、キッチンに向かった。

「アイス食べる?」

「……うん」

「バニラとチョコがある。両方でもいいし」

「チョコ」

と端的に希望を述べながら、悦子は私も随分図々しくなったもんだ、と内心苦笑する。あの峰岸大輝に性欲を満たしてもらった挙げ句、あごで使うとは。

 二人で裸のままベッドに並んでアイスなんか食べていると、どうしても恋人気分になってしまう。心境は複雑だったが、体は正直だ。アイスを食べ終えて腰に手を回されると、疲れてはいるのに、もっと触れてほしいと肌が訴える。

 アイスに冷やされた舌を絡め合わせているうちに、ベッドに横たえられていた。イきたいという欲はさすがにもう落ち着いていたが、大輝そのものを求める気持ちに終わりはなかった。だから、先端を悦子の入口に当てがって

「ちょっとあっためてほしいな」

などと囁く大輝を、拒む気などこれっぽっちも起きない。微笑んでうなずくと、大輝がベッドの下の引き出しを開け、コンドームの他に何やら小瓶を取り出した。

「これ使っていい?」

 なるほど、噂に聞く専用の潤滑ジェルだろう。

「うん」

 大輝はまず手早くゴムを身に着け、ジェルを手に垂らすと、両手で挟んで、何かを念じでもするようにしばしくうを見つめてそのままじっとしていた。やがて悦子の割れ目に少量が与えられ、残りはゴムの上に塗りたくられた。

 ぼうっとそれを眺めていると、大輝は速やかに侵入してきた。そのまま脚をひょいと肩に担がれると、奥の方が押される感覚があった。そこへさらに、じわじわと体重が載せられる。

「はうっ……」

 先ほどよりは格段に鈍い、しかしこれはこれで不思議にエロティックな快感だった。悦子の粘膜はさすがに摩擦には疲れていたが、大輝は巧みに腰ごと横にゆすり、悦子は時々思い出したように緩やかに達し続けた。エクスタシーの最中になお、大輝の姿を、匂いを、手触りを、味を、感じ取れることがただただ驚異だった。人体にこんなことが可能だとは、これまで誰も教えてはくれなかった。

 結局、悦子は大輝との結合がほどけた記憶のないまま、深い眠りに落ちていた。翌日は一日中、あくびを噛み殺し続けたことは言うまでもない。

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