百鬼怪異夜行

葛葉幸一

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第二十八夜 道祖神─ドウソジン─

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 僕の家から歩いて5分。
 区境にあった小さな石の塔。
 ここに来たばかりのことを思いだす。

 大学に入学するにあたって初めて一人暮らしすることになり、その土地を歩いていた。
 僕のように視えたり憑かれたりしやすい人間にとって、近所の悪い気が溜まる場所、逆に良い気が溜まる場所は覚えておかないと命取りになる場合もある。
 その時にこの小さな石の塔を見かけた。
 朽ちかけて今にも壊れそうだが、それでも立派に町を守る道祖神だ。
 僕はなんとなくこの道祖神が気に入り、この町に住むことにした。
 しかし、どんなに気に入ろうが神様がいようが、どうしても怪異は起こる。
 大きな国道と交差する辻道。
 ここは死亡事故が多発するエリアな癖に、未だに歩道もない上に通学路という最悪な場所だ。
 ただでさえ辻道や丁字路は、昔から悪いことが起こるといわれているのに。
 その日の朝も交通事故があったらしい。
 救急車の音を聞きながら大学へ向かう僕の目に、道祖神が映る。
 もしこの道祖神がなければ、この町はもっと悲惨な事故が起こる忌み地となっていたかも知れない。
 
 祖父曰く。
 神道の神だろうが仏教の仏だろうが、人が崇める限りやるこたぁ同じだ。
 お地蔵さん、道祖神、賽の神、寺社仏閣。
 人を守るためにあるのさ。
 しかし、小さくて信仰の少ない神や菩薩なんて大きな力はない。
 それでも守ろうとしちまうんだ。
 生まれ持っての性ってヤツだ。

 僕の目に映る道祖神。
 どう見ても皆に忘れられ、たいした力なんかなくなって、それでも町を守ろうとする神。
 気になって道祖神に近づくと、その欠片が光っている。
 たとえ欠片だろうが破片だろうが、この石の一部である以上神性は宿る。
 この石の欠片をあの交差転に持っていけば、少しは事故が減るのか。
 でも僕は戸惑う。そんな力がこの道祖神に残ってるとは思えない。
 (生まれ持っての性)
 僕の体は勝手に動き出し、欠片をもって、交差点に向かう。
 途中にある神社から幣を拝借し(真似しないでください)交差点の吉方に幣、丑寅の方角に石の欠片を置いた。

 一時期。確かに事故は減った。
 でも。
 力を使い果たした道祖神は消えた。
 台風で壊れてしまい、危ないからと撤去されてしまったのだ。
 誰にも感謝されないままその役目を終えた神は、それでも満足なのだろうか。
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