神万の方術師 

一ノ瀬はらら

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おかしな隣人

おかしな隣人3

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神万中学校の一年三組の教室。
ミヤビは窓際の一番後ろの席に座っている。

毎日、朝の教室はガヤガヤと賑やかだ。
ミヤビはあまり学校が好きではない。

(だって学校って、んだもん)

実は、ミヤビは“霊感”少女。
小さい頃から他の人に見えないものが見えたり聞いたりすることが出来る。
そのせいで人から気味悪がられることもしばしば。

(この前だって……)

下校中のこと。

その道の途中には名の知られた武将の“首塚”がある有名な心霊スポットがあった。
首塚というのは昔に戦場で討ち取られた敵将や捕虜ほりょ、それか処刑された罪人の首を埋葬まいそうしたお墓のこと。

夕方、そこを通るとそこに埋葬された人達に頭を取られてしまうらしい。

いつもその道を通るのは嫌だったけれど、家に帰る一番の近道だったの。
いつも人気がなく、おまけに一本道。
その日もミヤビは何か起こる気がしてならなかった。


赤い日が差す道をカバンを握りしめ、一人歩いていると

目の前、というか一本道のずっと向こうに“何か”がいることに気がついた。

よろい…赤く染まった鎧が道の向こうに仁王立ちで立っている。
手に持つのは…日本刀。
その刃先からは赤い液体がポタポタとしたたり落ちている。
しかも目の前の鎧には……頭の部分がなかった。

「……ひっ」

思わず叫びそうになったミヤビだったが、とっさに口を押さえた。
側にあった塚の後ろに影を潜め、首なし鎧が通り過ぎるのを待つ。
ガシャンガシャンと音を立てて首なし鎧は過ぎ去っていく。

(もう聞こえなくなった……?)

その時だった。
自分の足元に何かが転がっているのに気づいた。

「よォこせェ、貴様のかしら、我によこせェ」

そう言葉を発するのは、かぶとを被った、生首。さっきの鎧の頭の部分かもしれない。
真っ赤に充血した目を目をカッと見開き、恐ろしい形相でミヤビを 凝視ぎょうしする。

「うわあっ」
(ど、どういうこと?!)

思わず後退りをすると背中にガシャンと何かがぶつかった。

(こ、この音は…)

「覚悟ォ」

首なし鎧の持つ刀がビュンっと振り下ろされる。
ミヤビは反射的にそれを避けていた。
よろけるように立ち上がり、必死で逃げる。

(何あれ、何あれ…!)

ガシャンガシャンと不気味な音を立てて、首なし鎧はすごいスピードで追いかけてくる。

(嫌だ嫌だ、怖い!)

どさっと気の幹につまづいてしまった。刀は容赦なく振り下ろされる。
ミヤビが思わず目をつむったとき、首なし鎧はぴたりといきなり動きを止めた。
ミヤビが恐る恐る目を開くと、首なし鎧はすでにいなくなっていて、同じ景色に戻っていた。

あの日からその道は一回も通ってない。

多分、まだこの世に思い残したことがある、首を切られた昔の侍の幽霊だったのだろう。
いつも追いかけてきたり、話しかけてきたりするけれど、危害を加えてくるということはないのだ。

学校にいる時もそう。
先生に呼ばれたのかと思って返事をしたら実は幽霊の声だったり、教室の中に見たことがない子がいたり。
おかげさまで“変な子”認定をされてしまった。

最近は前より多くそういうのを見てしまう気がする。

(本当に迷惑…)

「ミヤビちゃんおはよう」

頭を抱えるミヤビに隣の二組の美少女、咲耶さくやが声をかける。
ふんわりと巻かれた亜麻色の長い髪。白い肌に大きな瞳。まるで桜の精のよう。
女子のミヤビが見ても、可愛いなと思う女の子。
しかし人と喋るのがどうも苦手らしく、こうして唯一話せるミヤビを訪ねてよく二組からやってくる。

「おはよう咲耶ちゃん。」

咲耶はミヤビの机の前でしゃがみ込む。
咲耶の顔の位置がミヤビの顔と同じ位置に来た。

「ね、聞いた?転校生が来るんだって…!」
「転校生?」
(そういえばさっきからその話があちこちから聞こえてくるな…)

わりと田舎に近いといえる神万中学校に転校生が来るのは珍しい。

「男の子らしいよ、しかもすごくかっこいいの。さっきクラスの女の子達が校門から入るのを見たって…!」
「へー」
「何その声~。相変わらず興味なさそうですね~」
サクヤは拗ねたように頬を膨らませる。
「興味ないっていうか」
(転校生の子は私みたいなおとなしい子とじゃなくて、きっとクラスの明るい子と仲良くなりたいだろうし)

「じゃあ、私教室に戻るね」
「うん」

チャイムが鳴り、皆が席につく。
教室内は転校生はどんな容姿をしてるのか、どんな性格なのかという話題で持ちきりだ。
そんな中、ミヤビは、今日の朝の出来事を考えながらぼんやりと外をながめていた。
(あ、そういえば朝のあの子はどうなったのかな…。せめて名前だけでも聞いとけばよかった。)

その時ガラガラと教室の扉が開き、担任の先生が入ってきた。

「皆さんおはようございます。今日は転校生を皆さんに紹介したいと思います。」

転校生が入ってきたようだ。
女子達が嬉しそうな、男子達が期待の歓声を上げる。
ミヤビは相変わらず興味がなさそうに窓の外を見つめている。

「じゃあ、自己紹介をお願いします」

転校生はスッと息を吸う。 

「はじめましてー!東京から来ましたしばたけるです!好きな食べ物は餅、好きなことはホラー系の映画を観ることと喋ること!よろしくお願いしまーす!」

まるでメガホンを使って出したみたいなあまりにも大きな声で言うので、ぼーっとしていたミヤビも思わずその男の子を見ずにはいられなかった。
皆、一瞬きょとんとしていたけれど、すぐに大きな拍手が起こった。

一方のミヤビはそれどころではない。 

(あの転校生、あの転校生って……)

「あ、今朝は朝ごはんごちそうさまでしたー!」

ミヤビの姿に気づいたニコニコと転校生、建はミヤビにぶんぶん手を振る。
教室中の視線という視線がミヤビに集まる。
なんであの子が、という女子の視線がグサグサと突き刺さってきて痛い。

「あ、あはは」
(あの転校生、危険だ!)
苦笑いをしながらもミヤビはあの転校生にはなるべく近づかないでおこうと密かに決めたのだった。
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