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第一学期
保健室
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昼食時。いつもと変わらず、教室でお婆ちゃんが作ってくれた弁当を食べている。食堂で学食を食べる生徒も多いから、この時間の教室は比較的空いているんだけど、今日はいつも以上にガラガラだ。清盛達もいないし、食堂のメニューが良いのかもしれない。清盛達のいないこの時間は、本当に幸せな時間だ。しっかり味わいながら食べられる。
そんなことを思っていると、廊下から怖い顔をした月城さんが入ってきて、こちらにズカズカと向かってきた。そして、僕の腕を思いっきり掴んだ。
「痛っ」
「顔見せろ」と言いながら強引に引っ張られ、至近距離で顔をまじまじと見られた。いきなりのことでどういう状況なのか理解できず戸惑っていると「その傷、俺がやったのか?」と尋ねてきた。
「えっ、あぁ、これ? あぁ、まぁ、はい。でも…」
「付いてこい。」
そう言うと強く腕を引っ張ってきたものだから「やめてください。どこに連れてく気ですか」と抵抗すると「保健室だ」と意外な答えが返ってきた。
「保健室…?」
「さっき一輝から聞いた。今朝俺が打ったって。」
「え? あぁ、あのピンクの子。」
「酷く叱られたんだよ。殴った記憶なんてねんだけど。」
? そうか。寝てる時に触られたから、その手を振り払っただけで、殴ったつもりも、殴るつもりもなかったんだ。僕も意図的に殴られたと思ってたけど、たまたま当たってしまっただけ、か。ふふ、そう思ったらなんだか笑えてきた。
「ん?何笑ってんだよ気持ち悪ぃな。」
「ううん、ごめん。何でもないよ。この傷は大丈夫ですから。」
「でも一輝が連れてけって。」
「僕が大丈夫って言ったら大丈夫ですから。」
「いや、けど…。」
「もしかして、罪悪感感じてます?」
「は? んだよ、からかってんのか?」
「いえ、そういう訳では…。」
「グダグダ言ってねぇで早く行くぞ。」
「そんなに連れていきたいのなら少し待ってくれませんか?先にお弁当食べちゃいますね。大切なお弁当なんです。」
そういうと彼は清盛の席に座って足を組み、肘を付き、ゆらゆらと足を揺らせながら大人しく(?)待ってくれた。チラチラと僕の方を見てくるので「食べますか?」と聞くと「いらない」と答えた。「食べたいですか?」と聞くと「いらねーって言ってんだろ」と不機嫌そうに答える姿が、想像通りで面白かった。しばらくの沈黙が続いたあと「絆創膏、なんで貼らねぇの?」と聞いてきた。
「一輝がお前に絆創膏渡したって言ってたけど。」
「あぁ…。せっかくもらったのに申し訳ないけど、顔に貼ると余計に目立ってからかわれそうだから。」
「からかわれるって、誰にだよ。」
「皆に……ですかね。」
「ふーん。変なの。」
「あはは…。」
そうだよね。たぶん、きっとこれが普通の反応なんだ。絆創膏を貼ってたって特にからかわれない。逆に「どうしたの?」「大丈夫?」って心配されるのかな。でも、僕は違うから。とても残念だけど。
その後、弁当を片付けたことを確認すると「行くぞ」と言い僕の手首を引いて保健室へと足を進めた。ん? この手はなんだろう? 逃げるとでも思っているのだろうか? そんなつもりなんてないのに。しかし、さすが人気モデルだな。廊下を歩いているだけでたくさんの視線を感じる。そんな中、堂々と歩けるなんて凄いなぁ。僕はすかさず顔を隠すように下を向いた。握られた手首に違和感を感じながらも、気を逸らすように彼の背中に質問をしてみた。
「一輝さんは、弟なんですか?」
「あ? ちげーよ。ただの幼馴染。」
淡々とした返事。
「でもゆえ兄ちゃんって。」
「昔から兄弟みたいに過ごしてきただけ。」
そうなんだ。なんだか羨ましいな。
「一輝さん、優しそうな方ですね。」
「あぁ。」
……。
「一輝さんは2年生ですか?」
「1年。」
…。
「一輝さんとは一緒に住んでるんですか?」
「住んでねーよ。」
「でも今朝鞄を間違えたって。」
「朝方まで同じ現場で撮影しててそのまま一緒に車で…ってお前さっきから一輝のことばっかじゃね? アイツの情報聞き出したいならアイツに直接聞いてこい俺を都合よく使うんじゃねぇズル野郎! 俺は今、考え事で忙しいんだ!」
と言いながら振り向くと、ずっと手首を握っていたことに気付いたようで、サッと握ってきた手を振り払い気まづそうにしていた。
「やっと気付きました? みんなに見られてましたよ。いいんですか? 変な噂になっても知りませんからね。」
「噂? 噂なんかどうだっていいよ。」
「僕が困ります!」
「それよりよ…」
「それより?」
「保健室ってどこだ?」
「…………。」
「え?」
まさかの一言に驚きを隠せなかった。まさか考え事って……。このあと「代わりに案内しろ」と偉そうなことを言われ、僕が先導したのであった。勝手な人だなあ。
そんなことを思っていると、廊下から怖い顔をした月城さんが入ってきて、こちらにズカズカと向かってきた。そして、僕の腕を思いっきり掴んだ。
「痛っ」
「顔見せろ」と言いながら強引に引っ張られ、至近距離で顔をまじまじと見られた。いきなりのことでどういう状況なのか理解できず戸惑っていると「その傷、俺がやったのか?」と尋ねてきた。
「えっ、あぁ、これ? あぁ、まぁ、はい。でも…」
「付いてこい。」
そう言うと強く腕を引っ張ってきたものだから「やめてください。どこに連れてく気ですか」と抵抗すると「保健室だ」と意外な答えが返ってきた。
「保健室…?」
「さっき一輝から聞いた。今朝俺が打ったって。」
「え? あぁ、あのピンクの子。」
「酷く叱られたんだよ。殴った記憶なんてねんだけど。」
? そうか。寝てる時に触られたから、その手を振り払っただけで、殴ったつもりも、殴るつもりもなかったんだ。僕も意図的に殴られたと思ってたけど、たまたま当たってしまっただけ、か。ふふ、そう思ったらなんだか笑えてきた。
「ん?何笑ってんだよ気持ち悪ぃな。」
「ううん、ごめん。何でもないよ。この傷は大丈夫ですから。」
「でも一輝が連れてけって。」
「僕が大丈夫って言ったら大丈夫ですから。」
「いや、けど…。」
「もしかして、罪悪感感じてます?」
「は? んだよ、からかってんのか?」
「いえ、そういう訳では…。」
「グダグダ言ってねぇで早く行くぞ。」
「そんなに連れていきたいのなら少し待ってくれませんか?先にお弁当食べちゃいますね。大切なお弁当なんです。」
そういうと彼は清盛の席に座って足を組み、肘を付き、ゆらゆらと足を揺らせながら大人しく(?)待ってくれた。チラチラと僕の方を見てくるので「食べますか?」と聞くと「いらない」と答えた。「食べたいですか?」と聞くと「いらねーって言ってんだろ」と不機嫌そうに答える姿が、想像通りで面白かった。しばらくの沈黙が続いたあと「絆創膏、なんで貼らねぇの?」と聞いてきた。
「一輝がお前に絆創膏渡したって言ってたけど。」
「あぁ…。せっかくもらったのに申し訳ないけど、顔に貼ると余計に目立ってからかわれそうだから。」
「からかわれるって、誰にだよ。」
「皆に……ですかね。」
「ふーん。変なの。」
「あはは…。」
そうだよね。たぶん、きっとこれが普通の反応なんだ。絆創膏を貼ってたって特にからかわれない。逆に「どうしたの?」「大丈夫?」って心配されるのかな。でも、僕は違うから。とても残念だけど。
その後、弁当を片付けたことを確認すると「行くぞ」と言い僕の手首を引いて保健室へと足を進めた。ん? この手はなんだろう? 逃げるとでも思っているのだろうか? そんなつもりなんてないのに。しかし、さすが人気モデルだな。廊下を歩いているだけでたくさんの視線を感じる。そんな中、堂々と歩けるなんて凄いなぁ。僕はすかさず顔を隠すように下を向いた。握られた手首に違和感を感じながらも、気を逸らすように彼の背中に質問をしてみた。
「一輝さんは、弟なんですか?」
「あ? ちげーよ。ただの幼馴染。」
淡々とした返事。
「でもゆえ兄ちゃんって。」
「昔から兄弟みたいに過ごしてきただけ。」
そうなんだ。なんだか羨ましいな。
「一輝さん、優しそうな方ですね。」
「あぁ。」
……。
「一輝さんは2年生ですか?」
「1年。」
…。
「一輝さんとは一緒に住んでるんですか?」
「住んでねーよ。」
「でも今朝鞄を間違えたって。」
「朝方まで同じ現場で撮影しててそのまま一緒に車で…ってお前さっきから一輝のことばっかじゃね? アイツの情報聞き出したいならアイツに直接聞いてこい俺を都合よく使うんじゃねぇズル野郎! 俺は今、考え事で忙しいんだ!」
と言いながら振り向くと、ずっと手首を握っていたことに気付いたようで、サッと握ってきた手を振り払い気まづそうにしていた。
「やっと気付きました? みんなに見られてましたよ。いいんですか? 変な噂になっても知りませんからね。」
「噂? 噂なんかどうだっていいよ。」
「僕が困ります!」
「それよりよ…」
「それより?」
「保健室ってどこだ?」
「…………。」
「え?」
まさかの一言に驚きを隠せなかった。まさか考え事って……。このあと「代わりに案内しろ」と偉そうなことを言われ、僕が先導したのであった。勝手な人だなあ。
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