乙女ゲームに転生したモブの僕は最悪ルート(ハピエン)に爆進した悪役令嬢の義理の兄になったので、可愛い義妹を溺愛したい!

悠月 星花

文字の大きさ
24 / 31

第24話 多額の資金の上、出来上がった最高級の偽乳なのですよ!

しおりを挟む
「どうでしたか? ランス家の方は」
「んー、そうだな? おもしろいことが分かったくらいかな」
「おもしろいことですか?」
「そう、信じるか信じないかはグレンに任せるけど、僕が思う側近が決まったら、話すよ」

 馬車に揺られて屋敷に帰った。小汚い恰好をしていても、侍従のみなは気が付いたようで、「おかえりなさいませ」と挨拶してくれる。僕がフラフラと夜中に屋敷を抜け出したおかげで、番をしてくれていたらしい。

「明日は、街へ行かれるのですよね?」
「そうだね。その予定。その前に情報屋を屋敷に呼んでおいてくれる?」
「かしこまりました」

 僕は部屋に戻り、着替えだけさっさと済ませてベッドに入る。今日は、アルメリアとの短い会話もあったことを胸に、幸せいっぱいで眠れそうだった。

 翌朝、入浴も朝食も済ませたころ、客が訪ねてきた。高級なドレスに身を包み、寄せてあげて谷間をいかにも作っているその人物こそが、情報屋だった。

「おはようございます」
「よく来てくれたね? マリアンヌ」
「殿下のお呼びなら、何時如何なるときにでも。朝に呼びだしてくださる心遣いに感謝いたしますわ」
「夜中に呼びだすのは、美容にも良くないからね?」

 一応言っておく。目の前のご婦人は、男だ。女装男子なのだ。ジャスティスの記憶がなければ、僕も騙されてしまうほど、精巧に作られている胸もウエストの細さも偽物なのだ。声なんて、のどぼとけもなく、女性そのものである。

 ……サティアの儚げな可愛さとは違い、ある意味ハツラツとしているな。あの胸はどうなっているのだろう。

 頭の中で考えていたことが、行動に出ていたらしく、マリアンヌの片乳をギュっと掴んでしまった。

「何をなさるのですか! これには多額の資金の上、出来上がった最高級の偽乳なのですよ!」
「……悪い悪い。つい、どうなっているの気になって」
「それって……2回目ですけど?」
「そうだったかなぁ?」

 しらを切ろうと口笛を吹いてみたが、怪しまれれているには変わりなかった。場の空気が恐ろしく悪いので、僕は「欲しい情報なら1つだけやる」と提案すると、素直に従ってくれた。

「悪かったな」
「いいえ、気にしてくださっているなら、かまいません。ところで、このお屋敷、素敵ですね? つい最近まで、ティーリング公爵家の私財だと思っていたのですが、殿下の持ち物でしたか」
「……さっきから、『殿下』って言っているけどさ?」
「この国の第一王子であり、王位継承権第一位のジャスティス殿下ではありませんか?」

 何を言い出すのかと哀れみを込めた視線でこちらを見てくるので、苦笑いで対応しておく。
 まだ、公表もしていない事実なのに、どこから仕入れてくるのか……僕にはわからないが、何度もマリアンヌの情報に助けられたことがある。

「マリアンヌ様は、どこから仕入れてくるのですか?」
「グレン……乙女の秘密を暴こうとするような不躾な質問はモテませんことよ?」
「モテなくとも構いません。ジャスティス殿下の護衛ができるのであれば、それだけで名誉なことですから」
「……根っからの忠犬ね?」

 クスクス笑うマリアンヌにからかわれたのだと、気が付いたグレンも苦い表情をしていた。

「そういえば、殿下はレオナルド殿下とアルメリア様の婚約破棄パーティへは、どういうお立場で向かわれますの?」
「とりあえずは、アリアの義兄として参加するつもりだよ。そのあとのことは、父と養父が何か考えてくれているようだけど、流れに身を任せる……それが、僕の当日の仕事かな」
「なるほど、これは……おもしろくなりそうですね?」
「何か面白い情報でも聞きつけた?」

 ニヤッと笑うマリアンヌ。無邪気な雰囲気に変わったので、これは買い取ってくれという情報なのだろう。グレンに目くばせしたら、「ありがとうございます」とその偽物の胸のあいだにそっと金貨をしまっている。

 ……落ちないのだろうか?

 疑問に思ったが、何も言わないでおく。藪蛇は突かないほうがいいこともある。特にマリアンヌは、こちらからの情報も欲しがっているのだから。
 この情報の買い取り先は今のところ僕だけなので、好奇心が故の情報収集というものだろう。ジャスティスもよくこんな怪しげなマリアンヌに目を付けたものだと、感心してしまう。

「その前に、情報をくださる約束ですわ」
「……そうだったかなぁ?」
「そうです! 例えば……王位継承権第一位の方の婚約者候補とかでもいいですよ?」
「知っているのではないか?」

 胡乱な目で見てやると、ふふっと笑うマリアンヌ。だいたい想像は出来ているが、確信が欲しいというところだろう。大きくため息をついた。

 ……僕だと終始翻弄される感じだなぁ。ジャスティスの頭脳を持ちながら、まだまだ、駆け引きは下手くそだということか。

「わかった、それでいいなら。まだ、内々定もしていないが、アリアが僕の婚約者候補だ。それで、いいか?」
「えぇ、もちろん。しかと聞かせていただきました。アルメリア様は聖女様ですものね。殿下は『魔王様』ですし。あぁ、そうだ」
「……まだ、何か?」
「ランス家の次男坊の心を射止められたそうですね?」
「……ジークハルトか?」
「えぇ、そうです。レオナルド様からの再三の護衛入りを断っていたという話もあったのに、いつの間にか、殿下の護衛に選ばれたという話が耳に入ってきました」
「まだ、そっちも本決まりじゃなく、ジークの片想いだ」

「なるほど」と頷くマリアンヌは、とても楽しそうである。純粋に何かを求めているというマリアンヌの表情はとても好ましい。

 ……それにしても、どこまでの情報を掴んでいるのだろうか? 僕が『魔王』であることも世間には公表をしていないものなのに。

 好奇心だけで、これほどの情報を手に入れることに、僕はその才能を素晴らしいとすら思った。ジャスティスが、どうしてマリアンヌを側に置くのか、わかった気がすた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...