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第5章 メテオストライク

メテオストライク 17

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「分かってる?」ノアが強い口調で聞く。
「?」
「連れていかれるって、多分、この世から消えるってこと」
「……ああ、まあ。でも、まあ、大丈夫かなって…… 見ることは見たけど、そんな悪そうじゃなかったし……」

 レイが頭をかく。
 ノアはとても大きなため息をついてレイを見た。

「一人で行くな。一人で行っちゃダメ」
「しかし」
「私も行くよ。一人では行くな。分かった?」

 ノアはもう一発、レイの腹を軽く叩いた。
 
「一緒に行く機会を作るには少し時間かかるけど。それまでは我慢しな!」
「あ、ああ」

 レイは腹を押さえながらノアのあとに従いゆっくり歩いた。



 それから数週間後、やっと時間のあった二人が図書館の脇で待機していた。
 ノアはお供物として、リンゴと泣く泣く我慢して食べなかった食後のクッキーをもってきた。

「これで、文句いったらぶっ飛ばす!」

 レイは持ってきていた風車かざぐるまに息を吹きかけた。カタカタと小さな音をたて回る。

「レイ? どうして風車を?」
「おもちゃがいいかなと思って。子供だったし」
「風車? まあ、おもちゃといえばおもちゃだけど…… 喜ぶかねえ? そんなもので」
「これしか思いつかなかった」
「まあ、ないよりましか。でも、それがいきなり回転始めたら、それはそれで怖いね」
「……」

 レイはもう一度風車に息を吹きかけ、カタカタと回した。
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