ある日突然家のクローゼットが悪の秘密結社に繋がった話

浅木宗太

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警視庁零課 2

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 警視庁本庁・零課。突然のバイブ音に彼は急いでカバンを漁る。そして見つけたスマートフォンの表示も見ることなく、通話ボタンを押した。
「もしもし?」
「ああ、繋がりましたねぇ。」
「テレビさん?」
 怪訝な顔の上司に「お隣さんです」と席を立ち、部屋の隅に移動する。
「どうしたんですか、一体。て言うかなんで電話番号を。」
「話は後々!トータさんそこ、テレビありますよね?ポチッとつけちゃってくれません?」
 疑問に思いつつも、急かしてくる怪人の圧に課長のデスクのすぐ近くにあるテレビをつける。
「つけましたけど……。」
 どうしたんですか?本当に。と言うよりも早く、テレビ画面から真っ黒いボディ、もとい、ボスがあの呪いのビデオよろしくの動きで出てきたのである。この時ばかりは男だらけの零課と言えど、大きな悲鳴が上がった。
「誰かと思ったら、お前か……。」
「お、志木じゃん。捜査一課から飛ばされたのかよ。っと、そうじゃねえ。トータ、フジカが帰ってこねぇ。」
「え、今の時間って。」
 壁掛け時計は夜の八時半を指している。
「学校が終わってからだったら、いつもの事じゃ……。」
「違うんですよぉ!今日はフジカさん、早く帰るって言ってたんですよ!あ、テレビの中から半分だけ失礼いたします。」
 テレビの中から上半身だけを乗り出した状態のテレビマンの言葉に嫌な予感が董太の脳裏を過ぎる。
「まさか……。」
「そのまさかだ。」
 ボスの合図でリリィがタブレットを持って現れる。画面は地図になっており、赤い点が一つ。
「リリィ、フジカに防犯ぶざー、持たせておいた。」
「それも発信機付きのやつな。いらねえだろっつってたんだが、一番嫌な形で役に立っちまったなぁ。」
 彼はため息を吐きつつ、志木の椅子に座る。志木にはこの怪人の目的がどうやら分かっているようで、課内に居た部下達に指示を出し、頭を掻く。
「お前がきたと言うことは……その、あれなんだな?」
「そうそう!分かってんじゃん志木~!つうかぶっちゃけよ?悪の秘密結社が人助けとか、世間に知られるわけにいかねーからさ。ちょっと協力してくんねーかな?」
 今回はなんとなく、きな臭い感じがするんだよなぁ。と椅子の上でゆらゆらと揺れるボスに志木は顔を顰める。
「……手を貸そう。方針はどうするんだ。」
 藤華に持たせた発信機の反応があったのは、町外れにある工場の中だった。町外れの工場、と言うだけあってそれは人の居なくなった寂れた町外れに建っている。元々は、大手の家電メーカーの工場だったというその建物は、二階建てのそこそこしっかりした作りをしているが故か、最近では不良達のたまり場になっているため、どうにかして欲しいという電話が入った事もある。出動しても不良達は見つかりはしなかったが。
ボスの提案したそれは、作戦、と言うにはとてもシンプルなものだった。まずは正面を切ってテレビマンとリリィが工場の中に入る。そして大怪我をさせない程度に騒ぎ、犯人の気を引いているうちに別働隊で白滝と志木、そしてボスが救出に向かう。犯人の人数など、不確定要素は大きく、相手が武器を持つ可能性もとても高い。拳銃などを持っていた場合、生身で脆い人間より我々の方が対処しやすい。と言うのがボスの考えである。一通り、話を聞き終わった志木は一つため息を吐く。
「……分かった。それならそっちはお前の言う通り、彼らに任せよう。沢目木、四谷橋、お前達は彼らと共に犯人が複数人いた場合の確保を。」
「良いんですか?志木さん。」
「……こいつとはこの零課創設時よりも前からの付き合いだ。お前達は犯人検挙だけを考えろ。後のことは俺がどうにかするさ。」
どこか思い出すような面持ちでそう告げる志木。そして「このままで居ても始まらんな」と自ら頬を軽く叩くと座っていた椅子から立ち上がる。
「こうなった以上、俺が後から本部にお叱りは受ける。代わりに一匹たりとも逃すな!開始!」
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