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潜入するはなし
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「なーんか嫌な感じがするんだよなぁ。」
どうしたもんかな、とひとりごちるボスに志木は「来ないなら置いていくぞ。」と先に進む。テレビマンとリリィによる陽動が上手くいったこともあり、すんなりと工場の奥へ入り込むことが出来た。あまりに順調すぎる、そう思うのは普段はヒーローに邪魔される筋書きしか存在しない悪役の性か。用心に用心を重ねることに関しては悪いことでは無いと思っているし、いつだってヒーローショーという仕事現場に対しては入念に入念に場所調べからリハーサルまでやる。やるからには全力を出すのはいつだって一緒だ。そんな彼だからこそ、嫌な予感、というものが働いたのかも知れない。
「ボス?!」
白滝の焦った声が遠くに聞こえる。
白滝からすれば衝撃的な光景だった。それもそのはずだ。隣を歩いていたはずの怪人が一瞬にして彼等の後方にあったガラクタの中へ、見えない何かによってふっ飛ばされたからだ。
見えない何者かを警戒するように志木と背を合わせ、周囲を見回す。しかし何も見えない。
「志木さん。」
「白滝、武器は構えるなよ。いいな。」
小声で指示を出す上司に小さく返事をすると辺りをもう一度見回す。何も見えないが周りを歩く足音が聞こえる。
「ってーな……。」
いやぁマジ焦ったわ。受け身取れなかったらケツやられてるとこだった。そう言いながらガラクタの中から這い出てくるボスに白滝は、ほんの少しの安堵を覚える。
「つーか、お前が犯人だったとはなぁ。迷彩ヒーロー、レオンハート。」
この所々に穴の空いた屋根から漏れる月明かりの中、ボスの目はしっかりと赤い光を放っている。その眼光の捉える先、何もなかった空間に一人の男がゆっくりと姿を現す。
「ヒーローにも色々あってね。どうしようもなかったのさ」
レオンハートと呼ばれたその男は、カメレオンの意匠を施したアーマーを着た、ヒーローだ。ボルト程ではないが、まだ若いながら、ファンも多い。
「だからって、こんな事件起こしちゃあまずいだろうがよ。ヒーローってーのはさ。」
「子供の見本であれ。か?」
「そ。分かってんじゃん」
そんな応酬を横目にゆっくりと志木は白滝を連れて移動を開始する。移動を開始したことはレオンハートだって分かっているはずだ。だが、追いかけては来ない。
「悪の秘密結社の怪人である俺が言うのもなんだけどさ、あんた、警察に出頭する気は無いんだろ?一体どこと組んだ?」
「さあな?どこだったか。でもそんなこと、どうでも良いじゃないか。お前はここで死ぬんだからな!」
外で待機している彼らにも分かる程の衝撃だった。渾身の力で殴りつけられた彼の体は簡単に壁に叩きつけられる。
壁に半分程埋まりながら、彼はぼんやりと今までの事件を振り返り、そういう事か。と呟いた。ボスが彼と顔を合わせたのはあのヒーローショーの数日前。ボルトとレオンハートの共演する特撮番組の収録の時の事だった。あの日はちょっとした現場のミスでボルトの仮面が欠けてしまい、欠けたパーツも見当たらず、また、修理に出す時間もなかった。勝手に零課で拝借して目を通した(志木に怒られるのでそっと元の位置に戻してきた)誘拐現場の資料に載っていた、黄色いプラスチック、あれは確実にボルトの仮面の断片だ。まあ、ボルトじゃなくてこいつで良かったな。明日は何ヶ所かに湿布で済みそうだ。我がことながら、他人事のようだな。と職業病にほんの少しだけ、悲しさを覚えながら壁に埋まった左半身を引き抜いた。
どうしたもんかな、とひとりごちるボスに志木は「来ないなら置いていくぞ。」と先に進む。テレビマンとリリィによる陽動が上手くいったこともあり、すんなりと工場の奥へ入り込むことが出来た。あまりに順調すぎる、そう思うのは普段はヒーローに邪魔される筋書きしか存在しない悪役の性か。用心に用心を重ねることに関しては悪いことでは無いと思っているし、いつだってヒーローショーという仕事現場に対しては入念に入念に場所調べからリハーサルまでやる。やるからには全力を出すのはいつだって一緒だ。そんな彼だからこそ、嫌な予感、というものが働いたのかも知れない。
「ボス?!」
白滝の焦った声が遠くに聞こえる。
白滝からすれば衝撃的な光景だった。それもそのはずだ。隣を歩いていたはずの怪人が一瞬にして彼等の後方にあったガラクタの中へ、見えない何かによってふっ飛ばされたからだ。
見えない何者かを警戒するように志木と背を合わせ、周囲を見回す。しかし何も見えない。
「志木さん。」
「白滝、武器は構えるなよ。いいな。」
小声で指示を出す上司に小さく返事をすると辺りをもう一度見回す。何も見えないが周りを歩く足音が聞こえる。
「ってーな……。」
いやぁマジ焦ったわ。受け身取れなかったらケツやられてるとこだった。そう言いながらガラクタの中から這い出てくるボスに白滝は、ほんの少しの安堵を覚える。
「つーか、お前が犯人だったとはなぁ。迷彩ヒーロー、レオンハート。」
この所々に穴の空いた屋根から漏れる月明かりの中、ボスの目はしっかりと赤い光を放っている。その眼光の捉える先、何もなかった空間に一人の男がゆっくりと姿を現す。
「ヒーローにも色々あってね。どうしようもなかったのさ」
レオンハートと呼ばれたその男は、カメレオンの意匠を施したアーマーを着た、ヒーローだ。ボルト程ではないが、まだ若いながら、ファンも多い。
「だからって、こんな事件起こしちゃあまずいだろうがよ。ヒーローってーのはさ。」
「子供の見本であれ。か?」
「そ。分かってんじゃん」
そんな応酬を横目にゆっくりと志木は白滝を連れて移動を開始する。移動を開始したことはレオンハートだって分かっているはずだ。だが、追いかけては来ない。
「悪の秘密結社の怪人である俺が言うのもなんだけどさ、あんた、警察に出頭する気は無いんだろ?一体どこと組んだ?」
「さあな?どこだったか。でもそんなこと、どうでも良いじゃないか。お前はここで死ぬんだからな!」
外で待機している彼らにも分かる程の衝撃だった。渾身の力で殴りつけられた彼の体は簡単に壁に叩きつけられる。
壁に半分程埋まりながら、彼はぼんやりと今までの事件を振り返り、そういう事か。と呟いた。ボスが彼と顔を合わせたのはあのヒーローショーの数日前。ボルトとレオンハートの共演する特撮番組の収録の時の事だった。あの日はちょっとした現場のミスでボルトの仮面が欠けてしまい、欠けたパーツも見当たらず、また、修理に出す時間もなかった。勝手に零課で拝借して目を通した(志木に怒られるのでそっと元の位置に戻してきた)誘拐現場の資料に載っていた、黄色いプラスチック、あれは確実にボルトの仮面の断片だ。まあ、ボルトじゃなくてこいつで良かったな。明日は何ヶ所かに湿布で済みそうだ。我がことながら、他人事のようだな。と職業病にほんの少しだけ、悲しさを覚えながら壁に埋まった左半身を引き抜いた。
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