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女子高生、異世界へ行く。
木の悪魔
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その人には腕が四本あった。
その四本にそれぞれの剣を握り、深い緑色の腰巻きと、お揃いのケープ、珪化木の飾りのついたとんがり帽子。髪の代わりと言うように伸びる枝には所々葉がついていた。目にあたるものも、口にあたるものも存在しない、木の幹の様な色の顔には2つの切り傷の跡だけがついている。
「誰が!俺を呼び出したかと思えば!貴様ではないか!」
肌がビリビリするほどの大声でそれはそう言った。
「仕事だ仕事!あの魔女より楽だぜ?お得意分野だ」
鼻で笑う破壊神さんに何かを察したのか(何故私がそう思ったかは自分でも分からないが)その人はニヤリと笑った。
「ふん、粗方そこに潜んでる奴らを捕まえろとでも言う気か?」
「我としては口さえ利けるならそれでいい。抵抗するやつまでどうしろとは言わないな。一番色々知ってそうな奴だけ喋れればいい」
「……成程な。良かろう!我が眷属よ、それらを捕らえろ!」
その声を合図に文字通り、周りの木々が蠢き出した。それらは主に従順であり、迅速に行動に移す。悲鳴のような声や木の枝を切り落とすような音もしたが、一時間も掛からず全ては終了した。
「さて、これだけの為に俺を呼び出した訳だが、これらをどうする?」
四本の腕を器用に上下に組むその姿に篭手と革手袋を交互に着けてるんだな、左右に利き手が一本ずつあるのかな、等と場違いな考えが浮かぶ。そんな私達の目の前には木々の蔦や枝で拘束され、身動きの取れない人々が転がっている。皆、赤い腕章を着けているが、服装はクラブさんと似ており、歴史の授業、教科書で見た旧日本兵を彷彿とさせる。
「うん、思ったよりあっさり終わってしまったな。もう少し抵抗するか骨のあるやつが居ると思っていたが……ここには既に居ない様だなぁ」
後頭部で手を組んでいた破壊神さんは、転がされている一人に近づくとしゃがみこみ、その顔を見下ろす。
「私は、お前の親友だったな?」
それまで怯えたような目で見ていた帝国軍人(らしい)は動きを止めたかと思うと柔和な笑みを浮かべた。
「ああ、勿論だとも。一体何の悪ふざけかと思ったじゃないか」
「すまないな、少し驚かしてやろうと思っただけさ。で?こんな所へ何をしに来たんだ?」
「新しい機械の試運転だよ。これを使うと大型の魔物の自律神経に作用して半狂乱状態にさせるらしいんだ」
「なるほど、でもこんな遠い、それも王国の中にある迷宮でしなくても良いと思わないか?」
「それは俺も思っていたさ。だが、上からの命令さ、逆らえないのは君も知ってるだろう?」
「それもそうだな。逆らえばどんな目に遭うか分からない」
「第八騎団が連れて来てくれたお陰でここまで来れたが……あいつら、俺らを置いて帰っちまった。帰るに帰れないと思っていたから、君が来てくれて助かったよ」
微笑みながらペラペラと喋る男性に破壊神さんは「そう言ってくれてよかったよ」と言うとパチリ、と指を鳴らした。途端に男性は意識を失ったのか、ガクンと力が抜け、動かなくなった。
「ジジイを呼べ。とりあえず放っておける内容でも無さそうだ」
その四本にそれぞれの剣を握り、深い緑色の腰巻きと、お揃いのケープ、珪化木の飾りのついたとんがり帽子。髪の代わりと言うように伸びる枝には所々葉がついていた。目にあたるものも、口にあたるものも存在しない、木の幹の様な色の顔には2つの切り傷の跡だけがついている。
「誰が!俺を呼び出したかと思えば!貴様ではないか!」
肌がビリビリするほどの大声でそれはそう言った。
「仕事だ仕事!あの魔女より楽だぜ?お得意分野だ」
鼻で笑う破壊神さんに何かを察したのか(何故私がそう思ったかは自分でも分からないが)その人はニヤリと笑った。
「ふん、粗方そこに潜んでる奴らを捕まえろとでも言う気か?」
「我としては口さえ利けるならそれでいい。抵抗するやつまでどうしろとは言わないな。一番色々知ってそうな奴だけ喋れればいい」
「……成程な。良かろう!我が眷属よ、それらを捕らえろ!」
その声を合図に文字通り、周りの木々が蠢き出した。それらは主に従順であり、迅速に行動に移す。悲鳴のような声や木の枝を切り落とすような音もしたが、一時間も掛からず全ては終了した。
「さて、これだけの為に俺を呼び出した訳だが、これらをどうする?」
四本の腕を器用に上下に組むその姿に篭手と革手袋を交互に着けてるんだな、左右に利き手が一本ずつあるのかな、等と場違いな考えが浮かぶ。そんな私達の目の前には木々の蔦や枝で拘束され、身動きの取れない人々が転がっている。皆、赤い腕章を着けているが、服装はクラブさんと似ており、歴史の授業、教科書で見た旧日本兵を彷彿とさせる。
「うん、思ったよりあっさり終わってしまったな。もう少し抵抗するか骨のあるやつが居ると思っていたが……ここには既に居ない様だなぁ」
後頭部で手を組んでいた破壊神さんは、転がされている一人に近づくとしゃがみこみ、その顔を見下ろす。
「私は、お前の親友だったな?」
それまで怯えたような目で見ていた帝国軍人(らしい)は動きを止めたかと思うと柔和な笑みを浮かべた。
「ああ、勿論だとも。一体何の悪ふざけかと思ったじゃないか」
「すまないな、少し驚かしてやろうと思っただけさ。で?こんな所へ何をしに来たんだ?」
「新しい機械の試運転だよ。これを使うと大型の魔物の自律神経に作用して半狂乱状態にさせるらしいんだ」
「なるほど、でもこんな遠い、それも王国の中にある迷宮でしなくても良いと思わないか?」
「それは俺も思っていたさ。だが、上からの命令さ、逆らえないのは君も知ってるだろう?」
「それもそうだな。逆らえばどんな目に遭うか分からない」
「第八騎団が連れて来てくれたお陰でここまで来れたが……あいつら、俺らを置いて帰っちまった。帰るに帰れないと思っていたから、君が来てくれて助かったよ」
微笑みながらペラペラと喋る男性に破壊神さんは「そう言ってくれてよかったよ」と言うとパチリ、と指を鳴らした。途端に男性は意識を失ったのか、ガクンと力が抜け、動かなくなった。
「ジジイを呼べ。とりあえず放っておける内容でも無さそうだ」
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