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女子高生、異世界へ行く。
真夜中のご対面
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こんにちはみなさん。いや、この場合こんばんはが正解だろう。奇怪な物音に店まで降りてきちゃいました!みなさんはそこで見ててね~!
……そうじゃない。
緊張をほぐすため悪ふざけしてみたがそういう場合では無いのだ。
何かがいる。何がいるかは定かではないが、自分以外の何かがいるのは明確なのだ。
手には箒。魔術?呪文唱えるより殴ったが早いわ。
両手でしっかりと握りしめ、一つ深呼吸。覚悟を決めたら殴る覚悟で飛び出す!
「不審者ァ!!!!!……んんん??」
調味料の置かれた台の上、そこに居たのはふわふわの毛皮に覆われた手のひらサイズの生き物だった。不審者じゃなくて本当に良かった。
「これはコウモリかな……?迷い込んだのかね……」
確か野生動物は触っちゃいけなかったはずだが、ここは飲食店。雑菌云々で何かあったらその間ここにいた私が責任を問われそうな気がする。
つまり死。
私は反射的に何故かその辺にあった洗濯ネットを使ってコウモリを捕獲したのであった。
捕獲した後は部屋に戻って帽子掛けのフックに吊るした後、コウモリの居たところを念入りに消毒して回った。
捕まえたコウモリについてだが、捕まえてしまったものは仕方が無いので、翌日彼方さんに見せたところ、彼女はなんとも言えない顔で「鈍臭いな。お前」とコウモリを憐れんでいた。
「彼方さん、このコウモリどうするんですか?」
「これ?ああ、こいつは野生じゃないよ。あの錬金術師が連れてきた。その辺に置いときな」
「適当だなぁ……」
洗濯ネットの中から出してやるとそのままバタバタと飛んでゆき、店員用のコート掛けにぶら下がった。最初はモゾモゾと動いていたが、体勢が安定したのか、そのまま動かなくなる。
「さて、仕事仕事。ホールの準備頼んどくよ」
「はーい」
何ら変わらないいつもの朝。何ら変わらない一日が始まる。
そう思っていた時が私にもありました。
突然すごい音と共に店の壁が大破するまでは。
それは突然訪れた。
カメラワークがあるとするなら三カメ使ってその瞬間を捉えて欲しいくらいに突然店の壁が大破した。
破片は飛び散ったが、運良く私は無事である。
視認できるものは大破した壁と瓦礫、朝の日を背に輝く黒い鱗に覆われた大きな爬虫類。
「かっ、彼方さーーーーーん!!!!!!」
これはやべぇのが来た!の叫びである。何なら今この店にいるのは彼女と(多分影に潜んでいるまっちゃんと)私しかいない。
「テメェ!人の店ぶっ壊しやがって!」
そんな声と共に一閃、暫しの間を置いてずるりと爬虫類の首と胴体がさよならバイバイする。
「か、彼方さん……」
「アンタの部屋も半分くらい吹き飛んだな」
「私の部屋……」
自作の杖と魔導書、腰掛けポーチみたいなの作って入れといてよかった。この日私は心底そう思った。
……そうじゃない。
緊張をほぐすため悪ふざけしてみたがそういう場合では無いのだ。
何かがいる。何がいるかは定かではないが、自分以外の何かがいるのは明確なのだ。
手には箒。魔術?呪文唱えるより殴ったが早いわ。
両手でしっかりと握りしめ、一つ深呼吸。覚悟を決めたら殴る覚悟で飛び出す!
「不審者ァ!!!!!……んんん??」
調味料の置かれた台の上、そこに居たのはふわふわの毛皮に覆われた手のひらサイズの生き物だった。不審者じゃなくて本当に良かった。
「これはコウモリかな……?迷い込んだのかね……」
確か野生動物は触っちゃいけなかったはずだが、ここは飲食店。雑菌云々で何かあったらその間ここにいた私が責任を問われそうな気がする。
つまり死。
私は反射的に何故かその辺にあった洗濯ネットを使ってコウモリを捕獲したのであった。
捕獲した後は部屋に戻って帽子掛けのフックに吊るした後、コウモリの居たところを念入りに消毒して回った。
捕まえたコウモリについてだが、捕まえてしまったものは仕方が無いので、翌日彼方さんに見せたところ、彼女はなんとも言えない顔で「鈍臭いな。お前」とコウモリを憐れんでいた。
「彼方さん、このコウモリどうするんですか?」
「これ?ああ、こいつは野生じゃないよ。あの錬金術師が連れてきた。その辺に置いときな」
「適当だなぁ……」
洗濯ネットの中から出してやるとそのままバタバタと飛んでゆき、店員用のコート掛けにぶら下がった。最初はモゾモゾと動いていたが、体勢が安定したのか、そのまま動かなくなる。
「さて、仕事仕事。ホールの準備頼んどくよ」
「はーい」
何ら変わらないいつもの朝。何ら変わらない一日が始まる。
そう思っていた時が私にもありました。
突然すごい音と共に店の壁が大破するまでは。
それは突然訪れた。
カメラワークがあるとするなら三カメ使ってその瞬間を捉えて欲しいくらいに突然店の壁が大破した。
破片は飛び散ったが、運良く私は無事である。
視認できるものは大破した壁と瓦礫、朝の日を背に輝く黒い鱗に覆われた大きな爬虫類。
「かっ、彼方さーーーーーん!!!!!!」
これはやべぇのが来た!の叫びである。何なら今この店にいるのは彼女と(多分影に潜んでいるまっちゃんと)私しかいない。
「テメェ!人の店ぶっ壊しやがって!」
そんな声と共に一閃、暫しの間を置いてずるりと爬虫類の首と胴体がさよならバイバイする。
「か、彼方さん……」
「アンタの部屋も半分くらい吹き飛んだな」
「私の部屋……」
自作の杖と魔導書、腰掛けポーチみたいなの作って入れといてよかった。この日私は心底そう思った。
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